COLUMN 2014年4月7日

【サークル奮闘記】東大アイスホッケー部の終わりなき挑戦

「10! 9! 8!……」

カウントダウンの声が観客席から自然とわきおこる。

点差は4点。10秒では覆せるはずもない点差だが、相手の上智大学は最後まで食らいついていた。

「3! 2! 1!!!」

試合終了のブザーが鳴る。だが、その音はほとんど聞きとれなかった。ブザーは歓声にかき消され、グローブは歓喜と共に宙を舞う。

2013年11月1日。

その瞬間、東大アイスホッケー部は2007年に入れ替え戦で破れ3部に降格して以来の関東大学リーグ2部昇格を決めた。

東大アイスホッケー部は、スケート靴を履くのさえはじめてという部員がほとんどであるチームだ。

アイスホッケーは、スケート靴を履き、スティックを使って、黒い硬質ゴムでできた扁平な球をゴールに入れることを競うスポーツである。防具を着込むため激しい接触プレーも認められる。スケート靴を履いて競技を行うことによるスピード感、激しいプレーによる迫力、スケート靴が氷を削る音、プロによっては160キロを超えるシュートやパスなど、魅力は尽きない。アメリカでは野球、アメフト、バスケと並んで4大スポーツと称されているほどだ。

 1部から5部まである関東大学リーグの中で、東大アイスホッケー部は近年長らく3部に甘んじてきた。1部所属のチームはいずれも推薦校であるが、初心者主体のチームもちらほら見える2部に上がるというのが宿願であった。

ところが、練習を十分に積んで大会にのぞむどころか、部員の確保にさえ悩む年もあった。2011年の冬合宿に参加した部員はわずか11人であった……。

大きな不安と共に迎えた2012年シーズン。新4年生はたったの3人(うち1人はゴールテンダー)、新3年生は4人、新2年生は7人。どのように頑張っても、ホッケー経験1年にも満たない新2年生をレギュラーに加えて試合に出場しなければならなかった。

「下手したら4部に降格するんじゃないか……」

だれも言わなかったが、そんな重苦しさが部内を覆っていた。

だが、その年の新入部員はプレイヤーだけで9人。にぎやかさが部に加わる。チームが若返り、新しい時代が始まろうとしていた。

icehockey1.jpg

東大アイスホッケー部にとっての大事な公式戦は、春大会と秋リーグであるが、どちらかと言えば昇格のかかっている秋リーグが本番である。

春はトーナメント、秋はリーグ戦で戦うが、なんと2012年の春大会では初戦で格下の一橋大学に負けを喫し、5位に終わった。

その年は、5月末の春大会第2戦まで、練習試合も入れて1月以降全敗であった。その事実だけで初心者の2年生の全員をセットに入れて試合に出なければならないことの難しさがうかがえるだろう。

 厳しい練習がその後は待っていた。しかし、夏の2週間の釧路合宿を終えるころにはチームは見違えるように強くなっていた。

蓋を開けてみれば、3部リーグ3位(2位のチームも入れ替え戦に勝利して2部昇格した)、七帝戦3位であった。これは2011年シーズンより良い結果である。

「いちばん下手なやつがどれだけ上手いかでそのチームの強さは決まる」

「ホッケーは全員でやるもんなんだ」

そのことは残った部員の心の中に刻まれた。

年はかわって2013年。正月の長野県野辺山合宿で1年は始まる。今年こそ優勝する。その思いに、チーム全員が燃えていた。

その年は、3、4年生だけでレギュラーを組むことができた。2年生は、去年までと違って、漫然と練習していたのでは試合に出ることはできない。しかし、全員が燃えていた。全員が。

2年生もそれまで以上に練習に励んだ。レギュラーとしてチームに貢献することを目指して。

迎えた春大会、初戦、第2戦と危なげなく勝ち進んだが、最終戦直前に、FWの3年生が骨折、また、以前から肩を痛めていたスコアラーの3年生の高橋も試合には出られない状況。そして、前々日にはゴールキーパーが通学途中で車にひかれる、という災難にあっていた。この不利な状況で上智大学との決勝戦を戦うことになった。

結果は0対3の敗北。

まったく及ばなかった。春、秋2冠を目指していただけに、優勝を喜ぶ上智大学を横目に、部員はみな唇を噛んでいた。

秋こそは勝たなければならない。

その悔しさと決意を胸に刻んで夏合宿に望んだ。

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釧路の夏合宿での練習試合は大部分が地元釧路の高校生が相手である。初戦の旭川医大戦以降、釧路教育大、江南高校、釧路工業高校、武修館高校などに連敗を喫した。いずれのチームも技量、パワー共に東大を遥かに凌ぐ。そして煮え切らない思いで2週間の合宿における最後の練習試合を迎えた。

最後の相手は筑波大学医学部であった。筑波大学は2部リーグに属しているので格上ではあるが、2部昇格を目指す身としてはどうしても勝ちたい一戦であった。

強力な得点力を持つ釧路の高校生を相手に練習試合をしてきただけあり、合宿で身につけた堅い守りで得点させず、1−0で勝利した。

それ以来、危なげなく秋大会4戦にストレートで勝利し、迎えた11月1日。

同じ3部リーグを戦う上智も、そこまで全勝。

勝った方が即時優勝決定。

そんな一戦であった。

不利な状態で戦わなければならなかった春の大会とは対照的に、東大はシーズン初のフルメンバーであった。

この1年間、すべてはこの試合のためにあった。

やりたいことはすべて出し切った。

終わってみれば負けるはずもない戦いだった。今では、技術も体力も知力も東大のほうが勝っていたのだ。

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 2014年。

今年は2部リーグ優勝を目指している。

困難ではあるが全く不可能な目標ではない。今シーズンはいままでになく革新的なチーム運営を行っている。合宿に元NHLコーチまで呼んだ。

東大というチームにあるのは他でもない「頭」である。

常に新しいことを、そして合理的な練習、チーム運営をしていくこと。これが勝利への秘訣だ。

今年も我々はより高みへと到達するだろう。

是非応援いただければ幸いである。

Homepage: http://tokyo-icehockey.appspot.com

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