学術ニュース

2020年7月3日

甘味の好みを決定する遺伝子領域発見

 大規模遺伝子解析会社ジーンクエストの川舩かおる氏、加藤久典特任教授(東大大学院農学生命科学研究科)らは、甘味の嗜好性に東アジア人集団特有の遺伝領域が関与していることを共同で発見した。味覚の地域差に関するメカニズムを明らかにする一助となる他、糖尿病予防や肥満治療などへの応用が期待される。成果は22日付の科学誌『ジャーナル・オブ・ヒューマンジェネティクス』(電子版)に掲載された。

 

 甘味への嗜好はヒトに生理的に備わった能力だが、糖類の過剰摂取は健康を害す恐れがあるため、甘味嗜好性のメカニズム解明は生活習慣病予防などに重要だとされている。一方、甘味への嗜好は地域ごとに異なること、遺伝要因が関わることが判明しており、甘味への嗜好の個人差の約50%は遺伝要因が占めるという報告もある。欧米集団を対象とした研究ではさまざまな味覚への嗜好性に影響する遺伝子領域が判明していたが、アジア系集団を対象とした研究はなかった。

 

 加藤特任教授らは日本人約1万2千人のゲノム情報とウェブアンケート情報からゲノム情報と甘味への嗜好性の関連を調査。「rs671」という遺伝子領域が甘味への嗜好性に関連することを明らかにした。

 

 rs671は東アジア人に特有で、アルコール代謝に関わる遺伝子内に存在し、酒への強さと関係する。解析の結果、酒に弱い遺伝型は甘味への嗜好性が高いことが分かった。アジア集団以外を対象とした先行研究では甘味への嗜好が強いほどアルコール消費が多いという逆の傾向が示唆されていた。さらに男女別でみると男性でより強い関連性が認められた。


この記事は2020年6月30日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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