インタビュー

2022年2月18日

【受験生にエール】「勝負の瞬間は自分を信じて」 インカレ女子三段跳優勝・内山咲良さん(医・6年)

 

 入試本番まであと少し。医学部医学科で学びながら2021年度の日本インカレ女子三段跳で優勝した内山咲良さんに、自身の受験や東大での生活について語ってもらった。東大で活躍するイメージを持って、全力を出し切ってほしい。(取材・松崎文香)

 

陸上の試合が入試本番に生きた

 

──中学で陸上を始めたきっかけを教えてください

 

 初めから陸上にかける強い思いがあったわけではなく、陸上部の雰囲気が自分に合っていたことがきっかけで始めました。100メートルだと部のレギュラーになれなさそうだったため、試してみて感触が良かった走り幅跳びを専門にしていました。それが功を奏したのか都大会にはしばしば出場でき、中学3年生の時には都大会で入賞することができました。

 

 高校に入ると陸上部の練習がかなりハードになりました。厳しい顧問の先生の下、仲間と一緒にきつい練習を続ける毎日が続きましたね。高校入学以降、都大会には出場できていたのですが、その先の関東大会に初めて出場できたのは高2の秋でした。その後も受験勉強をしながら部活を続け、高3の夏に関東大会で6位以内に入り、初めてインターハイに出場できました。

 

──陸上と受験勉強の両立について教えてください

 

 大学受験対策の塾自体は中学生の頃から通っていたのですが、本格的に受験勉強を始めたのは高2の冬です。通っていた塾の模試の成績が思いの外悪かったことで、スイッチが入りました。

 

 それから高3の8月に部活を引退するまでは体力的に辛い生活でしたね。土曜に大会があって塾を休むことも多く、その穴を埋めるために部活で疲れていても根性で机に向かっていました。初めのうちは長時間勉強するのが辛かったのですが、図書室に行ったり朝早く登校して学校で勉強したりと、勉強する環境をつくるために工夫しました。

 

 両立の上では周りに流されなかったのが良かったのかもしれません。受験生は周囲の人と比べて「あの人はあんなに成績が良いのに自分は……」と不安になりがちですが、私は自分に必要なことを冷静に考え、自分の受験勉強に集中することができました。背伸びをして難しい問題を解くのではなく、必要であれば基礎の基礎から始め、着実に勉強を重ねるうちに成績が伸びてきました。

 

──理科Ⅲ類の受験を決めた理由は

 

 小さな頃から医者になりたいと漠然と思っていました。生物が好きだったことや身近に病気を抱える人がいたことで、高校生の時に医学部を受験することを決めたのですが理Ⅲにこだわってはいませんでした。家から通える国立大医学部を目指して勉強する中、高3の夏の模試で良い結果が出たことがきっかけで、東大理Ⅲを視野に入れ始めました。

 

 それでも理Ⅲを目指す勇気が出なくて……。通っていた塾でも、トップの人が受けても受からないと言われていて、自分には難しいのではないかと思っていました。周りの人が背中を押してくれ、最終的には理Ⅲに出願しましたが直前まで迷っていました。

 

──受験当日から発表日まではどのように過ごしましたか

 

 受験当日は緊張の中でも自分の実力を発揮できました。高3の、インターハイが懸かった関東大会での経験が生きたのかなと思っています。関東大会では「実力通りかそれ以上のパフォーマンスを発揮できないとインターハイ出場は難しいだろう」と緊張していましたが、いざ試合直前になるともう自分のやるべきことは明らかなんですよね。練習を信じて、自分のすべきことをしっかりやろうと決めて挑んだ試合で無事結果を残すことができたのが、成功体験として息づいていました。

 

 天才がいくところだと思っていた理Ⅲの合格も、インターハイ出場と同じく、私にとっては少し背伸びが必要なことでした。でもこれ以上できないというくらい勉強したから、この瞬間だけは自分を信じてあげようという気持ちで試験本番に挑みました。

 

 東大の2次試験直後は全部やり切ったという開放感でいっぱいだったのですが、合格発表が近づくにつれ不安が大きくなって……。発表当日は朝6時に目が覚めてしまってソワソワしながら過ごしました。駅のホームでインターネットでの発表を見て、自分の番号を見つけた瞬間、うれしくてついホームの端から端までダッシュしてしまいました(笑)。

 

高校生のときに参加した和歌山インターハイ(写真は内山さん提供)

 

努力で才能の壁を打ち破る

 

──東大では運動会陸上部と医学部の学生を中心とした鉄門陸上部に所属しています。学業との両立に悩んだことはありますか

 

 高校時代にインターハイで結果を出せなかったことが心残りで、合格が分かった瞬間陸上部に入ることを決めました。入学してからしばらくは、体力的に厳しい日々が続きましたね。陸上部の練習と高校より難しい事柄を扱う大学の勉強の両立に苦労し、思うようにいかないなと感じていました。

 

 気持ちが変わってきたのは2年生になってからですね。つらいことが多く運動会の陸上部をやめようかなと考える中で「どうして大学でも陸上をやっているのか」と自分に問い直しました。陸上を続けているのは高校生の頃の自分を超えて、インカレをはじめとする大きな舞台で活躍したいから。研究や課外活動を頑張る学生がいる中で自分は陸上を選んだのだから、今は陸上を大事にしようと決めました。その原点を見直してからは生活の中心を陸上に変え、できる範囲でそれ以外のことを頑張れば良いと割り切れるようになりましたね。

 

昨年5月、関東インカレの女子1部三段跳びで優勝した(写真は内山さん提供)

 

──昨年9月には日本インカレの女子三段跳びで優勝しました

 

 4年生になって種目を走り幅跳びから三段跳びに変えたことで結果が出始めました。目標だったインカレにも出場でき、陸上中心の生活に変えたのは間違っていなかったのだと安心しましたね。

 

 昨年9月に日本インカレで優勝した時はもちろんうれしかったです。それまでは陸上選手としての自分はどこか足りないと感じていたので……。高校生の時は無名の選手でしたし、大学でも4年生になるまでインカレに出場すらできていませんでしたから、大学1年の頃からインカレに出て活躍しているような選手たちには引け目を感じていました。だからこそ優勝した時は、陸上の才能はないと感じながらも、これまで努力し続けてきたからこそ壁を打ち破れたんだなと、過去を振り返ることができました。

 

──今後の展望を教えてください

 

 ひとまず今年6月の日本選手権までは陸上を続ける予定です。4月以降は研修医としての生活と陸上を両立することになりますが、結果に納得できていない昨年の日本選手権での悔いを晴らすべく頑張りたいと思います。医者としては、人の体にも心にも寄り添えるような医師になることを目標に、一生勉強ですね。

 

──受験生へのメッセージをお願いします

 

 私は最初からなんでもうまくできるというよりは、何度も同じことに繰り返し取り組むうちに少しずつできるようになるタイプでした。勉強でも陸上でも続けているうちに、自分にとって必要なことの取捨選択の精度が上がったことが結果につながったと思います。何をする上でも自分を理解することが大切なのかなと感じます。

 

 本番を直前に控えた受験生は、きっと不安になることも多いと思います。でもどれだけ頑張ってきたかは自分にしか分からないことだからこそ、それまで勉強してきた自分を肯定してあげてほしいです。「やらなければいけないことがあって、そのやるべきことをやるだけ」と覚悟を決めてしまえば、本番も案外落ち着いて取り組めるかもしれません。試験当日のその瞬間だけは、自分のことを信じて頑張ってきてください。

 

内山咲良 (うちやま・さくら)さん 医学部医学科・6年
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