部活・サークル

2017年11月20日

東大硬式野球部はなぜ勝ち点を取れたのか? 秋季リーグ戦をデータ面から振り返る

 この秋のリーグ戦、東大硬式野球部は3勝を上げ、法政大学に連勝して勝ち点を得た。また、宮台康平投手(法・4年)が東大出身7人目のプロ野球選手として北海道日本ハムファイターズに指名された。

 

 本稿では、こうして実り多い物となった秋のリーグ戦をデータの面から振り返りたいと思う。

 

 一つ注意点を述べると、以下選手個人の成績について触れる箇所がある。試合数が少なく、打席や対戦打者の数は決して多くはない。各選手の能力というよりは、貢献を評価するものと考えていただきたい。

 

●打撃

打撃チーム成績

 

 宮台投手の存在から誤解されがちだが、今回、東大の躍進の原動力となったのは打撃である。出塁能力と長打力を考慮した打力の指標であるOPSでは上位には及ばないものの、早稲田と立教を上回り、他校と比べて遜色ない打力であった。その要因となったのが単純な打率の向上に加え、長打を増やすことにも成功したことだ。ISOは長打力を評価する指標で、これが近年(15年春~17年春の東大の累計)と比べてかなりの改善を見せている。

 

 個人に目を向けると、楠田と田口の成績が素晴らしい。

 

 

 BaseRunsという打撃成績から得点を推定する式を用いて「各選手が何点分チームの得点を増やしたか」、また「それは六大学野球での平均的な選手が同じ打席に立つのと比べたら何点にあたるか」、さらに「平均を100としたら1打席あたりの貢献はいくつに当たるか」を推定した。表には規定打席到達者で平均と比較した場合の上位15人と、東大の規定打席到達者を示している。

 

 楠田と田口は「1打席当たりの貢献度」でそれぞれリーグ4位、5位と東大の得点に非常に貢献した。2人の貢献は約20点と推定され、実際のチーム総得点が45点であることを考えると、2人の存在は非常に大きかったと言える。また、辻居と新堀もほぼリーグ平均の水準で規定打席に到達した。三鍋についても捕手という難しい守備位置であることを考慮すると十分な成績と言える。一口にリーグ平均と言っても、試合に出場している選手は全部員の一握りだということは忘れてはならない。選ばれた選手と同等の成績という十分な質を維持しつつ、規定打席という量もこなしたことは大いに評価されるべきである。

 

●投手

 上でも述べたとおり、投手の成績はここ数年と比べ大きく改善されたわけではなかった。守備の影響を出来るだけ取り除くため、奪三振、与四死球、被本塁打から推定した失点率である積算DIPSを算出した。

(参考URL:http://baseballconcrete.web.fc2.com/alacarte/mdips.html

 

投手チーム成績

 

 東大の投手にとって課題で有り続けているのは、奪三振能力が低いことである。投手はフェアグラウンドに飛んだ打球がアウトになるかヒットになるかは完全には制御できない。そのため、奪三振は安全にアウトを取る重要な手段である。擬似的な失点率であるDIPSが高くなっていることも、この奪三振の低さが主要な原因である。

 

投手個人成績(規定到達者)
宮台個人成績

 

 今季の宮台は、不調であった17年春よりは四死球の数が減少して改善している。しかし、最高の成績を残した16年春と比べると奪三振の面で十分な成績を残せていない。勿論、数多くの連投を強いられたことも考慮する必要はある。しかし、怪我をする以前は20%の打者を三振に取っていたことを考えると、約半分の打者しか三振に取ることが出来ていない。怪我の後、フォームを上手く変更したという報道もあるが、怪我の影響をごまかしつつの投球だということが正直なところではないか。プロ入り後はまず、本来の姿を取り戻すことが課題だろう。

 

 ただ、これは宮台への要求水準が高いことから来る評価だ。東大の投手は奪三振が四死球を上回ることすらそう多くはない。今年の宮台の質の成績は東大の投手としては十分高水準である。その上で連投を何度もこなし、チームの半分以上のイニングを消化した貢献の量は賞賛に値するものだ。

 

 今後の課題についてだが、野手は今の打力を維持することだろう。楠田と田口の二人は今年で引退となる。投手の課題は宮台の穴を埋めることだ。先述の通り、今季の宮台は十分な状態ではなかったにせよ、チームの投球回の半分以上を十分な水準の投球で投げ抜いた。これを埋めることは用意ではないだろう。

 

 今季は宮台の投だけではなく、打も東大の歴史ではまれに見る内容である。決してドラフト指名された宮台の個のチームという訳ではない。しかし、世間はそう認識してはくれないことも仕方がないことではある。近年まで大型連敗を繰り返していた反動もあるかもしれない。打撃の面でも生まれ変わった東大野球部の今後に期待したい。

 

文責:猫掌打(農・5年)

Twitter: @so_cute_tiger

 

※BaseRunsを六大学野球リーグで用いることが妥当かは個人で検証済み。

※BaseRunsの詳細な解説は以下を参照

https://www.fangraphs.com/library/features/baseruns/

 

【関連記事】

データで読み解く東大のドラフト候補・宮台の現在地

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit
koushi-thumb-300xauto-242

   
           
                             
TOPに戻る