COLUMN 2016年8月14日

【東大レスリング部寄稿】リオ五輪「レスリング」の見どころ

写真はレスリング部提供
写真はレスリング部提供

 

 レスリングといえば多くの人は聞き馴染みこそあるとは思うが、ルールを知っていたり実際にプレーしたりしたことのある日本人となれば極端に絞られてしまう、いわばマイナースポーツである。古くはソクラテスをはじめとする古代ギリシャ哲学者も興じていたという世界最古の格闘技であり、今なおオリンピック種目として存続していて大変長い歴史を誇る一方で、現在競技人口が多いのは一部の東欧諸国に限られ、日本人からしてみれば異国のスポーツといった印象が否めないだろう。だが、近年行われたオリンピックで日本が獲得したメダルの中でレスリングが占める割合は非常に大きく、直近のロンドンオリンピックに至っては日本の金メダル全7つのうちなんと4つがレスリングによるものである。特に最近ではバラエティ番組やCMにも出演している吉田沙保里選手が有名で、彼女の活躍あってこそレスリングが日本において一定の知名度を有しているのは事実だが、他の女子選手や男子選手も各大会でメダルを獲得していて、レスリングは日本のお家芸と称して差し支えない。

 

 レスリングがこれほどまでに日本にメダルをもたらす種目であるのにも関わらず、試合を観ていてどこで勝敗がついたのか、なぜポイントが入ったのか、何のことやら全く分からずにテレビ画面を眺めている日本人がほとんどであるのだと思う。筆者は一競技者として、また一レスリングファンとしてこの現状がもどかしく嘆かわしいという思いから、他のメジャーな種目であれば注目選手や有力国の紹介に終始するところを本稿では主にルールや大まかな試合の流れについて紹介させていただきたい。

 

 まず、レスリングは柔道や相撲のような個人格闘技である。柔道は柔道着を着用して相手の襟や袖を掴んで倒し、相撲はまわしを着用してそのまわしを掴んで投げることができるのに対し、レスリングは「シングレット」と呼ばれる、身体に密着して試合中に掴めないタイプの試合着を着用する。このシングレットは見覚えがあるのではなかろうか。

 

 紳士のスポーツたるレスリングは対戦相手とレフェリーに敬意を表し、必ず試合前に握手をしてから試合開始となる。試合はレスリング用のマットの上に描かれた、相撲でいう土俵のようなサイズのサークル内で行われる。レスリングマットは柔道場の畳よりは柔らかく、体操用のマットよりは弾力のある質感である。

 

 レスリングには柔道と同じように階級が存在し、男子だと下は57kg級から試合に出ることができる。様々な体格の選手がスピードやパワー、テクニックを駆使して相手を倒すことができる点も魅力である。

 

 試合のフェーズは大きく分けて、スタンド(立ち技)とグラウンド(寝技)の2フェーズあるが、多くの場合その移行は連続的に行われ、選手がサークル外に出てしまったり、戦況が膠着状態に陥ったりしてしまった場合のみ、レフェリーの判断でブレイクがかかり、サークルの中心から試合が再開される。試合は1ピリオド3分間で、30秒のインターバルを挟んで2ピリオド行われる。

 

 試合の勝ち負けは点数などによって決まるが、相手の両肩をマットにつけたまま1秒が経過すると試合時間や点数の状況に関わらず自動的に勝利となるルールがあり、これをフォールという。点数による決着、相手に10点差をつければその時点で勝利となり、これをテクニカルフォールという。試合時間内に以上の方法で勝敗が決しなかった場合に点数の大小で決着がつく。

 

 さて、スタンドのフェーズで特徴づけられる攻撃手段として、吉田沙保里選手の得意なタックルが挙げられる。相手の隙をついて懐に突進し、足を刈り取って倒す技である。両足を取る場合や片足を取る場合など様々なバリエーションのタックルがあるが、いずれも相手を仰向けに倒せば4点、俯せに倒せば2点が倒した方に入る。時折柔道のような華麗な投げ技を魅せる選手もいて、その場合も同じ基準で点数を獲得することができる。相手を倒すことができなくても、以上の過程で相手をサークル外に押し出すことができれば1点が入る。

 

 グラウンドのフェーズではまず、相手の後ろにつくことができれば2点が入る。このとき後ろにつかれた選手は仰向けだとフォールの危険があるため俯せであることが多いが、後ろについた選手はその相手を1度でも上向きに返せば2点が入る。よく試合中に見られるのは、相手を抱きかかえて相手ごと前転をするようなローリングという技や、相手の足を自分の腕に絡ませて一方向に相手を回していくアンクルホールドという技である。もちろん、相手をひっくり返してそのままフォールを取りに行く場合もある。

 

 試合が決まった後も勝者敗者に関わらず再び対戦相手と審判、さらには相手チームのセコンドと握手を交わして終了となる。

 

 以上が大まかなレスリングのルールであり、これだけ頭に入れていればほとんどの試合はしっかり内容を追っていくことができるはずだ。レスリングに関わらず、ルールを知った上で観るスポーツは視点が変わって格段に面白くなる。もちろん上述の流れだけでは試合を観ていて疑問に思うシーンは多々あると思われるが、そういった点を自分で調べるところまで到達すればきっとレスリングの更なる奥深さを知ることができる。そしてもし試合を見てレスリングに興味が湧いたとしたら、東京大学運動会レスリング部や近くのレスリング団体を訪問して体験練習や見学に参加してみて欲しい。マイナースポーツだからこそ深いつながりが持てるというのもまた真であり、新たなレスリングファンの誕生を大いに歓迎されることだろう。

 

東京大学運動会レスリング部

主務 笹川 裕矢

 

【団体のホームページ】

ホームページ(https://sites.google.com/site/utwrestle/)

 

【リオ五輪企画】

【東大漕艇部寄稿】リオ五輪「ボート」の見どころ

【東大水泳部競泳陣寄稿】リオ五輪「競泳」の見どころ

【東大フェンシング部寄稿】リオ五輪「フェンシング」の見どころ

【東大自転車部寄稿】リオ五輪「自転車」の見どころ

【東大ボクシング部寄稿】リオ五輪「ボクシング」の見どころ

【東大ア式蹴球部寄稿】リオ五輪「サッカー」の見どころ

【東大ハンドボール部寄稿】リオ五輪「ハンドボール」の見どころ

【東大バスケットボール部寄稿】リオ五輪「バスケットボール」の見どころ

【東大柔道部寄稿】リオ五輪「柔道」の見どころ

【東大ゴルフ部寄稿】リオ五輪「ゴルフ」の見どころ

【東大水泳部水球陣寄稿】リオ五輪「水球」の見どころ

【東大ラグビー部寄稿】リオ五輪「7人制ラグビー」の見どころ

【東大馬術部寄稿】リオ五輪「馬術」の見どころ

【東大庭球部寄稿】リオ五輪「テニス」の見どころ

【東大洋弓部寄稿】リオ五輪「アーチェリー」の見どころ

【東大陸上運動部寄稿】リオ五輪「陸上」の見どころ

【東大Doo-Upトライアスロンチーム寄稿】リオ五輪「トライアスロン」の見どころ

【東大レスリング部寄稿】リオ五輪「レスリング」の見どころ

同じ記者の記事

関連記事

合わせて読みたい

SPORTS 2016年04月19日

硬式野球部 山田選手が本塁打放つも、投壊で勝ち点ならず

SPORTS 2015年01月23日

大手商社をけってJリーグへ。史上二人目の東大生Jリーガー誕生

INTERVIEW / FEATURE 2015年04月04日

ジャズダンスサークル・FreeD !(フリー・ディー)

NEWS 2014年04月28日

駒場で「運動会」開催 運動会が主催 新入生がリレー

SPORTS 2016年06月11日

【部員が見る軟式野球⑩】春季リーグ最終戦に勝利し連敗ストップ 5位で終戦

TOPに戻る