キャンパスライフ

2021年6月4日

【比較進振学】東大で心理学を勉強したい!どこに進学するべき? 文学部心理/社心・教育心理・教養認知を徹底比較

 複数の学部・学科などで似た領域の学問を扱っている場合、自分に合った進学先はどこか分からないという悩みを持つ学生も多いのではないだろうか。そのような悩みを解決するため、本企画では一見似たような学問を扱う進学先を徹底比較する。今回のテーマは「心理学」。文学部人文学科心理学専修(文学部心理)文学部人文学科社会心理学専修(社心)教育学部総合教育科学科心身発達科学専修教育心理学コース(教育心理)教養学部統合自然科学科認知行動科学コース(教養認知)の四つの進学先を特集する。

(取材・伊藤凜花)

 

参加者

Nさん(文Ⅲ→文学部心理3年)

森永志歩さん(文Ⅲ→社心3年)

實藤美来さん(理Ⅱ→教育心理3年)

関本大勢さん(理Ⅰ→教養認知4年)

 

学べる内容は文学部心理と教養認知で類似

 

――自身の進学先で学べる内容について教えてください

 

N(文学部心理) 文学部心理では、基礎心理学として、個人レベルの低次認知や学習、記憶などについての研究が主に行われています。研究は実験によるものが主で、質問紙やMRIなどを用いた手法も行われます。

 

森永(社心) 社心では、偏見や協力行動といった「集団の中にいる人間」の心理を特に扱います。個別の具体的な事例を扱うことも多いですが、教育心理などと比べると、実践向きではないと思います。研究手法は質問紙などを用います。

 

實藤(教心) 教育心理で学べる内容は、教授・学習といった教育に関する心理だけではなく、発達、臨床、認知科学、情報科学などと幅広いです。基礎研究だけでなく、社会での位置付けを意識した実践向きの研究も多いです。

 

関本(教養認知) 教養認知の研究内容は文学部心理にかなり近いと思います。強いて言えば、MRIや脳波をメインに取り扱う研究室があったり、ラットなどを用いた研究が行われていたりします。

 

――比較対象の進学先とは異なる特徴について教えてください

 

関本(教養認知) 文学部心理とは研究内容よりも形式的な違いが大きいと思います。教養学部のキャンパスは駒場にあり、進学選択における枠は文科から4名、理科から4名の8名と少人数で、他と比べて理系の割合が高めです。3Aセメスターからは研究室配属があり、院進の割合も高いです。

 

實藤(教心) 教育心理そのものに興味のある学生だけでなく、心理支援職の国家資格である公認心理師の資格取得を意識した学生が集まりやすいです。公認心理師の資格取得には学部と大学院での単位の取得が必要で、学部開講科目全てを取得していれば学部は問われませんが、大学院開講科目は大学院教育学研究科総合教育科学専攻心身発達科学専修臨床心理学コース生のみが対象で開講されています。臨床心理学コースの教員が学部では教育心理学コースに所属しているため、公認心理師を目指すには充実した環境です。

 

――カリキュラムについて教えてください

 

N(文学部心理) 2Aセメスターにある社心と合同の実験演習では、毎週実験と論文形式のレポート提出があり、心理学の研究過程を体験して学ぶことができます。選択必修の「心理学研究法」では、ある目的に対する実験の設定方法から、心理学を学問たらしめている内容について学べ、印象に残っています。3年からの「心理学演習」はゼミ形式の授業で、オンラインと対面のハイブリット形式ですが、その他は今のところ全てオンライン授業です。必修はそれほど多くなく、他学部履修もしやすいです。

 

森永(社心) 2Aセメスターでは、文学部心理と合同の実験演習と別にもう一つ実習があり、グループで仮説を立てて研究活動をします。3年からはゼミがありますが、社心のゼミは選択肢が少なく、今年度の3Sセメスターでは選択肢が2つしかありませんでした。授業は今のところ全てオンラインで、他学部履修はしやすいと思います。

 

實藤(教心) 教育心理も2A、3S、3Aセメスターで実験演習があります。必修は少なく、他学部履修も含め自由に履修することができます。そのため忙しさも人それぞれで、公認心理師のカリキュラムを受講している人は、どの時期もそれなりに忙しいと思います。授業は一部の実習を除き全てオンラインです。

 

関本(教養認知) 2Aから4Sセメスターまで必修の実験演習があり、そのうち3A、4Sセメスターは配属先の研究室での活動となります。実験演習のレポートには、少人数コースならではの丁寧な添削があり、レポートの書き方をしっかり学ぶことが出来ます。必修は少なく、統合自然科学科内のさまざまな理系科目や他学科の授業、申請すれば他学部の授業も受けられ、履修の自由度は高めです。授業は、コロナ禍以降、私が受講しているものは全てオンラインです。

 

Nさん(文学部心理)の2Aセメスター・3Sセメスターの時間割(薄い網掛けは必修、濃い網掛けは選択必修。時間割は2Aが2020年、3Sが2021年のもの)

森永さん(社心)の2Aセメスター・3Sセメスターの時間割(薄い網掛けは必修、濃い網掛けは選択必修。時間割は2Aが2020年、3Sが2021年のもの)

實藤さん(教育心理)の2Aセメスター・3Sセメスターの時間割(薄い網掛けは必修、濃い網掛けは選択必修。時間割は2Aが2020年、3Sが2021年のもの)

関本さん(教養認知)の2Aセメスター・3Sセメスターの時間割(薄い網掛けは必修、濃い網掛けは選択必修。時間割は2Aが2019年、3Sが2020年のもの)

 

幅広い選択肢で悩んで

 

――自身の進学先に進学された経緯について教えてください

 

関本(教養認知) もともと人と関わるのが好きで、人についてもっと知りたいという思いから、文学部心理、社心、経済学部(行動経済学)、薬学部、教養認知、教養学部学際科学科などさまざまな進学先について調べました。自分で手を動かして実験できる進学先に選択肢を絞り、数学や物理学の授業が受けやすい、少人数の厳しい環境に身を置きたい、院進に都合がいいといった理由から教養認知に決めました。

 

實藤(教心) 私は神経生理を専攻して、小脳の運動パターンの記憶における神経細胞レベルでの反応を調べたいと思い、獣医学部に進みました。しかし、動物実験が嫌で、脳の機能を侵襲(しんしゅう)的な作業なしに調べられる進学先を探しました。もともと人間の「社会性の発達」に興味があり、精神医学や異常心理学を学べる場所を探したところ、教育学部の上位組織に発達心理を扱うセンター(東大大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター)があることを知り、教育学部に転学部することを決めました。

 

森永(社心) 入学前は教養学部超域文化科学分科表象文化論コースへの進学を考えていましたが、前期教養課程で四本裕子先生(東大大学院総合文化研究科)の「認知脳科学」や前田基成先生(女子美術大学)の「教育臨床心理学」などを受講し、心理学に興味を持つようになりました。その中でも北村英哉先生(東洋大学)の「社会行動論」の授業が面白く、その内容に近い社会心理学を志しました。

 

N(文学部心理) 前期教養課程の「心理Ⅰ・Ⅱ」の授業で心理学に触れ、興味を持ちました。基礎心理学を念頭に、先生方の研究内容を調べて、自分の興味に最も近かった文学部心理に進学することにしました。研究内容の近い教養学部認知行動科学コースも選択肢にありましたが、文学部心理に興味深い研究をしている先生がおり、また文学部の他の専修の授業にも興味があったことから文学部心理を選びました。

 

――心理学は心理学系の進学先以外でも研究されていますが、進学先の選択肢として考えましたか

 

関本(教養認知) 今回の比較対象である4つの進学先以外にも、理学部生物学科や教養学部学際科学科、工学部の計数工学科などでも広い意味で脳科学に関係した研究を扱っており、候補として考えました。しかし、行きたい研究室に行けなかった場合を考え、どの研究室に入っても楽しめそうな進学先を選びました。

 

實藤(教心) 一度進学した獣医学部では、動物実験の重要性は理解しつつ、それが自分のやりたいことではないことに気付きました。また、キットサイエンスよりも、自分でモデルを構築するような研究がしたかったので、文系の進学先に決めました。

 

森永(社心) 私は文系だったこともあり、理系の進学先についてはあまり考えませんでした。

 

N(文学部心理) 私も文学部心理に引かれていたのもあり、あまり積極的な検討はしませんでした。また、文学部の他の専修や他学部の授業も受けられるのでいいかなと思いました。

 

――前期教養課程生へアドバイスをお願いします

 

関本(教養認知) 教養認知に入る上で、やっておくべきことは特にありません。プログラミングや統計は入ってからでも十分学ぶことが出来ます。進学選択のアドバイスとしては、漠然と選択肢を絞らず、可能な限り多くの進学先を調べることです。大変なことですが、悩めば悩むほど自分の選択に自信が持てると思います。

 

實藤(教心) 進学先に関わらず、心理学を志す上で統計の知識は必須です。しかし、各進学先で分かりやすい講義があるので、それを理由に諦めるべきではないと思います。教育心理については、履修や研究の自由度が高いので、授業だけでなくアルバイトやインターンなどさまざまな機会を利用して自分の興味分野を探り、紹介できるようにしておくと、より有意義に後期課程を過ごせると思います。

 

森永(社心) 社心に興味がある人は、前期課程で「適応行動論」「社会行動論」などの授業を受けると概要が分かると思います。進学選択については、早めの情報収集に尽きます。少なくとも行きたい進学先の底点は最初に調べ、点数が必要な場合は、必修に全力を注ぎましょう。

 

N(文学部心理) 心理学は多くの領域にまたがっていて、選択肢が多く迷いやすいと思いますが、やりたいことをやるためによく調べることが大切です。心理学系の研究では統計処理にプログラミングも必須ですが、特に文学部心理は、感覚の研究などでプログラミングを組んで実験を行うこともあります。後期課程からでも十分学べますが、研究したい内容が明確に決まっていれば、早めに学び始めてもいいと思います。また、公認心理師の資格取得を考えている場合は、前期課程でまず「公認心理師の職責」という授業をとることをお勧めします。

 

實藤(教心) 公認心理師試験の受験資格取得については、カリキュラムの科目数が多く、前期課程のうちから取れる科目を受講することが推奨されているので、調べてみてください。

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