COLUMN 2018年4月27日

【発掘!東大博物館】「東大の知を保存する」総合研究博物館編

 東大は数多くの博物館を有している。そのほとんどは学内に設置されているが、加えてキャンパスの外にも、ユニークな特色をもつ東大の博物館が存在するのをご存じだろうか。東京大学総合研究博物館の関連施設として、それぞれ独自のコンセプトをもった博物館が、キャンパスの敷地を越えて設置されている。連載「発掘!東大博物館」では、総合研究博物館本館を出発点とし、キャンパス周辺にある東大の博物館を紹介していく。

 

 本郷キャンパスの南端、懐徳門を通って右手にひっそりとたたずむ「東京大学総合研究博物館」。決して目に留まりやすいとは言えない場所に位置するがために、学生の中には一度も訪れたことがない、という人も少なくないのではないだろうか。しかしせっかく学内にあるこの施設について、知らずに卒業するのはもったいない。「東京大学総合研究博物館」とはいったいどのような施設なのか。研究部所属の佐々木猛智准教授に話を聞いた。

 

(取材・持田香菜子、撮影・石井達也)

 

 

「資料館」ではなく「博物館」

 

――総合研究博物館の沿革について教えてください

 

 もともとは東京大学の学内に年々蓄積されていく学術的価値の高い資料を、散逸しないよう保管しておく施設として「総合研究資料館」が1966年に設立されたのが始まりです。この当時は単に「収蔵施設」としての性格しか持っていませんでした。

 

 しかし1996年の改組拡充により「総合研究博物館」として再出発してからは、資料を奥にしまっておくだけでなく、人に見せることにも積極的に取り組むようになりました。

 

――総合研究博物館の役割は何でしょうか

 

 博物館の仕事は大きく分けて研究・発信・教育の三つです。研究に関しては、博物館に所属する研究員がそれぞれの専門分野に沿って学術標本に関する研究を進め、論文を出しています。ヒマラヤの植物調査など50年近く継続して行われている研究もいくつかあるんですよ。

 

 また展示を通して博物館外部の方に学術標本の価値を伝えるという情報発信や、東大の授業・実習や一般向けの講座を実施するといった教育活動も大切な役割です。

 

――どのような狙いを持って展示を作っているのか教えてください

 

 展示品そのものを目立たせるため、説明書きを少なくするようにしています。また「実験展示」の呼び名のもと、常設展・特別展ともに型にはまらず新しい見せ方をしようと、あまり一般的でない手法を試すようにしています。具体的には展示室の一角に研究の様子が見えるコーナーを作り、展示されているような学術標本が実際に研究に使われている様子を見てもらえるようにしていますね。

 

 ここは大学博物館ですから、一般の博物館のように集客数などを気にすることなく「きれいに見せる」ことに注力できていると思います。東大生の皆さんには、在学中にぜひ一度総合研究博物館を訪れ、展示を楽しんでほしいですね。

 

 

常設展示「太陽系から人類へ」を見学

 

 入口を入るとまず目に入るのが巨大なガラスケース。中にはナウマンゾウの牙や大量の蝶の標本、人型の埴輪など、種類も時代も異なる標本たちが一緒になって並んでおり、博物館の来場者を出迎えているかのように感じられる。

 

 

 通路を抜けると、不意に現れる大きな動物の顔に一瞬どきりとする。

 

 

 これらはいずれも本物の皮を使ったはく製だ。重い馬車などを引くために改良されてきた輓馬(ひきうま)のはく製は、1.8メートルほどの高さがあり、その迫力に思わず足を止めて眺める人も多い。

 

 その先には、大きな黒い台の上に数十個もの白い骨が浮かび上がる展示スペース。アジアゾウとシロサイの骨格が組み立てられることなく整然と並んでいる。頭上に映し出されるモニターには、その骨を発掘した際のビデオ映像が流れている。

 

 雨の中少しずつ作業を進め、掘り出したときに歓声を上げる研究者たちの姿を見ると、目の前に広がる骨の集まりは彼らの努力の結晶なのだと気付かされる。

 

 

 2階まで続く展示は、国内外さまざまな産地から幅広い時代の標本が集められている。上のインタビューで聞いた通りシンプルな説明書きが展示物を際立たせ、薄暗い館内に浮かび上がるような見せ方が印象的だ。

 東大が創設された当初からの資料を保存し、活用されるよう情報発信を続ける総合研究博物館は、蓄積されてきた学術研究の歴史を守り続けている。研究を支える博物館の営みに思いをはせながら眺めてみれば、展示の見え方もまた違ってくるかもしれない。本郷キャンパスを訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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