東京大学教職員組合(東職)は5月7日、「東京大学教職員組合執⾏委員会有志」名義で、日本学術会議の法人化に反対する声明をウェブサイト上で発表し、今国会に提出された法案の撤回を求めた。
現在、政府主導で日本学術会議の法人化が検討され、日本学術会議の法人化を定めた法案が国会で審議されている。政府は法人化について、日本学術会議の独立性・自律性を高めることが目的と説明している。
日本学術会議は現状のあり方と変わる場合に保たれる必要がある要件として、①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性──を提示している。
東職は法案に関して、①上記5要件を尊重した法案修正のための審議がなされる兆しがないこと、②法案には首相が任命する監事による監査が盛り込まれるなど民主主義にふさわしくない学問の管理が危惧されること、③会員選考の独立性が担保されていないこと、④法案では「平和的復興、人類社会の福祉」への貢献を記した現行法の条項が削除されていること──を課題として指摘した。
東職は、2020年に日本学術会議が会員に推薦した6人の任命を、慣例に反して政府が拒否してから、日本学術会議は「なし崩し的に組織改⾰を迫られ続けた」と指摘。20年に任命を拒否された6人には、宇野重規教授(東大社会科学研究所)と加藤陽子教授(東大大学院人文社会系研究科)が含まれる。五神真・東大総長(当時)は政府に真摯(しんし)な対応を求める声明を出していた。
法案に対して、日本学術会議は4月15日に総会で、5要件を払拭するための十分な審議を求める決議をしている。これまでに、法案への反対や、日本学術会議の決議への支持、「性急」な改正の再考などを掲げた声明を、複数の学会や日本弁護士連合会、早稲田大学生活協同組合などの団体が出している。海外からも注目されており、Science誌の電子版にも取り上げられた。