EVENT 2018年5月29日

【五月祭シンポジウム抄録】人工知能の未来を語り合う 会場も巻き込んだインタラクティブなイベント

 5月20日(日)、東京大学新聞社は東京大学五月祭にて、シンポジウム「人工知能を用いた応用研究の射程と社会実装の課題」を開催した。シンポジウムでは、人工知能の一分野である機械学習の可能性や限界について、基礎から応用、ビジネス分野における専門家4人が招かれ、観客も含めた熱い議論が交わされた。

 

 

 シンポジウムの登壇者は以下の4人。いずれも各分野の最先端で、人工知能に関連し精力的な活動・研究を行うエキスパートだ。彼らの詳しい研究・事業内容については、5月16日から4日間にわたって公開されたオンライン記事にて確認してほしい。

 

統計的機械学習の基礎理論の研究者・杉山将教授(新領域創成科学研究科)

都市計画の理論研究において機械学習を活用する羽藤英二教授(工学系研究科)

農業機械を機械学習で改善する研究を行う海津裕准教授(農学生命科学研究科)

株式会社ディープコア代表取締役社長・仁木勝雅さん

 

 シンポジウムは本郷キャンパス・工学部3号館4階の小教室にて開催された。定員は90名弱で事前予約制だったが、当日は予約外も含め140名を超える観客が来場した。1時間半にわたり、シンポジウムは立ち見客で溢れるほどの盛況ぶりだった。もともと「機械学習を研究や事業に役立てたい学生や社会人」を対象にしたイベントということもあり、来客層には理系の学部生や院生、実業家など、研究や事業に人工知能を本格的に活用することを望む人が多かった。

 

 「登壇者だけでなく、観客も含めてインタラクティブなイベントにしたい」との主催者側の意図から、シンポジウムは座談会形式に。話題が一区切りするごとに質疑応答の時間が設けられ、人工知能に対する素朴な疑問から、専門的な話題まで、議論は熱く盛り上がった。

 

 

 話題を一部抜粋して報告しよう。シンポジウム冒頭、各登壇者が自らの研究内容や機械学習への姿勢について語る場面があった。羽藤先生は「人間側が課題を発見し、機械学習によって解ける問題に落とし込む作業が重要」「人間による感覚値というのは、機械学習の分野でも健在だ」と語った。

 

 基礎研究に関する議論の途中では、会場から「日本の機械学習の分野では、データを取るのが困難だと思う。中国やアメリカは兆単位の資金を投入し膨大なデータを集めているが、日本は法による規制も多い中、それをどう打開していくのか」との質問があった。杉山先生はこれに対し、「基礎研究の分野では、少ないデータでも良い性能を示す機械学習の研究がかなり進んでいる。データ量で勝負するというより、最小限のデータでも最大の効果が得られる技術に期待すべきだ」との意見を語った。医療分野に機械学習を応用する試みなどは日本の得意分野で、それらを強化していくことも重要だという。

 

 機械学習研究の出資体制について、仁木さんは「基礎研究については国がもっとお金をだすべき」との意見だ。たとえ大企業でも、一つの研究を支援できるのは5年から10年が限度で、短期で成果のでやすい研究ばかりがクローズアップされることになってしまうという。

 

 機械学習の汎用性という点も議論に上がった。海津先生は「農業分野では、農作物の種類や性質全てを変数として管理し、農作業を全自動化することは困難。やはり人間の勘に頼っている側面は多い」と語る。その一方で、杉山先生は「機械学習の基礎理論構築の段階では、応用分野の諸問題から共通項を見つけ出し、それを一つの理論に収束させることで複数の事象に適応可能な統計理論を生み出すべく研究を進めている」との意見だ。

 

 質疑応答の際には、「人間の知的活動の全てを模倣できる汎用人工知能は今後作られるのか」「医療分野へのAIの応用」「社会のAIに対するリテラシーを高めるために必要な数学や統計についての教育」「基礎分野におけるデータ収集・活用の仕方」など多種多様な質問が観客席から飛び交う。登壇者は一つ一つの質問に丁寧に答え、シンポジウムの時間枠では収まらないほど議論は白熱した。

 

 来場者にはイベント終了後アンケートを記入してもらったが、シンポジウムに対する満足度はおおむね良好。「良い機会をもらえた」「新たな知見を得た」などの意見がある一方で、「事前に登壇者への質問内容を設定しておくべき」「十分議論するには時間が短すぎた」など厳しい意見も。しかし、シンポジウム終了後に登壇者と観客を集め懇親会を開くなど、今後につながる交流の場が設けられたことは大いに意味があるだろう。イベントに関わった人々に少しでも有益な時間を提供できていることを願う。

 

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