INTERVIEW / PROFESSOR 2018年1月15日

【受験生応援2018】東大教授が語る2次試験の意味 「知識ではなく考える力を試す」

 センター試験が終わり、2次試験に向けた最後の追い込みが始まる。センター試験とは全く違うスタイルの2次試験に、どう向き合えば良いのだろうか。

 

 2021年からセンター試験に代わり導入が予定されている「大学入学共通テスト」の制度設計にも携わった上田正仁教授(理学系研究科)に、東大入試に込めた思いを語ってもらった。

(取材・撮影 一柳里樹)

 

 

――東大入試は受験生にどのような力を求めているのでしょうか

 これは全くの個人的な意見ですが、文科系・理科系問わずあらゆる学部・学科がある東大は、日本のあらゆる部門で活躍する多様な人材を輩出したいんだと思っています。一つの入試でそういう人材を選別するために試すべきは、知識ではなくて考える力。それを純粋な形で試すためには、答えるために必要とする知識量を減らした上で、深く応用することによって初めて答えにたどり着けるような問い掛けをすることが重要になってくるわけです。

 

 必要な知識は、基本的に教科書に書いてあることが全て。でも、それを処理するには非常に高度な思考力・判断力が必要とされる――そんな問題が理想です。

 

 この力は、創造的な仕事をする時に求められる能力にほかなりません。真に創造的な仕事では、インターネットから取れるような知識はほとんど要りません。目の前に並べられた事実を深く理解し洞察する。そして、その背後にどんな法則があるかを見抜く――求められるのは、そんな純粋な思考力です。

 

――東大にとって入試の位置付けは

 入試は企業におけるリクルート活動と同じ。東大はどんな人を育てたいか、どんな人が日本の将来にとって必要だと思っているか、そんなメッセージが凝縮されているのが入試問題です。

 

 東大は、考える力を持った学生を選抜するために各教科、莫大な時間をかけて問題を作っています。それもほとんど全て記述問題。1万人分の記述問題を採点しないといけないから、採点で日本の学問が10日間止まるといっても過言ではありません。でも、そのコストを払ってでもやる価値のある仕事だと思っています。

 

――東大入試を取り巻く現状をどう見ていますか

 年間3000人も採らないといけないという条件を考えれば、最適かどうかは分かりませんが今の東大の制度は良いシステムだし成功していると思う。入試問題も良問ぞろいですよ。典型例が世界史。学習指導要領を超えた知識は要らないのに、他のどの大学よりも思考力を必要とする難しい問題を作っている。

 

 でも、昔より東大入試は簡単になりました。第2次ベビーブームの時には200万人以上いた18歳人口が、今は120万人。でも東大の入学定員は変わっていない。当然、合格は容易になっています。そんな今、トップ層の学生にとってもはや東大入試は簡単すぎる。彼らは、昔は受験のためにつまらないことをいっぱい覚えなければいけなかったけれど、今はその時間を自分の興味を伸ばす方向に使うことができています。

 

 とはいえ、前期試験だけではとんがった人を採り切れない。その問題を解消するために推薦入試を導入しました。前期試験と推薦入試のハイブリッドで、できるだけ多様な人材、日本の将来のいろいろな部分を背負っていく人たちを確保していきたいです。前期試験でカバーできないけれど、東大生の仲間に入ってほしい素晴らしい人はいっぱいいる。そういう人をリクルートしていく試みの一つが推薦入試だと思います。

 

――今の受験生に思うことは

 受験は良い訓練なんですが、やり方を間違えるとマニュアル的な思考にとらわれてしまう。逆に意識的に勉強すると、受験勉強って本当に考える力が付きます。

 

 われわれは考える力を持った学生が欲しい。そのために莫大な時間をかけて問題を作っています。でも、新傾向の問題を作っても、塾関係者などプロの人が分析してマニュアル化する。生徒さんはノウハウをお金で買う。ただ、それは生徒さんのためにならない。本当は自分で考えないと。

 

 時間はかかるけど、その分析を自分でやった受験生はプラスアルファの判断力・思考力が付くから強い。分析を自分の頭でやった方が、別の人にやってもらってただ与えられた練習問題を解くよりもはるかに考える力は鍛えられる。良い教材はたくさんあるから受験生も利用してもいいけど、教材の意味を理解した上で使っているか、と自問することも大切です。

 

上田正仁(うえだ・まさひと)教授 (理学系研究科)

 88年、理学系研究科修士課程修了。博士(理学)。東京工業大学大学院教授などを経て08年より現職。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会委員、文部科学省高大接続システム改革会議新テストワーキングループ委員などを歴任し、学習指導要領の改訂や大学入学共通テストの制度設計に携わった。著書に『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』(PHP文庫)などがある。

 

2018年1月30日3:25【記事修正】第2段落および上田教授の経歴内にある「大学入学共通テスト」の部分の誤植を修正しました。

 

 

【受験生応援2018】

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