キャンパスライフ

2020年9月19日

【発表の場を守る決意が原動力】五月祭 史上初のオンライン開催の舞台裏

公式ウェブサイトの企画一覧ページは、掲載順がランダムなため、思わぬ企画が目に留まることも

 

 9月20、21日の第93回五月祭は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受け、史上初の全面オンライン開催となる。五月祭全体の企画・運営を担う第93期五月祭常任委員会(以下、委員会)は、どのように準備を重ねてきたのか。委員長の片野あかりさん(経・4年)への取材からは、紆余曲折を経ながらも、日頃の成果を発表する場を守ろうとする委員会の姿勢がうかがえた。(取材・小田泰成)

 

オンライン開催は苦渋の決断

 

 本年度の五月祭は、5月16、17日に本郷・弥生キャンパスで開催予定だった。しかし春先からCOVID-19の流行が本格化。委員会は3月中旬に延期の方針を固めた。延期によって参加団体が減る懸念などから中止を推す声もあったが「発表したい人がいる限りは開催すべき」との結論に至った。結果的には中止にならなかったことで、学園祭という文化そのものや運営のノウハウの継承につながったのではないかと片野さんは語る。

 

 延期決定後、委員会でまず出されたのは、入構制限を設けて本郷・弥生キャンパスで開催する案だった。オンライン開催案は、まだ世間でリモート飲み会などのオンライン文化が浸透していなかった頃、委員会内や他大学の学園祭の関係者との雑談から冗談半分で生まれたという。オンライン開催実現のめどが立つまでには、課題発見や解決策の提示、東大本部との調整などで2~3カ月を要した。

 

 片野さんはオンライン開催を「苦渋の決断だった」と語る。COVID-19の感染拡大を防ぐためとはいえ、来場者はキャンパスならではの体験を得られず、模擬店など参加する余地のない団体も出るからだ。

 

 結局、参加企画数は約110と例年より減少した。「委員会の存在意義は、一つでも多くの団体に発表の場を持ってもらうことなので、悔しいです」。不参加の団体からは、COVID-19の影響で課外活動が制限されていたため準備期間が足りない、との声も上がった。オンラインで可能な企画の例を十分に示せなかったことなどが、反省点に挙げられるという。一方、参加を検討中の団体に向けた企画立案などに関する相談会を例年より多く開くといった、丁寧な対応は実現できた。

 

 変化は委員会の業務内容にも及んだ。例えば、例年キャンパスで配るパンフレットは、今回は作成しないという。一般的には電子版を配る案も考えられるが、利便性を考え、パンフレットを介さず公式ウェブサイトで情報を一元化した。

 

 オンライン開催の最大の利点は、直接キャンパスを訪れるのが難しい人も「来場」しやすくなることだ。委員会も「東大と全国がつながる」というキャッチフレーズを掲げる。

 

 例年にない企画も登場した。例えば公式マスコット「めい」の魅力を発信する担当者は、当初キャンパスで開催予定だった企画をやめ、初の試み「めいちゃんパレード」に挑む。「めいちゃんと各参加団体が同時に映る様子をキャンパスで撮影し、1本の動画にまとめます」

 

 本年度から始まった工夫も多い。ライブ配信に慣れていない参加団体でも安心して本番に臨めるように、配信機材レンタルの仲介を新たに導入した。公式ウェブサイトでは企画のランダム表示機能を実装。来場者と企画が偶然出会うきっかけを確保している。

 

機材を用いた配信テストなど、準備も着々と進んでいる(写真は五月祭常任委員会提供)

 

応援や協力が委員会の支えに

 

 準備期間を通じて、片野さんは委員会の底力を感じたという。パンフレットを使わない情報の集約や「めいちゃんパレード」は、必ずしも担当者が当初やろうとしていたことではない。キャンパスでのラリーなど、オンラインでは代替不可能と判断された企画もある。「やりたいことができない苦しさがあっても、五月祭のために何ができるかを考え、時に『やらない』と決断できる使命感は委員長として誇らしく思います」

 

 片野さんは委員会以外の関係者にも感謝の思いを語る。まずは東大本部。一部の参加団体は当日キャンパスに集まるため、COVID-19の感染拡大を懸念する声もあるという。それでも「学生の文化発表の意義を理解して、開催に向けた調整から教室借用などの事務作業に至るまで、前向きに協力してくれました」。参加団体については「今年何ができるかを前向きに検討してくれたのは心強いですし、委員会としてもここまでやってきて良かったと思えます」と語る。

 

 最後に、片野さんに来場者へのメッセージを聞いた。「委員会や参加団体にとって、五月祭を応援する人の存在は支えになります。ベストを目指して頑張るので、楽しみにしていてください」

 

片野 あかり(かたの あかり)さん(経・4年)

 


この記事は2020年9月15日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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