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2024年10月28日

交換留学生から見た東大 留学生が感じたカルチャーショックとは?

 

 

 東大には毎年30以上の国から約100人の交換留学生が訪れる。しかし短期間の滞在ということもあり、留学生と日本出身の東大生の交流機会は少ない。留学生はどのような生活を送っているのだろうか。
 東大には全学交換留学(USTEP)という留学制度がある。東大は80校以上の大学と提携しており、USTEPによって毎年4月と9月に各パートナー校から2〜3名の学生が東大に受け入れられ、合計100人以上の学生が学んでいる。学生の専攻はさまざまだが、全員がグローバル教育センターに所属し、好きな授業を受講出来るのだ。
 この制度を利用し、ホウ・ミトさんは東大に交換留学生として1年間通っていた。国立台湾大学出身の3年生で専攻は文学と造園だ。サマラウェィーラ・イーハンさんも同じく USTEP を利用し、東大に交換留学生として半年間通っていた。シドニー大学出身の3年生で専攻は国際グローバル・スタディーズとビジネス・マネジメントだ。交換留学を決めてからの東大での生活について2人に聞いた。(取材・柴田凜)

 

ホウ・ミトさん(台湾国立大学)
サマラウェィーラ・イーハンさん(シドニー大学)

 

交換留学を決めていざ東大に

 

──交換留学を選んだ理由は

 

サマラウェィーラ:私の専攻では、少なくとも半年間の交換留学が必須です。留学先として日本を選んだ理由はいくつかあります。中学生の頃、実家が日本の高校生のホームステイ先で、そのこともあって自分も高校生の頃に日本へ交換留学する機会があったのですが、中止になってしまったのです。また、昔から日本文化が好きで、空手を習ったりアニメを見たり日本語を勉強したりしていたので、いつかは日本に行きたいと夢見ていました。

ホウ:私は、交換留学生になること自体をずっと望んでいました。高校時代にも交換留学を経験し、その貴重な経験をもう一度したいと思っていました。交換留学は学生ながら異文化を体験できるという点で、特別な経験だと感じています。

 

──東大を選んだ理由は

 

サマラウェィーラ:日本で最も優れた大学だと聞いていたので、選びました。また、将来日本で働きたい時に、東大で学んだことが大きなプラスになると思いました。

ホウ:私も東大がアジアでもトップクラスの大学であることを知っていたため、選びました。

 

──交換留学前の過ごし方は

 

サマラウェィーラ:オーストラリアから来ているので、南半球と真逆の季節の違いに適応するまで少し時間がかかりました。そして、住居の手配も分からないことが多く大変でした。東大の寮じゃなかったらどうしていたか分かりません。

ホウ:私は交換留学制度に応募するための準備をずっとしていました。私の大学からは毎年1人しか東京大学に行けないので、競争率がとても高かったからです。

 

──学生生活について教えてください

 

サマラウェィーラ:学生生活は本当に楽しかったです。授業も良かったし、先生たちも授業に熱心でした。交換留学生もみんなフレンドリーでした。授業以外にも、東大がウェルカムパーティーを開催してくれたり、学生が主催するイベントがいくつかあったりして、そこで一生の友達にも出会いました。新しい人と出会い、一緒に出かけたり、パーティーをしたりと、日常的な交流が楽しかったです。食堂やカフェに行ったり、勉強の後で「居酒屋に行こう!」と誰かが呼びかけて、一緒に出かけたりすることも多かったです。

ホウ:交換留学生の間には非常につながりが強いコミュニティーがあると思います。寮の存在も大きく、自然と一緒に過ごすことが多かったです。サークルにも参加しましたが、留学生コミュニティーの活動とは少し違う雰囲気でした。やはり言葉の壁が大きかったので、親しい友人を作るのが難しかったです。ですが日本出身の学生は優しく、お互いを知りたいという気持ちはあったので、仲良くできたと思います。

サマラウェィーラ:また、留学中は基本日本語を話すと思っていましたが、実際には9割ほどが英語でした。多くの日本出身の学生はアルバイトやサークル活動、学業で忙しく、私は他の交換留学生といることが多かったので英語を話す機会も多くなりました。もっと日本出身の学生と交流し、日本語を話すべきだったと後悔してます。 

 

──東大で出会った困難は

 

ホウ:日本語を話せないと、選択できる科目が限られてしまうことです。

サマラウェィーラ:私も同じでした。東大では英語で行われているビジネスマネジメントの授業が無かったので、専攻の授業を受けることができませんでした。

 

──交換留学中で特に印象に残っている思い出は

 

サマラウェィーラ:自分の21歳の誕生日パーティーが印象的でした。盛大なパーティーを挙げて、友達が一緒にお祝いしてくれました。

ホウ:個人的には新しいスタートを切る感覚が印象に残っています。新しい自分や人と出会い、コミュニティーに参加できたのが本当に楽しかったです。

サマラウェィーラ:私もホウが言った「初めて」の感覚に共感します。すべてが新しいものばかりで、毎日ワクワクしました。

ホウ:確かに。私は友達と一緒に日本のいろいろな県を旅行し、知り合って数カ月の友達と一緒に思い出を作りました。

サマラウェィーラ:思い出と言えば、日本の年末年始もすごく楽しめました。初詣に行ったり、除夜の鐘を聞いたり、年越しそばを食べたりしました。

 

──東大で驚いたことは

 

サマラウェィーラ:日本出身の学生が履修する授業の数がめっちゃ多かったことです!週に15科目も履修していて、忙しそうでした。

ホウ:駒場Iキャンパスに通っていたからかもしれませんが、東大生たちは学生生活そのものを楽しんでいるように見えました。勉強、サークル、ただ食堂で友達と話したりなど、充実した学生生活を送っているのが印象的でした。

 

交換留学を終えて

 

──交換留学を通じて得たものは

 

ホウ:学びに対する考え方が変わりました。以前はクラスで1番ではないといけないというプレッシャーが常にありましたが、交換留学中は専攻とは無関係にただただ興味のある授業を受講することができたので、純粋に学ぶことの喜びを味わえたと思います。

サマラウェィーラ:私は日本語に対する自信がつきました。日本語で日常会話ができるようになったことが嬉しかったです。また、多くの国の人と出会い、国際的な友情を築くこともできました。

 

──日本での学生生活で感じたカルチャーショックは

 

サマラウェィーラ:東大の食堂には驚きました。食事が安くて美味しかったので、毎回1000円以上払って食事を楽しんでいました。他には、公共の場にゴミ箱がほとんどないことが挙げられます。それにもかかわらず、東京はとても清潔でした。また、カルチャーショックというわけではないですが、自分は外見からして明らかに外国人だったので日本で外国人として過ごすことは興味深い経験でした。例えば、キャンパスを歩いていて南アジア系の人が自分一人しかいないと感じた時は、そのことが逆に自分を少し特別にしてくれていると感じられて、嫌ではありませんでした。それをきっかけに自分の文化を友達に紹介できるのも嬉しかったです。

ホウ:私は二つあります。一つ目は、東京の移動距離です。東京は大都市で、電車に1時間乗ってもまだ都内にいることが驚きでした。日本に来て数週間後、どこに行くにも40分以上かかるのが普通なんだと気づきました。二つ目は、野菜の少なさです。レストランのメインはご飯と肉が中心で、個人的に野菜の選択肢が少ないかなと感じました。

サマラウェィーラ:食べ物で言えば、日本に来てからラーメン1杯が800円くらいで食べられることにびっくりしました。オーストラリアでは2000円、場合によっては2500円くらいします。

 

──今後の自分にどのような影響を与えたか

 

サマラウェィーラ:交換留学を経て、自分の視野を広げてくれたことが大きな影響だと思います。留学前は一生オーストラリアに住むつもりでしたが、留学によって将来の可能性が広がったと感じています。日本で働くか、住むか、最近はそんなことも考え始め、今後もその道を追求するかもしれません。

ホウ:私も同意です。交換留学は本当に自分の可能性を広げてくれました。他の学生と話すことで、自分が想像していた以上に選択肢があることに気づかされました。また、交換留学を通じて、自分の選んだ道を責任を持って突き進む力を得ました。私がこの交換留学制度に応募したのは20歳の時で、今は22歳です。1年の留学は良い経験でしたが、応募時に想像していなかった困難もありました。大変な時にこそポジティブな面を見つけ、現状を自分が望むものに変えるための行動力を身につけることができたのかなと思っています。

 

──日本出身の学生と交換留学生が交流を増やすには

 

ホウ:日本出身の学生と交換留学生の交流を促進するためのクラブがあり、それが交流の役に立つと思います。

サマラウェィーラ:大学が主催するパーティーに参加するのも良いと思います。でも、それ以上に、それぞれがもっとオープンにコミュニケーションを取ることも重要だと思います。

ホウ:確かに。多くの日本出身の学生は、交換留学生は勇気があり、冒険心を持っていると考えているかもしれませんが、実際には私たちも新しい場所で新しい生活を始めたばかりで、知らないことが多く、不安なのです。誰かが親切に声を掛けてくれると、とてもありがたく感じると思います。

 

──留学したい学生へのメッセージをお願いします

 

サマラウェィーラ:交換留学は本当にお勧めです。最初は不安かもしれませんが、それは当たり前です。時にはストレスも感じるかもしれませんが、助け合える友達や必要なサポートは見つけられます。東大や日本で経験したことは、オーストラリアでは決して想像できなかったことばかりです。そして日本語を少しでも勉強しておくこともとても役立ちます。

ホウ:交換留学中は留学期間が長く感じられ、「いつかやろう」とよく言ってしまいがちです。しかし、思っている以上に時間はあっという間に過ぎ去るので、やりたいことをすぐ計画することをおすすめします。ディズニーに遊びに行きたいなら友達と時間を合わせて行ったり、他の県に行きたいなら旅行のプランを立てたりして、限りある時間を満喫出来るように過ごすのが良いと思います。留学を終えた今だからこそ言えますが、交換留学はとても貴重で、突然その時間が消えてしまうものです。

 

 

彼らはもう日本を離れてしまったが、東大での学びや東京での生活は、2人に深い影響を与えた。これからも大切な経験として残り続けるに違いない。

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