COLUMN 2014年4月24日

【サークル奮闘記】最後の年こそ輝きたい。輝かなければならない。 東京大学WARRIORS

アメフト部円陣.png

2013年11月9日、於アミノバイタルフィールド。青い空の下、東京大学WARRIORSは勝利の涙に震えていた。
一橋大学を17-14の僅差で下し、4年生に最後勝ち星で引退してもらうことができた。よかった、本当によかった。部員、OBOG、スタンドのファンが次々に口にする。

しかし、新4年生が戻ると、部室は何とも言えない虚無感に包まれていた。2013年リーグ戦績は2勝5敗ブロック6位。リーグ再編成に伴い来年は1部下位リーグ所属、つまり日本一への道は閉ざされた、実質二部のリーグで戦うことになる。3年前、アメフトで日本一になるために集った23人の顔は、どれも無表情だった。もう俺たちは甲子園に行けない―無力さと後悔が渦巻いていた。

東京大学運動会アメリカンフットボール部WARRIORSは、1957年の創部から今年で58年目を迎える。目標は、学生日本一を決める甲子園ボウルで勝利すること。その歴史の永くに渡り、WARRIORSは強豪犇めく関東アメリカンフットボール部連盟の一部リーグで戦ってきた。選手はほとんどが未経験者で、アメリカンフットボールという競技がなんたるかから始め、上級生になりフィールドにたつ。所謂「最高学府」東京大学の素人集団が、プロ集団にスポーツで勝って日本一になろうとしている集団だ。
アメリカンフットボールだからこそできる。
アメリカンフットボールだからこそかっこいい。
これまで集ってきた800名余は「このWARRIORSというチームで日本一になりたい」という思いを共有していた。

新4年生ももちろん例外ではない。
2011年、横浜スタジアムで慶應義塾大学に食らいつき、勝利を手にした先輩たちを間近で見た。ほとんど何もしてないのに、いっしょに号泣した。1年生でこんなにうれしいのなら、4年生で最後勝って甲子園の土を踏めたら、どんなにうれしいのだろうか。自分たちも、先輩たちみたいな涙を流したい。先輩を超えたい。こんなに強い東大アメフト部に実現できないことは何もないと思っていた。
「実質二部」という現実がここまで、重く、しかし静かに心にのしかかってくるとは思いもしなかった。

 

だが、ここでぼうっとしている余裕などない。
次の日から始められた新4年生のミーティングは、一人一人が順に自分の弱さを淡々と語ることから始まった。あの一瞬踏ん張れば、あの一瞬のミスがなければもっと勝てたかもしれないという思いは、すべておのおのの弱さを露わにする刃物に過ぎない。
始めはぽつりぽつりと言葉が発せられていた学年ミーティングも、次第にこれからの一年への思いが語られると共に熱を帯びてくる。3年間戦ってきた同期が好きだ。この中の誰が主将に選ばれようと、自分はついていくと語るものもいた。学年の結束が固くなってきた気がしていた。しかし、そんな中で築かれた思いは脆いものだった。
水曜日の学年ミーティング、後に副将に指名される吉田亨が、話したいことがあるとみんなを早めに招集した。「なんだ、なんだ」とにやにやする同期に返された「いや、あとで」の一言から、皆ただならぬ雰囲気を感じ取っていた。円形に座った同期の顔を見渡すと、何人かの顔が明らかに青ざめて固い。緊張感に包まれた長い沈黙を吉田が破る。


「神田が、主将に指名された。」


2014年度の主将に指名されたのは、新4年生ではなく、1つ後輩の神田淳希だった。

たしかに新4年生には、これまで試合経験のある人も少なく、目立ったエースも、クオーターバック(野球で言えばピッチャーにあたるポジション)やスペシャリストという少数のキーポジションについている選手もいなければ、前で積極的に発言できる人も、周りを明るく鼓舞できる人もいない。
1つ下には、神田のように先輩にも臆することなく怒号を発する選手や、2人のクオーターバックに多くのスペシャリストたち、下級生ながら先輩を追い越しスターターの座を奪い取った選手など、45人の後輩たちが目をギラギラ光らせて控えている。今度は主将まで、自分たちの学年から出せなかった。築き上げられたと思われた自信も一気に崩れ落ちた。

新3年生の主将起用は史上初めてのことである。
WARRIORSの目標はあくまで日本一。下位ブロックで足踏みをしている暇などない。2014年は、1年で必ず上位に昇格しなければならないという大事な一年だ。そんな年の大抜擢には次の説明が付された。昇格を最終目標とするのではなく、次の年に甲子園を目指せるチームを長期視野で築かねばならないこと。また、学年の壁を取り壊し、上級生下級生選手スタッフに関わらず、全部員がチームに主体的に取り組まねばならないこと。新3年生主将起用は、これらのことを達成するための足がかりだということであった。

だが、そんな説明も、新4年生が頼りないという事実を突きつけられたことへの慰めにはならなかった。
自分たちに求められているのは、とにかく自分たちの能力を上げること。フットボールに真摯に取り組むこと。自分たちの底力を見せつけること。
それはわかっている。
わかってはいるはずだが、一度崩れた儚い自信は再構築などできないほどに脆かった。学年はばらばらのままオフシーズンを迎え、年が明けた。学年ミーティングは開かれず、5人の幹部だけが勝手に熱を上げている。主将はまだ受け入れられない。主務が息巻いて何か言っているが意味がわからない。副将2人も何を考えているのかわからない。溝は深まる一方だった。

アメフト部走る.pngのサムネイル画像

そんな状況を打破してくれたのは、やはりフットボールだった。
1月末、久しぶりの御殿下グラウンド。寒い冬空の下、人工芝の温かさを踏みしめながら、久しぶりに部員の汗を見る。
フットボールって楽しい。ああ、やっぱり僕たちは、アメフトがしたくて集まった仲間なんだ。
ふと原点に帰った気がした。


新4年生の学年ミーティングも再開し、徐々にお互いのこともわかってきた。3年間共に暮らしてきた23人だが、これまで気づかなかったお互いの一面がまだまだたくさんあった。誤解やわだかまりの糸を一本ずつ解く、地道な作業が続けられた。
進んでは立ち止まり、コーチに、OBに、後輩たちに叱咤されてまた進み、また立ち止まり、同期を鼓舞しあいまた進み…少しずつ、少しずつだが、前に進んでいるはず。

アメフト部がんばれ

今年の目標は、もちろん「全勝・上位リーグ昇格」。
そして学年ミーティングで話し合われた、今年のスローガンは『SHOW』。
『SHOW』は、自分を表現する、意志を言葉にして発信するという意味でつけられた。部員ひとりひとりが考えていることやそれぞれの思いをもっと発信・実践していくチームになろうという思いが込められている。目標の実現のためには、勝ちに向かうために必要なことは何かを一人一人が考えることはもちろん、その結果を仲間と共有し、共にブラッシュアップしあうことが必要だ。それぞれの思いを部員同士のみならず、フィールドでも表現しようという意味もある。


「All-out Attack」「本気」「ぶっとぶ」「懸」「戦士魂」……かっこいい言葉が続いていた過去のスローガンとは並べられないような、一見普通の言葉。
しかし、「意志を持って、それを発信する。」この一言がどれだけ難しいことか、それを一番知るのは新4年生だ。
これまでおとなしく目立たなかった自分たちだが、最後の年こそ輝きたい。輝かなければならない。

2014年、東大生フットボーラーの意地を、見せつける。

【2014年度新歓PV】

文: 東京大学運動会アメリカンフットボール部 森安芽衣
写真:荻窪番長(公式ホームページ:http://www.bancho-o.com/)
編:菅野千尋

同じ記者の記事

関連記事

合わせて読みたい

SPORTS 2014年12月30日

東大ラクロス男子5年連続でFINAL4進出

COLUMN 2016年08月06日

【東大水泳部水球陣寄稿】リオ五輪「水球」の見どころ

NEWS 2015年06月24日

将棋学生名人戦で、村上由樹さんが優勝 東大から2年ぶり

SPORTS 2015年10月27日

東大硬式野球 逆転負けで連敗、リーグ優勝は早慶戦で決定

INTERVIEW / PROFESSOR 2016年05月16日

「東大で最高の知的興奮を体感せよ」 TEDxUTokyoを5月29日に安田講堂で開催

TOPに戻る