キャンパスライフ

2021年7月31日

【矢口太一の名刺アタック!】番外編 「意志あるところに道は開ける」鈴木英敬三重県知事が大切にしていること

 

 コロナ禍でも学生が会いたい人に会いに行ける手法を、実例を交えながら紹介する本連載・「矢口太一の名刺アタック!」。第4回では三重県知事 鈴木英敬さんへの名刺アタックの様子を紹介しました。この記事では、「矢口太一の名刺アタック!」の本編で取り上げきれなかった名刺アタックの全様を対談形式でご紹介します! 特に政治家や知事といった仕事に興味のある東大生の方、必読です。

 

鈴木英敬 三重県知事

鈴木英敬さんは東京大学経済学部を卒業後、通商産業省(当時、現・経済産業省)に入省。第1次安倍政権では官邸スタッフとして活躍。自民党公認候補として2009年の衆議院議員総選挙に旧三重2区から出馬も落選。2011年の三重県知事選挙で当選し、現在3期目。知事としてG7伊勢志摩サミットを誘致するなど活躍。小学校のころの夢は内閣総理大臣。

 

筆者・矢口太一について

筆者・矢口太一は新領域創成科学研究科修士1年。高校時代には、小学5年生から続けるセミの研究で、日本学生科学賞 内閣総理大臣賞を受賞。孫正義育英財団1期生。現在は感性設計の研究にも取り組みながら、事業家を志す。この連載では、コロナ禍でも人生の師匠と関係を築く方法をお伝えしています。三重県伊勢市出身。

 

──お久しぶりです!セミの名刺をお渡ししたのは5年前だったかと……。

 

 懐かしいなあ。大きなったなあ。

 

今回の連載の趣旨や、コロナ禍での状況を話すと、鈴木知事は自身の東大生時代を振り返ります。

 

 確かに、僕の大学1年生のときを振り返えると、テニスサークルとバイトばっかりやってたなあ。今コロナでこういうサークル活動もバイトもできへんやん。やから、友達できへんとか、社会から取り残された感じになるのわかるわ。

 

 僕ら文Ⅱやったから、余計に理系の子とかよりも授業とか実験とかあんまないから、すげえゆるかったけど(笑)。それでも、バイトとかサークルとか、もしできんかったら、かなりきつかったね。

 

 え、駒場祭とかもやってないの?まじで!?

 

今の自分につながった出来事は?

 

──東大行ってからも、三重出身ですって言ったら、鈴木英敬さんとこでしょって。なんでそんなにうちの知事は有名なんだろうってずっと思っていました(笑)。鈴木知事は僕ら東大の先輩でもあるし、こんな風になりたいなと思う憧れの先輩の一人です。どうやったら英敬さんみたいになれるの? なんていうちょっと学生っぽい疑問をテーマにさせていただこうと思います。

 

 はい、わかりました。何でも聞いてください。

 

──今ご自身で振り返ってみると、今の自分につながった出来事ってなんでしょうか。この出来事があったから、今の自分がいるということを挙げるとすると?

 

 そうやなあ。いっぱいある。一番わかりやすいのは、2009年の衆議院選挙で落選したことやね。その当時、自民党公認で出ましたと。旧三重二区から出て、それまでは改革派官僚とか言われて、竹中(平蔵)さん(小泉政権下で国務大臣を務めた経済学者)とかと一緒にやってて、もてはやされていたし。大学は一浪してて、そんときは勉強不足ってわかってたから、あんまショックはなかった。けど、落選した時はほんとに、鼻っ柱の強い若者やったというか、上から目線の人間やったと思うんやけど、それをガツンとやられたね。

 

 あとそれから、矢口くんなんかにいうのは僭越(せんえつ)なんやけど、熱伝導って同心円上に広がっていくから、真ん中が熱くないとうまく広がっていかない。選挙の時に自分は熱いつもりではあったけれども、その近い周りの人たちとかをうまく熱くすることができなかった。その熱を全体にうまく伝えることができなくて落選したということもあったので。 熱伝導のこととか、自分の人に対する礼儀とか誠実さとかをその時に学ばせてもらったから、一番大きかったのはそれかねえ。

 

 もう一つ挙げるとすると、嫁さんと結婚したこと、子供が産まれたことかな。うちの妻(元シンクロナイズドスイミング日本代表の武田美保氏)はオリンピックに参加させていただいてメダル5つ持ってる。こういう稀有な経験した人が活躍し続けられるように、俺も家庭と仕事を両立してかないかん思ってたから。僕は通産省で働いてる独身の時は名刺に年中無休24時間って電話番号も書いてた(笑)。今で言うとワークライフバランスとかはなかったね(笑)。公務員はレスポンス悪いとか言われてたから、そうやってやってたんやけど。結果、知事として育休も取ったし、そういうのも僕だけやし。妻と結婚して価値観がほんとに変わった。

 

 専業主婦的な感じで自分が英敬さんを支えますっていう人と結婚してたら俺ちょっと育休取りますとかそういうのなかったと思う。子供欲しかったんやけど、全然できなくて、それもあって子供産まれた時に、嬉しかったのもあったから育休取ろと思えたし。そういう男としての価値観を変えてもらったのは、妻との結婚と子供ができたことやから。

 

 キャリアとしては落選。プライベートのとこでは結婚と子育て。普通かもしれんけど、そんな感じかなあ。

 

 うちは親父が損害保険の代理店で、母親も共働きで働かないといけないっていう、決して裕福な家庭ではないので。別に政治家も(家系に)誰もいない。でもなんとか勝負どころはパスしてきた。そういう意味では、ガツンといかれたから、落選はやっぱり大きな出来事やったね。

 

日々の選択の中で大切にしていること

 

──ここまでは、外見(そとみ)の出来事を取り上げていただいたのですけど、中身として、ご自身の価値観とか、日々知事としてもいろんな選択を迫られると思うんですけど、選択をするときにどういうことを大切にしているのでしょうか?

 

 そうね。知事としての職業においては、一市民としての感覚を大切にするみたいな。

 

 昨日も県庁で若手向けの勉強会でちょっと話したんだけど、今回もうち緊急警戒宣言をやって2月7日に飲食店への営業時間の短縮要請を解除するということがあった時に、これを解除したら緩むかもしれへんし、周りはまだ愛知とか東京とかまだ感染がブオワアアって拡大してる時に三重県は落ち着いてきたけどどうする? みたいな。そんな時に県庁の人らとも話し合って、色々悩んだけども、結局最後は俺らが出したメッセージを県民の人らはどう受け止めるやろうか。あるいは自分の副部長の奥さんはどう思うとおもう? とか。そういう一県民感覚というのかな。そういうのを大切にするっていうのは知事として大事にしてるかなと。

 

 それから、1人の人間としては、仕事の進め方とかでは、今日できることは明日に送らないということ。先送りしないということは、基本的にあらゆる仕事とか、遊びとか、なんでもそうなんだけど。今日やることは今日やる。明日やろうと思ってても、明日やれる環境にあるかはわからへん。明日、東日本大震災のような大災害が起きたら、めっちゃ明日楽しいのやろうと思って取ってたこともできなくなるし、やらなければならないこともできなくなるし。

 

 だから今日できることは全部今日やる。

 

 もう1個は生活習慣を大切にするようにしてるかな。

 

 何時に寝るとか、何時に起きるとか、朝飯食うとか、こういう生活習慣は自分でコントロールできるわけですよ。自分でコントロールできることをコントロールできない人は、夢なんか実現できないですよ。夢を実現するには色んな人のいろんな要素が関わって、関数になってそれを答え出していかなあかんわけでな。外部要因もいっぱいあるし。

 

 生活習慣は間違いなく自分でコントロールできるから。誰かに起きてもらう時間決めてもらうわけでもなく、朝飯食うか食わへんか誰かに決めてもらうわけでもあらへんからな。

 

 だから今も12時より後に寝ることはないですね。いつも5時半くらいに起きてますし。必ず6時間は寝るし、朝飯は絶対食うし、みたいな。生活習慣をしっかりコントロールするっていう、夜更かしとかは絶対せえへんし、最近は基本的に、よっぽど昔の仲間とかでないと飲み会とかも二次会とかもいかないし。そういう感じかな。5年前に(最後に)会った人と一昨日やったかに飯食った時も、5年前よりも若くなりましたねとか、色艶良くなりましたねとか、言われるしね。

 

 やっぱり、若い人らに言えることはそういうことかな。

 

 あとは、自分の今の現状というのかな、発射台というのかな、そういうのを嘘つかないというか、ちゃんと見る。これはねえ、僕が浪人してる時に、東大模試、代ゼミのやつ受けて、数学0点やったのね。東大文系数学やったら80点で、一問半解けたら上出来ってやつやったんやけど、俺0点やった、俺浪人やのにって。でもよくよく自分のこと思い出してみたら、現役の時は大学への数学とか見て、わからへんのやけど解答読んでわかったふりになってたのね。それってでもやっぱり、自分の現状とか出発点をごまかしていたわけで。

 

 結局夏の東大模試終わってから代ゼミのとこ行って、高校1年数学初級っていう問題集をやりなおして、浪人の時の本番は最低2問は解けてるっていう。

 

 自分の今ある発射台、夢に向かってとか色々やるときに、今の自分の発射台がどれくらいかってことをごまかさないというかね。そういうのは大事やなあって思ってます。

 

──いやあ、本当にいいことを聞かせてもらって。特に今日できることは今日やれってことと、生活習慣っていうのはもう、生活リズムが乱れた大学生には本当にもう……(笑)。

 

 いや、俺も大学の頃は乱れまくってた(笑)。朝まで起きてとか、朝まで飲んでとか。そういうのがかっこよく見えたもん。でもそれはあんまりかっこよくはないんだなって。

 

どうやったら鈴木知事のようになれますか!?

 

──東大生から「どうやったら鈴木知事のようになれますか!?」と質問されればなんとアドバイスしますか?

 

 人の好き嫌いをしないということが大事。初めて会った時にこの人苦手かもって思っても、見えてるのってその人の人格の氷山の一角やから。そこでシャッターガラガラって降ろしてしまったら、結局、実はその人はずっと付き合ってたら自分にプラスの影響を与えてくれる人やったかもしれへんのに、自分からチャンスを逃すことになるんで。人の好き嫌いはしない。トータルでその人のことが嫌いってことは絶対あらへんから。この人の人格を因数分解していったら、この人全体的には嫌いな部分多いけど、こういうところは話合うかもとか、こういう話してる分には気持ち悪ないわとか。という感じで人の人格を因数分解するってね、人の好き嫌いはしないほうがいい。

 

 僕、大学の時はテニスサークルとかで居心地のいいそういう奴らとばっかりおった。だからそれの反省もある。やっぱり同じ価値観や意見の人たちがばっかりおると、イノベーションも生まれないし、自分の成長もない。

 

人生で一番悔しかったこと

 

──人生の中で一番悔しかったなとか、これは変えたいなと思ったことはなんですか?

 

 そうねえ、悔しかったことは、さっきも言ったけど落選は悔しかったよね。逆風やったし、落下傘風ににいったってこともあったけど、まあ悔しかったよね。なんていうか、たとえばテスト勉強やったら自分がめちゃくちゃ勉強すれば一定の成果が自分に返ってくるでしょ。選挙に初めて望んだとき、うちの妻も言ってたんだけど、シンクロナイズドスイミングやったら練習すれば練習するほど、自分がうまくなっていって、大会とかで演技点がよくなるわけやん。で、選挙ってそういうのじゃないんな。だから余計に悔しくて。何があかんかったんやろうとかわからへんから、あかんこといっぱいあったんやけど、そういう悔しさがあったかな。

 

 あとは落選の時は僕を応援してくれた中小企業の社長とかも取引停止されたりとかして……。そういう応援してくれた人に影響がいったことも悔しかったかな。

 

 変えたいって思ったことは、今も思ってることやけど、この前もつい先日発表あったけど、第一生命とかで小学生がなりたい職業ランキングトップ10とかよく貼ってあるでしょ。YouTuberが1位ですとか。あれに政治家をランクインさせたいね。たぶん今、政治家をかっこいいと思ってる子供たちってほとんどいないと思うんですよね。

 

 だから1位になりたいとまでは豪語できないんですけど、10位くらいまでは政治家かっこいいやんって思ってくれる男の子、女の子がいるような時代にしたいですね。

 

鈴木英敬さん個人として困っていること

 

──今、『実は知事として、あるいは鈴木さん個人として困っている』ことがあれば教えてください。

 

 そうやねえ。子供と過ごす時間が少ないというのがあれですね。やっぱりね、子育てというとね。日々子供って成長してるから、成長を確認すること、自分のなかで子供の成長度合いをアップデートするのが止まると、子育てにだんだん関心がいかなくなるし、子供も親に対してリスペクトしにくくなると思うのね。だからやっぱり、なるべく高い頻度でアップデートしていくほうがいいので。それが一番手っ取り早い方法が一緒に時間を過ごすことだから。子供とちょっと過ごす時間が少ない。コロナ禍ではもちろんいっぱいあったけどね。コロナ(対応)と関係なく言ったらそこが一番困ってることかなあ。他の知事とか政治家と比べたら、かなり接してる方ではあると思うけど。

 

──これは確かに僕らも東大生も男女問わず一生懸命働いたら、みんなが直面する課題かもしれませんね。

 

 あとは、人生で後悔したことはあんまりないんだけど、後悔してることの一つが、留学行かなかったことかな。通産省勤めて留学行くために勉強しろよと言われたこともあったんですけど。国内での仕事がめちゃくちゃ楽しかったので、いつでも留学行けるわと思ってたら、政治の方目指してしまったので、結局留学行けなかった。語学ももっと自分がもっと堪能やったら……。今まで知事として30カ国くらい行ったから、もっとこう踏み込んでいろんな議論もできるだろうしとか思うことがあるなあ。留学は経験しときたかったなあと思う。

 

──僕も留学行ってないので、将来なんかおんなじこと思うのかなって。

 

  行ったほうがええで。チャンスがあるなら。

 

政治家鈴木英敬さんが成し遂げたいこと

 

──政治の神様がいるとして、鈴木英敬さん、あなたの政治家人生で1個だけやったらなんでもやらしたろって言われたら、何をやらしてくれてって神様に言いますか?

 

 そうやなあ。まあ、絶対1個だけっていうのなら、東京一極集中の是正やね。

 

 首都にこんだけ人や機能が集まってて、得することって今やほとんどないっすよ。これだけデジタルもあって、距離とかいろんな制約も超えていけるのに、この狭い日本でですよ。たとえば大きな企業、そうだなあ、アディダスとかネスレとか、まあ、フォルクスワーゲンとかもそうですけど、みんな田舎に本社ありますよ。働く場、学ぶ場がこれだけ集中してるのは日本と韓国だけですよ。これだけ地方が魅力あったりするのに、便利さ快適さみたいなんで東京に集中してるっていうのは、地震とか起こった時のリスクとかもそうだし、まあコロナが東京で感染者が多いのも、人が集まりすぎているからですよね。どう考えても。だから東京一極集中はもう少し、都市機構や人口が日本全体に分散されていくべき。

 

 田舎の隅々までとは言わないので、せめて名古屋とか、(三重なら)四日市とか津とか伊勢とか、そういう主要なとこにもう少し人がばらけて、そこに働くとこがあって機能があってっていう。そういうことかな。これは僕は通産省で働いているだけではこうは思わなかった。三重県知事として働いているからこう思うようになった。

 

 矢口くんは知ってると思いますけど、田中角栄という人は総理大臣になる直前に書いた日本列島改造論という本も、あれも地方分散の本なんですよ。あの時もいろんな機能が東京に集中していった。それをインフラを道路を空港を新幹線を港湾を、そういうのを整備することで地方分散を図ろうということなんですけど。これからの時代の令和の日本の改造論は、教育。各地域で教育が充実する。医療が充実する。通信インフラがしっかりしてる。防災機能がしっかりしてる。この4つがしっかりすることでみんなが住み続けられるようになると思うので、その辺りかな。

 

 東京一極集中を是正したい。

 

──田中角栄さんは昭和を、令和は鈴木知事が総理大臣として……ということですね 。

 

 いやいやいや(笑)。まあ、そう僕は思いますけどね。(一極集中は)いろんなリスクも高いし、あんまり得することも今はないんですけど、30年前やったらわからんけどね。

 

意志あるところに道は開ける

 

最後に座右の銘を色紙に書いていただきました

 

 意志あるところに道は開ける。

 

 これはリンカーン大統領の言葉だと思いますけども、自分の人生はね、自分でしか決められないんですよ。誰かに決めてもらうってことは絶対にないので。毎日の一個一個の選択を自分がしっかり決めるということを大事にして欲しいんです。親から言われたとか、周りからの評判がええからここの会社に行ったとか、そういうんじゃなくて。

 

 自分で決める。最後は自分でしか決められないんで。自分で意志をしっかり持って進んでいったら、順調な道でなかったとしても必ず道は開けるし、意志がなかったらそもそも自分の前に道は開けてこない。誰かが道を広げてくれるはずはない。それほど人は暇じゃない、というふうに思うので。

 

 意志あるところに道は開ける、だと思います。

 

 毎日の決断というところについては、分度器で一度を開いて、これくらいの(短い)長さやったら線が引っ付いてるように見えて全然わからへんけど、一キロやったらどう?めちゃめちゃ大きな差やんね。ほんのちょっとした努力かもしれへんけど、一度でもいいから上に向かってけるようにね。毎日努力していって欲しいと思います。毎日のその決断、(角度が)一度上がる決断が将来、何年後かに必ず自分に良い方向に働いてくると思います。

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