学術

2016年8月1日

【東大自転車部寄稿】リオ五輪「自転車」の見どころ

写真は自転車部競技班提供
写真は自転車部競技班提供

 

 自転車競技は、第1回のアテネ五輪から行われている歴史ある競技です。リオデジャネイロ五輪では、大きく分けて4種目(トラックレース、ロードレース、MTB、BMX)が行われます。

 

 このうち日本はトラックレースを得意としていて、過去4つのメダルを獲得しています。トラックレースとは、陸上競技のトラック種目のように、1周250mのトラックを用いて行われる種目で、競輪のイメージに近いです。厳密にはトラックレースと競輪は少し異なっていますが、自転車を思い切り漕ぐという点では同じ。特にトラックレースの中でも、短距離系の種目は競輪と必要な能力が近く、一部の競輪選手はそれらの種目のトレーニングを積み、オリンピックなどの国際大会で活躍しています。

 

 一方で、トラックレース以外では日本がメダルを獲得したことはありません。日本に比べ、ヨーロッパなどの海外では競技人口が多く、強豪選手を輩出しています。特に、ロードレースという種目はヨーロッパではサッカーの次くらいにメジャーなスポーツです。しかし日本でも近年各地域にチームが誕生し、競技人口の広がりを見せており、日本人の活躍する機会も増えています。

 

 自転車競技の魅力はそのスピード感、そして高速で選手同士が競り合う迫力です。そして実は、非常に戦略的な要素の大きいスポーツで、選手同士の駆け引きも魅力の1つです。戦略性が生まれる要因は、空気抵抗にあります。トラックレースでは、そのスピードは70km/hにも達します。そのため、1人で走れば非常に大きな空気抵抗を受けることになり、また、他の走者のすぐ後ろで走れば空気抵抗はかなり軽減されてあまり力を使わずに済みます。そこで駆け引きが生まれるのです。

 

 代表的な例として、大人数での中長距離レースである、トラックレースのオムニアムという種目を取り上げてみます。このレースでは、スタートした選手たちは空気抵抗を避けるため他の選手の後ろに付いて走ります。先頭の選手は大きな空気抵抗を受けるので、思い切り漕ぐことはせず、また、少し先頭を走ったら後ろの選手に先頭を譲ります。こうして、余裕のあるペースで先頭交代を繰り返しながらレースは進行します。ここで起きる戦略的行為の一つに、アタックというものがあります。これによって、レースは目まぐるしい展開を見せます。

 

 アタックとは、1人から数人の選手が集団からダッシュで飛び出していく行為です。飛び出た数人の選手たちは、空気抵抗の負担を分散するため、先頭交代しながら走ります。しかし、集団にいる場合に比べれば、空気抵抗の負担は大きくなってしまいます。つまり、残された集団ではより大人数で先頭交代が繰り返されるので、空気抵抗の負担はより多くの人数に分散され、各選手は余力を持って走ることが可能なのです。このような空気抵抗の視点からすれば、アタックという行為は明らかに不利です。しかし、人数が少ない方が意志を統一しやすいという利点があります。抜け出した選手たちは集団を引き離すという意志で統一されることが普通です。そのため、この選手たちは全力で走りながら先頭の交代を繰り返し、速いペースを作ります。一方で、残された集団では誰が追うのかと牽制し合い、ペースが必ずしも上がりません。その結果、優勝者はアタックした数人の選手の中から決まることも多くなります。すなわち、自転車レースには「空気抵抗」と「意志の統一」という二つの相反する側面があり、この絶妙なバランスによって勝敗が決するのです。

 

 このように、自転車競技はそのスピード感や迫力も然ることながら、戦略的で奥深いスポーツです。見慣れてくることで、新しい面白さを発見することもあります。

 

 それでは、リオデジャネイロ五輪での各競技を展望していきます。

 

 トラックレースには、日本からは5人の選手が出場します。男子スプリントには、競輪選手の中川選手が出場します。スプリントは、1対1で対戦し、先に3周を走った方が勝ちという駆け引きの種目です。中川選手は200mと1kmの日本記録保持者であり、ロンドン五輪でこの種目9位に入っています。この4年間の世界選手権では1回戦敗退が続いていますが、5月には競輪でG1初制覇を成し遂げており、リオデジャネイロ五輪本番での活躍が期待されます。

 

 また、男子ケイリンには脇本選手と渡邉選手という二人の競輪選手が出場します。ケイリンはその名の通り、日本の競輪をもとにした種目。脇本選手は今年の世界選手権で5位入賞を果たしています。海外勢は強力ですが、ケイリンは番狂わせも起こる種目。メダル獲得を期待したいところです。

 

 中長距離系の種目であるオムニアムには、男子は窪木選手、女子は塚越選手が出場します。男女とも、この種目に日本選手が出場するのは初めて。新たな歴史を創ります。

 

 ロードレースの男子代表は、新城選手と内間選手。女子は與那嶺選手が出場します。新城選手は本場ヨーロッパのトップレベルで長きにわたって活躍している日本のエース。ロードレースというのはマラソンのように公道を用いて行われるレースですが、マラソンのように平坦なコースとは限らず、山岳地帯を通ることもあり、コース設定によって上位者の顔ぶれが変わるレースです。リオデジャネイロ五輪のコースはオリンピック史上最も過酷との呼び声が高く、ツールドフランスというロードレースで最も権威のある大会で優勝争いをするような選手の活躍が期待されていて、世界的にも注目が集まっています。新城選手もこのような消耗度の高いコースを得意としており、上位進出が期待されます。

 

 MTB(マウンテンバイク)は、アップダウンのあるオフロードコースで順位を競う競技。異種目であるロードレースの現世界チャンピオンであるサガン選手が出場することでも話題を集めています。日本からは男子MTBに山本選手が出場します。アジアでは8連覇と敵なしですが、ロンドン五輪では27位。世界トップの選手たちに食らいつく走りを期待したいです。

 

 BMXは自転車のモトクロスのこと。ジャンプ台などのあるダートコースで順位を競う種目です。男子BMXには長迫選手が出場します。長迫選手は2013年の世界選手権で7位に入っており、今大会でも上位入賞が期待されます。

 

 ここまで紹介してきた自転車競技ですが、残念ながらテレビ放映の機会はあまりなく、一部の種目がBS1で録画放送されるのみの予定です。しかし、インターネットでの生配信が前回のロンドン五輪より行われています。私は、テレビで他競技を見ながら、インターネットで自転車競技を観戦するつもりです!

 

東京大学運動会自転車部競技班
生駒亮汰

 

【団体のホームページ・SNS】

ホームページ(http://utbr.sakura.ne.jp/wordpress/)

Facebook(https://www.facebook.com/utbikeracing/)

Twitter(@utbikeracing)

 

【リオ五輪企画】

【東大漕艇部寄稿】リオ五輪「ボート」の見どころ

【東大水泳部競泳陣寄稿】リオ五輪「競泳」の見どころ

【東大フェンシング部寄稿】リオ五輪「フェンシング」の見どころ

【東大自転車部寄稿】リオ五輪「自転車」の見どころ

【東大ボクシング部寄稿】リオ五輪「ボクシング」の見どころ

【東大ア式蹴球部寄稿】リオ五輪「サッカー」の見どころ

【東大ハンドボール部寄稿】リオ五輪「ハンドボール」の見どころ

【東大バスケットボール部寄稿】リオ五輪「バスケットボール」の見どころ

【東大柔道部寄稿】リオ五輪「柔道」の見どころ

【東大ゴルフ部寄稿】リオ五輪「ゴルフ」の見どころ

【東大水泳部水球陣寄稿】リオ五輪「水球」の見どころ

【東大ラグビー部寄稿】リオ五輪「7人制ラグビー」の見どころ

【東大馬術部寄稿】リオ五輪「馬術」の見どころ

【東大庭球部寄稿】リオ五輪「テニス」の見どころ

【東大洋弓部寄稿】リオ五輪「アーチェリー」の見どころ

【東大陸上運動部寄稿】リオ五輪「陸上」の見どころ

【東大Doo-Upトライアスロンチーム寄稿】リオ五輪「トライアスロン」の見どころ

【東大レスリング部寄稿】リオ五輪「レスリング」の見どころ

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る