COLUMN 2018年7月24日

4組の東大カップルと考える 「学生結婚」はいかが?

 「収入もないし、将来の職も不安定だし、結婚できそうにない」。将来の不安から、「結婚」への不安をそう口にする学生がいる。特に20代後半に差し掛かる研究者志望の博士課程の学生にとっては一つの大きな懸念となることも。では、将来の見通しが立たない学生時代に結婚を決意した人は、その先をどのように見据えていたのだろうか。東大教員や東大出身の学生結婚経験者に、その実情を聞いた。

 

(取材・石沢成美)

 

収入源の見通しが立ってから

 

 学生結婚を経験したさまざまな世代の夫婦4組に、結婚の理由、そして学生結婚の大きな懸念事項である経済面について話を聞いた。

 川幡穂高教授(大気海洋研究所)は、大学4年次の1978年に交際0日で結婚を決意した。相手は仲が良かった高校の同級生のAさん。「よく話す友達で、明るい家庭になると思い結婚しました(Aさん)」。川幡教授は大学院から専攻を変え博士を4年かけて取得することになっており、就職までの3年半は、学部卒で地方公務員となったAさんの給料で生活していた。

 「男性は外で働き女性は家を守る」という考えが根強い80年代当時、扶養に入る男性はほとんどおらず、神奈川県では川幡教授が初めての扶養手当を受ける男性となった。今でも結婚相手の給料に頼ることをはばかる男性は多いが「その後は自分が働くんだから、5年くらい任せても構わないでしょう(笑)」と川幡教授。双方合意の上での選択であれば、不安定な時期に互いを頼るのは悪いことではないだろう。

 学部生時代から同居を始めていたB准教授(大気海洋研究所)と妻・Cさんは、B准教授が修士2年の時に入籍した。研究者を目指すB准教授は当時、将来の見通しが立たなかったが「妻は私を養い続けてもよいと言ってくれたので、支えになりました」。先輩からの「研究者になれば多分定年まで見通しは立たない、今悩んでも仕方がない」という助言にも背中を押されたという。Cさんは、自身が比較的月給の高い職場に勤務していたこと、B准教授も研究奨励金を受けていたことから「家計に不安を持つことはなかった」と話した。

 原辰徳准教授(人工物工学研究センター)が博士1年次にDさんに出会ったとき、Dさんは既に国家公務員として働いていた。博士2年の冬ごろから結婚を意識し新居を申し込んだ直後、Dさんの妊娠が判明し博士3年次の08年に結婚を決めた。原准教授はまだ学生ではあったが、研究奨励金を受けており「気持ちの上では独立していました」。また博士号取得や就職のめども立っており、将来への心配は特になかったという。「ただ、近年は2~3年の任期付きポストが増えています。私が結婚した10年前よりも今の方が、職業面では精神的に不安定になりがちだと思います」

 一方で学部時代に結婚したのが、現在総合系コンサルティングファームに勤務する齊藤直樹さん(16年工学部卒)。2年半の交際を経て妻・Eさんの妊娠が分かり、「身体的な負担の増える妻を支えたい」と学部3年次に入籍した。

 学生の間は親に援助を受けており、Eさんは「両親に頼ることでなんとかやっていけると漠然と考えていた」と話す。入籍時にEさんは大学を中退し専業主婦となったが、就職後も収入に見合った生活をすることで経済面では特に不安要素はなかったという。

 8人の話によると、夫婦いずれかの収入源の見通しがついて結婚している事例が多い。学生結婚の場合は特に、経済面の互いの合意と助け合いが必要になるだろう。

 

酸いも甘いも二人三脚で

 

 学生結婚のメリットとは何なのだろうか。

 

 第一に、学生は社会人より時間に余裕があり、家事や育児について融通が利くという声が目立った。原准教授は、子どもが生まれた当時社会人の妻が自分よりも早く家を出て遅く帰る生活だったといい、「自分が夕方に子どもを寝かし付けて、また大学に戻り研究することもありました」。週末には結婚式の計画や家の用事も率先して行った。齊藤さんは「お互い仕事で忙しくすれ違う、という心配がなかった」と振り返る。所属研究室の配慮もあり、妻や子どもと過ごす時間が十分に取れたという。

 

 B准教授は「堂々と同居できる」という利点を挙げる。会社の家賃補助を受けているCさんと、入籍前のB准教授の同居は認められなかったためだ。交際段階の同居が親などに認められない人もいるだろう。また共に暮らす家族がいることで生活が安定し、安心感が得られるという良さも。規則正しい生活を送るようになったという意見の他、原准教授は「二人三脚なので、1年くらい働けなくてもなんとかなる、という余裕が持てる」と語った。

 

 逆に学生結婚のデメリットとは。「大変だったことは特にない」との意見が多数だが、原准教授によると、結婚後は自分一人だけの生活ではなくなるため「留学などの際の制約になる可能性がある」。国内外を飛び回る研究者生活においては、一人で没頭できる環境が必要になることもある。またCさんは「その後結婚相手を探さなくて良くなった」という一方、Eさんは「別の魅力的な人に出会ったとき、早くに結婚を決めたことを後悔するかもしれないと感じている」。早い段階で家族を持つためには、今後の人生計画を考えることが必要だ。

 

 収入が安定してからの結婚を見据える人は多いが、学生のうちに結婚する選択肢もあれば、もちろん一生結婚しないという選択肢もあるだろう。

 

 結婚して40年、周囲からも仲が良い夫婦とうわさされる川幡教授は「多少不安があっても、この人がいいなと感じたら結婚するのがいいと思うよ」と語った。


この記事は、2018年7月17日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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