COLUMN 2018年6月4日

【日本というキャンパスで】劉妍② 区の行政文書に留学生の視点

 本郷キャンパスが位置する文京区には東京23区内で最多となる約8千人の留学生が在住。文京区側は増加する外国籍住民に対して行政サービスの情報提供・諸手続きの円滑化の充実を図る。さらに東大側では英語プログラムの増加でチューター・教職員のサポートが必要な状況が増してきている。そこで2015年8月に、文京区アカデミー推進課と東大国際本部の協同プロジェクトとして文京区行政文書多言語化サポート事業が実施された。

 

 主な作業は区の文書を英語や中国語、韓国語に翻訳すること。外国人が理解しづらい住民登録、税金、年金といった自治体での手続きは自己申告が中心のため、翻訳で行政情報・サービスを外国人に確実に把握してもらうことが目的だ。担当者は日本人学生2人(英語)と留学生6人(中国語の繁体字・簡体字、韓国語)から成り、記者は中国語の簡体字部分を担当した。

 

 作業は、まず前回の翻訳で工夫した点や問題点を月例会で報告することから始まり、次に今回の翻訳資料に関する質疑応答・内容確認を行う。さらに、必要に応じて「文京区対訳表」に参考意見を提供する。

 

 中国語チームは部署名や書類名を中国語に訳す際、原則として日本語の文字そのものに忠実な訳をした上で中国語での一般的な書き方も併記した。中国語に翻訳された書類を見ながら手続きが行われる際、日本人職員と中国人双方の意見交換に支障が出ないようにするためだ。例えば、「戸籍謄本」はまず「户籍誊本」と訳し、注書きで中国語の一般的な書き方の「户口本复印件」を記した。しかし「户籍誊本」のように、日本語に忠実な訳で中国人が理解できる言葉がある一方、「扶養手当」や「介護」のように、日本語に忠実な訳だと意味が伝わらない言葉もある。その場合は「抚养补贴」、「看护」のように直接中国語での一般的な書き方にし、日本人職員にも意味が分かるよう必ず日本語を併記した。

 

文京区の窓口案内チラシを中国語に翻訳したもの(上)と翻訳前のもの

 

 翻訳では、国ごとの実情の違いも明文化した。例えば日本では4月~3月の会計年度は、中国では1月~12月と異なっているため、その点を明記した。

 

 中国は日本と同じく漢字圏の国であるからこそ、中国人は日本の漢字を中国語の意味通りに捉えがちだ。すると、中国語にない表現はもちろん、日本語と中国語の両方にある表現であっても意味を逐次確認しないと理解の相違が生じ得る。今回の翻訳事業は行政側が外国人に関して気付きにくい部分を補完する一方、日本社会の仕組みや日中間の文化の相違点を深く実感できる珍しい機会だった。

 

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【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う


この記事は2018年5月29日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)②
キャンパスガール:嶋村綾さん(文Ⅲ・2年)

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