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2014年5月26日

「世界で一番迫害されている」ロヒンギャ族の写真展

「ミャンマーに住むロヒンギャ族にはなんの権利もない。鳥でさえ権利がある。鳥は巣を作り、子を産み、子に餌を与え、飛び立つまで育てることができる。我々にはその基本的な権利も無いのだ」
モニール、ロヒンギャ族の男(グレッグ・コンスタンティン写真展HPより)

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グレッグ・コンスタンティンという写真家が来日している。彼は多くのNGOや国連機関と協力しながら、世界の無国籍者を追ってその写真を撮り続けている。今回彼が来日したのは、写真展や講演によって無国籍者問題を日本で広め、国会議員や官僚にアドボカシー(政策提言)を行うためだ。

無国籍者とは法的に、または事実上国籍を持たない者のことを言う。内戦で国家が消滅してしまった場合や、国際結婚をしていた人が離婚する際の手続きミス、祖国から政治的に迫害され法的保護を受けられない状態などを指す。
日本にも無国籍者は多く、日本で生まれた難民の二世など少なくとも1234人が暮らしている(無国籍ネットワークHPより)。今回、グレッグが被写体として選んだのは、ミャンマーに住むロヒンギャという少数民族だ。

ロヒンギャとは国連が「世界で最も迫害されている少数民族のひとつ」と表現した人々である。ミャンマーに暮らす彼らは、国籍を得ることができず、移動や結婚の自由がないまま暮らしている。2012年に、ロヒンギャと多数派の仏教徒との間で紛争が起きた際は、13万人のロヒンギャが避難民となった(ヒューマン・ライツ・ウォッチ報告書)。現在でも彼らは、許可無く出入りすることのできない非難民キャンプで、自由を奪われながら暮らしている。

グレッグは2006年からロヒンギャの写真を撮り始め、現在までにロンドン、キャンベラ、ワシントンDC、ジャカルタなど多くの地域で展示会を行ってきた。今回の東京での写真展も彼の”Nowhere People”プロジェクトの一環である。

グレッグの写真に収められているロヒンギャの人々は、ただ「かわいそうな人々」という枠組みを超えて、生きることの意味を問いかけてくる。写真の中の彼らは、自由を奪われながらも、力強く暮らしている。水を汲み、支援物資を運び、子どもたちの面倒を見る。市街地への移動を禁止されながらも、支援物資で料理屋を開き、三輪自転車で客を運び、畑を耕し漁をする。
彼らは困難な状況にありながらも、自らの人生を日々生きている。

プリントされた写真の向こう側から、彼らは私たちに答えのない疑問を投げかけてくる。人権は本当に誰しもが持つ平等な権利なのか。異なる人々が共に生きることは可能なのか。自由とは何で、どこまで個人に自由が認められるべきなのか。
国家は国籍を与えることで、権利を持つ者と持たないものを決めているのではないか。そもそも私たちが当たり前に享受している権利を、どうして私たちは手にしているのだろうか。

国際問題に興味があるなら、「世界で最も迫害されている」ロヒンギャの写真展で、その実態を感じてみてはどうだろうか。民族紛争、宗教、人権、国籍など、多くの角度から国際問題を考えなおすことができる。写真展を見に行くなんて、なんてことない行動のように思えるかもしれないが、そういった些細な行動が、遠い世界と自分の人生をつないでくれるのだ。

ロヒンギャの住むミャンマーのアラカン州は、10時間ほど飛行機に乗れば訪れることができる。
遠い亜熱帯の非難民キャンプと、私たちの間を隔てているものは、時間的な遠さでも距離的な遠さでもなく、私たち自身の無関心なのだ。

グレッグ・コンスタンティンの写真展は5月30日(金)まで行われている。

(文:須田英太郎 @Btaros

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