部活・サークル

2026年3月9日

【寄稿】第2回 里山再生サークル「匠」 ヒメギフチョウを守る取り組みとは

 

 

 里山再生に取り組むサークル「匠」が2025年3月に新しく設立された。今回は、蝶の一種である「ヒメギフチョウ」を守るために山形県鮭川(さけがわ)村でどのような活動をしているのか、寄稿してもらった。(寄稿=小前叡史、浦田銀河、橋口功大(匠))

 

春の訪れを告げるヒメギフチョウ

 

 山形県最上地方に位置する鮭川村では、春の訪れを告げる希少な蝶である「ヒメギフチョウ」が生息しています。村内はギフチョウとヒメギフチョウの両種が同所的に見られる全国的にも貴重な地域であり、これらの種は村の天然記念物に指定されています。黄色と黒の美しい模様を持つヒメギフチョウは、その優雅な飛翔から「春の女神」とも呼ばれており、鮭川村の豊かな自然を象徴する存在です。春の短い期間にだけ姿を現すこの蝶は、長い冬を越えた里山に命の息吹を感じさせてくれます。

 

春の訪れを告げるヒメギフチョウ

 

 戦後から高度経済成長期にかけて鮭川村の雑木林は薪炭(しんたん)林や建材を得るためのクリ林として利用されてきました。しかし、燃料革命や生活様式の変化に伴い、次第に雑木林は使用されなくなっていきました。さらに人口減少や高齢化の影響もあり、下草刈りや間伐などの管理が徐々に行われない状況になりました。ヒメギフチョウの食草であるトウゴクサイシンは適度に明るい林床環境を必要とします。ところが、雑木林の管理が手薄になるとササなどが繁茂し、トウゴクサイシンが生育しにくくなり、ヒメギフチョウの個体数減少の大きな要因となりました。

 

 ヒメギフチョウの近縁種であるギフチョウも同じトウゴクサイシンを食草とし、ヒメギフチョウと同様の生息環境を好みますが、これによりヒメギフチョウとの生存競争が生じます。両種が混生する干渉領域は年々東へ移動しています。その結果、ヒメギフチョウの生息範囲が徐々に狭くなっており、将来的な個体群の存続が懸念されています。

 

鮭川村での取り組み

 

 当サークルは地域の方々の協力を得て、5月・8月・11月の3回にわたり、泊まり込みで保全活動を実施しました。主な活動内容は、「産卵調査」と「下草刈りによる生息環境の改善」の2つです。

 

①産卵調査

 

 産卵調査は食草であるトウゴクサイシンを見分けるところから始まります。少し変わった質感と形状を持っているので、慣れるとすぐに見つけることができました。ヒメギフチョウは食草の裏に卵を産みつけるので、一枚ずつ地面に生えている葉をめくっていき、卵があるかを確認していきます。そう簡単に卵は姿を現してくれませんが、卵塊(らんかい)を見つけられた時はとても嬉しくなりました。

 

 全体で3万枚以上の葉を調査し、100個以上の卵塊を確認することができました。調査によって判明した場所ごとの産卵数を元に、夏や秋に下草を刈る場所を決めていきます。

 

鬱蒼(うっそう)と茂るササの中で卵を調べる

 

②下草刈り

 

 産卵調査と並ぶメインの活動に下草刈りがあります。まず、刈り払い機やノコギリでササや下草、灌木を切っていき、その後で地面に散乱した草木を拾い集めます。レーキを用いて少しずつ枝をまとめていくのですが、想像以上に大変な作業でした。さらに、まとめた枝を邪魔にならないよう雑木林の中に移動させ、きれいに積みあげます。一通りの作業が終わった後に、きれいになった林床を見渡すと達成感が感じられました。

 

刈り取った草を集めて、運ぶ

 

作業を通して得られた「達成感」

 

 活動の一番の醍醐味(だいごみ)は、「達成感」だと思います。作業中は、ひたすらノコギリで木を切り倒し、重い草を運び出したりして、作業が終わった後には全身くたくたになっています。それでも、作業が終わって辺りを見回すと、元々藪(やぶ)だった場所がきれいになっていて、言葉にできない感動があります。

 

 この達成感は保全活動だからこそ得られるものだと考えています。この達成感に憑(と)りつかれて、毎週のように保全に行っている人もいます。

 

活動終了後、お世話になった地元の方を囲んで記念撮影

 

様々な人との出会い

 

 様々な人と交流できることも、楽しみの一つです。鮭川村の作業には、東京大学のほか、山形大学、岩手大学、九州大学、東京農業大学など全国各地の大学生が参加しました。

 

 それぞれが好きな事を持っているため、お互いの好きな事を共有しあうのはとても楽しいひと時でした。例えば、鳥好きの人から撮った写真を見せてもらったり、虫好きの人から虫の魅力について教えてもらったりと、自分の知らない分野について聞くことはとても刺激的です。また、初めて会う人同士でも、同じ目標に向かって汗を流すことで、作業が終わる頃には「仲間」となっています。時には、恋愛話で盛り上がったりしました。一部のメンバーは、夏休みに一緒に旅行に行くほど仲良くなりました。

 

 地域の方とも交流することができます。今回の活動は、地元の方の家にご厚意で泊めさせていただきました。地域の自然や文化について直接お話を聞いたことは貴重な経験になりました。

 

里山の恵み

 

 豊かな自然の中に身を置くことも楽しみの一つです。春にはカタクリやショウジョウバカマなどの春の草花が咲き乱れ、秋には色とりどりの紅葉が迎えてくれます。春には山菜、秋にはキノコなど、四季折々の山の幸と出会うことができます。一日の作業を終え、皆で食卓を囲み、口にした山の幸は格別の美味しさでした。

 

山で集めてきたタラの芽、ワラビ、こごみなどの様々な山菜

 

 また、地元の山形大学のメンバーに案内してもらって、皆で生き物観察にも行きました。例えば、5月の活動では、ゲンゴロウが沢山生息している池に連れていってもらいました。池に網を入れると、ゲンゴロウが次々と網に入りました。絶滅危惧種に指定されているゲンゴロウがたくさんひしめき合う光景を見たのは初めてだったのでとても感動しました。他の季節の活動でも、オオクワガタやルリイトトンボなど珍しい生き物を見ることができました。

 

 ご興味を持たれた方はお気軽にご連絡ください。

 

 連絡先:satoyama.hozensaisei@gmail.com

 

 

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