GRADUATE

2026年3月21日

【卒業生訪問2026】東大卒業生に聞く仕事と就活 ⑥横浜法律事務所

 

 就活では多くの業界・企業を見た上で進路を選択することが重要だ。しかし多種多様な仕事について、社会人の話を直接聞ける機会は多くない。そこで今回は幅広い業界から六つの企業を訪問。東大の卒業生に仕事の内容ややりがい、就活時の経験などについて聞いた。インターネット上の情報だけでは知ることができない、業界や企業の魅力や実態を知って進路選択の参考にしてほしい。(構成・赤津郁海、取材・平井蒼冴)

 

広谷渉(ひろたに・わたる)さん 21年東大大学院法学政治学研究科修了

 

 労働事件を中心に、さまざまな種類の事件を扱う横浜法律事務所で弁護士として働く広谷さん。取り扱う事件は3割ほどが、解雇の是非や残業代の未払い、労災関係などの労働事件(労働者側)、残りが離婚や相続などの一般民事事件などだ。60年以上の歴史がある事務所で常連のお客さんも多く、積極的に応募して法律相談に乗ったり、先輩から誘われたりして仕事を見つけていく。

 

 理Iから工学部、大学院工学系研究科と大学では理系で、量子コンピューターやシミュレーションなどを研究した。しかし、もともと文系分野に興味があったことに加え、進路決定を先延ばしにしたいという気持ちも相まって、東大の法科大学院の未修者コースに進学した。

 

 法科大学院に入学し初めて法学を学び、法学と理系の学問が思った以上に近いことに気付いた。もちろん違う点もあるが、コンピューター科学と共通する部分も多いと思ったという。一方で未修者コースに入ったのに、コースの半分ほどが法学部出身者で「すごいところに迷い込んでしまった」とも感じた。

 

 未修者コースは3年制で、1年次に基礎を学び2年次に既習者コース(2年制)の1年次に合流する。1年で、学部の4年間と同じ授業を受けることになるが、教員にかけてもらった「1年で追いつくんじゃなくて、3年かけてゴールの時点で追いつけばいいから」という言葉を受け、無理しすぎないことを意識して勉強した。未修者コースは比較的合格率が低く、脱落者も少なくなかったというが、それだけに仲間を作り情報を交換し合うことを心掛けた。

 

 いわゆる四大事務所など、企業法務が中心の最大手事務所は合格発表前から就職活動が始まり、広谷さんもこの時期から就活を始めた。東大の法科大学院生の多くはこうした大手事務所に就職するが、広谷さんは就活中にこうした事務所を訪問しても、そこで働くイメージが浮かばなかったという。「具体的に誰のどういう権利を守っているかということが見えづらいと感じました」。そんな時に労働事件で、労働者に尋問が行われる場面を傍聴した。使用者側と比べ交渉力も力関係も圧倒的に劣っていながら闘っている労働者を見て、こうした人の力になりたい、労働者側で労働事件を扱う弁護士になりたいと感じたという。

 

 最初の司法試験での合格は期待していなかったというが、無事合格。現在の横浜法律事務所は、「権力、財力、腕力のない方々のために闘う」という理念に共感したこと、労働分野など幅広い分野のノウハウを吸収できることから入所を決めた。弁護士の就職の際には「事務所に合わせすぎずに、自然体で臨むことが大事」だという。

 

 共同経営型の事務所のため、弁護士になって4年目の広谷さんも共同経営者であり、働き方は完全に自由裁量。何時に出勤して何時に帰るか、その日事務所で働くか在宅勤務にするかまで自分で決められる。広谷さんは大体午前10時に出勤して、午後9時前に帰宅しているそうだ。裁判や打ち合わせ、法律相談をする日のほかに、書面を書くなど作業をするだけの日を作ることを意識している。1年目から1人での仕事があったが、初めは直接依頼人から費用をもらって仕事をするだけに、それに見合う働きができるか不安だった。今も受任する前に、依頼人が期待するだけの仕事ができるか慎重に検討している。

 

 いわゆる「町弁」として、個人相手の仕事が多い。依頼者が問題のある配偶者との間で離婚が成立した時など、成果が見えやすいことがやりがいにつながっている。その反面、事件に巻き込まれ、困っている人を相手にするだけに感情労働としての大変さも。依頼者の感情に引きずられないように適切な距離感をとることを心掛けているという。

 

 神奈川県の人口は東京のおよそ半分だが、弁護士は東京の12分の1ほどしかいない。それだけに仕事に困ることはあまりなく、やりたいことも多くできるという。特に横浜は外国人が多いため、仕事をする上で英語が必要なことが多く、中国語や韓国語を駆使して活躍する先輩もいる。それだけに大学時代に英語をもっとしっかり勉強しておけばよかったとも感じているそう。一方で、大学時代に勉強しつつも映画を見たり本を読んだりして、弁護士に必要な想像力が養われたことは良かったと話す。

 

 「私のようにふらふらと法科大学院に入って、気付いたら弁護士の中でも特色のある労働事件を扱う弁護士になっているような、そんなキャリアパスもある。進路について周りに流されずに、自分の中のしがらみを取っ払って、自由に進めばいいと思います。東大にいる人たちは、そうしてもなんとかなります」と話した。

 

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