INTERVIEW / FEATURE 2014年7月3日

いかにして「日本」を世界に発信するべきか?

今回 は、東京大学の公式プロモーションビデオ”Explorer”の制作を行った、グローバルに展開する広告代理店、Ogilvy & Mather Japan(以下O&M)の久保明彦社長兼職務執行者・グループ代表にお話を伺いました。東京大学のプロモーション・ビデオの制作秘話や大学のブ ランディングに関する課題から、東京、日本という国のマーケティングに関することまで幅広いお話を伺うことができました。今回のインタビューは二回に分け てお送り致します。

※前編はこちら:「『東京大学』というブランドの課題とは?」

――オグルヴィ・アンド・メイザー(O&M)様が取り組んでいらっしゃる、日本を世界に発信していくエクスポートビジネスについてお聞かせください。

私達はクリエイティビティが一番に重要なポイントだと思っています。そしてそのクリエイティビティはアイディアを基本とし、ブランドの価値観を発信し拡散していくメッセージを持っていなければなりません。ですから戦略的な土台と、時代精神、人々のニーズをしっかりと加味した上でのクリエイティビティである必要があります。本当に面白いアイディアなんだけどブランドに適さない、あるいは人々のニーズが加味されていないということでは意味がありません。戦略あってのクリエイティビティだと考えています。特にエクスポートビジネスではそこが凄く重要です。

例えば日本のブランドAと地域Bがあるとします。そこで我々は広告代理店として自分をどこにプロットするか考えます。ブランドAに近づき、あなたのブランドをよく理解していますという立場を取るのか、それとも地域Bに近づき、あなたの進出したいマーケットをよく知っています、地域Bの人々の悩みや好み・流行っているものや価値観をよく分かっていますという立場を取るのか。この時、ややもすれば前者の立場をとってしまいがちです。結果としてブランドをそのまま押し付ける形のコミュニケーションになり、ブランド価値の理解、売上につながらないケースがよくあります。

海外進出先でこの従来型のコミュニケーションを展開するブランドが多く見られます。自分達の国で成功したのだから、他でも成功するだろうという勝手な思い込みが背景にあるんですね。しかしそれでは上手く伝わりません。地域Bの人達に合ったコミュニケーションを取らなくてはなりません。もちろんブランド自体を裏切るわけではありません。ブランドの本質を残し、伝え方を工夫するのです。ただ、今後グローバル化に伴って物流を中心とした国ごとのコミュニケーションは通用しなくなります。もっと地域を横断する形でのコミュニケーションをとっていく必要があります。ですから結論としては、クライアントの課題解決のためには、地域B側をしっかり理解した上で、地域を超えて訴える効果的なコミュニケーションを作っていくことが重要だと思っています。

O&Mは多国籍企業で、多国籍企業のブランドを数多く扱っています。そのため、1つのブランドが世界中のどこに行っても通用するようなメッセージを開発する”ビッグ・アイディール(The big ideaL™)”というオリジナルのメソドロジーを持っています。世界共通の”大いなる理想”を開発し、エグゼキューションを国によってアジャストしていくのです。NYと日本などのキーマーケットが連携していくことでこれが可能になります。片方だけだとローカルエージェンシーなのですが、O&Mが目指しているのはクライアントのブランドのグローバル規模での確立ですね。

――アメリカですと、いわゆるコカ・コーラという世界的に有名なブランドがありますよね。そのような世界的ブランドを作り出すために必要なことはどんなことなのでしょうか?

そうですね、コカ・コーラはブランディングの優等生と言われていています。中身だけだったら数十円かもしれないのに、コカ・コーラというブランドがつくといくらになる、ということでブランディングのメタファーとしてよく使われ、あそこまで成功しているのはかなり特殊な例と言えると思います。アメリカでもコカ・コーラのような会社が沢山あるわけではありませんからね。

日本のコカ・コーラ社もすごく成功していると思います。コカ・コーラの面白いところは、「コカ・コーラ」自体はそこまで飲まれていないという点ですね。恐らくですが、日本コカ・コーラの商品ポートフォリオの中で、いわゆる「コカ・コーラ」という商品はあまり大きく貢献していないのではないでしょうか。

これは日本という地域に根差した、「いろはす」「ジョージア」「爽健美茶」というローカルなものが大成功している結果です。自動販売機は赤いけれども、中身は白だったり緑だったりするわけですよね。

それが本当にすごいと思います。そういった商品展開を地域にやらせているところですね。

コカ・コーラの一番の凄いところは、そこかも知れません。

――オリンピックに向けて、日本のカントリーブランディングについてはどうお考えですか?

商品でもサービスでも、また大学にもブランドがありますが、所謂地域ブランディング、カントリーブランディングというのも最近とても注目されています。実は、東京のブランド力は決して弱くないと言われており、指標によっては世界でもナンバーワンのブランド力があります。具体的な指標で数値が高いのは、安全性・食・交通機関などです。一方物価が高い・ダイバーシティという面が弱点です。特にこのダイバーシティという面から考えるとやはり山崎さんにご出演いただいたのは良かったかも知れません。女性の活躍、女性のロールモデルという部分はアジアの学生に響くところだと考えられています。近年ではアジアの企業に行くと女性のエグゼクティブがたくさんいますし、実際にO&Mのシンガポール社長は女性だったりします。日本だとなかなかまだ女性のエグゼクティブは少ないので、そういった部分が日本・東京のチャレンジかも知れませんね。

――東大・東大生も学術的な価値を世界中に発信していくことが鍵となっていくのでしょうか?

そうですね。日本というのは、単一民族・単一言語・単一価値観の国です。こういった地域は、言葉によるコミュニケーションの発達は他の世界の国々に比べて進んでいませんよね。「日本人同士なら、言わなくても分かる。」とか、「あうんの呼吸」「沈黙は金なり」という言葉にも表されていると思います。一方で、多言語多民族の国だと、何でもはっきりと口にしないと伝わりません。この部分が日本が抱える最大の課題だと思います。自分達の間で通じるものが他国でも通じると思ったら大間違いです。簡潔に、そして継続的にメッセージを伝えていく必要があると思います。

久保社長.JPGのサムネイル画像Ogilvy & Mather Japan 久保明彦社長兼職務執行者 グループ代表

――ありがとうございました!

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