インタビュー

2016年12月3日

学習塾”a.school”代表岩田さんに聞く、「東大生よ、自分の道を歩めているか」

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 後編では、起業家としての岩田さんの横顔に迫る。

前編はこちら2020年の教育変革後の新しい王道を創る~東大卒起業家のイマ

 

 岩田さんは、工学系研究科で修士号をとったあと、ボストンコンサルティンググループに入社。その傍ら、在学中のi.schoolの仲間たちとNPOで子どもたちにワークショップする活動を続ける。そして就職後3年半経った4年前に、a.schoolを立ち上げる。その道のりを聞いた。

 

――ズバリ、起業されたきっかけはなんですか。コンサルタントの仕事は充実していたということですが。

 

 はい。コンサルの仕事は充実していて、成果も結構出していたと思います。考えることが大好きでしたし、同じことを1年以上続けられないタチだったので、色々なことができるコンサルは合っているように思っていました。

 ですがふと、「コンサル大好き」っていう同期と自分を比べた時に、「ああ、数年後、自分はこいつに負けるな」と思ったんです。彼は「この会社で役員になりたい!」とまで思って仕事に入れ込んでいましたが、僕はコンサルという仕事にそこまで熱意を持てなかったんです。

 そう思っていた矢先に、起業家の先輩と深く話す機会があって。そこで言われた一言が衝撃だったんです。

 「お前みたいな奴が一番ダメなんだ。お前は確かに頭もいいし想いもある。でも大企業で満足している。そういう奴が社会をダメにしていくんだ」と。

 振り返れば、アメリカ・シリコンバレーでは、一番頭がいい人から起業に挑戦していく。この先輩の一言がきっかけとなって、自分の進路に疑問を持つようになりました。可能性があるところに、自分のスキルを注げていないもどかしさもありました。

 

――それで、新しい教育を手がけていく学習塾を立ち上げるようになったわけですが、そこに至るまではどうでしたか。

 もともと、教育には漠然と「もっといい学び方があるだろう」と幼い頃から疑問を感じていました。それが形になったのが、僕の東大在学最終年に発足して所属したi.schoolでの学びです。イノベーションのための技法、デザイン思考を学びまして、「こういった学び方を広めていきたいな」と思うようになります。そして卒業後、i.school の仲間たちとNPOを作り、創造性を高めるワークショップを休みの日にやっていました。

 そこでの活動で、「授業の仕方を大きく変えることで子供の考え方を変えられる」という手応えがあり、今の形に踏み出すようになりました。今は、可能性がある領域に自分のスキルを注げているので、満足しています。

 

――岩田さんの最終目標はなんですか。学校を作るとか?

 いえ、学習塾の、地域・学校に次ぐ第3の場としての価値に関心があるので、それは考えていません。

 今は子供たちと地域との接点が失われている時代です。この塾に来れば、商店街の人、デザイナー、起業家、大学生、学校以外の仲間など、色々な人に会える。そう言った場で展開される新しい学びを、日本中に広げていきたいと思っています。

 

――a schoolを立ち上げられて4年。一番苦労されていることはなんですか。

 受験とは直接は関連しない、お金がなりにくい部分の教育をビジネスとしてどうスケールアウトさせていくかというところですね。教育プログラム作りは、コンサル時代も、社会人相手にも教育プログラムを企画・提供していて、もともと自分としては勘所がある領域だったんです。ですが、塾運営は初めての経験で。

 受験対策にお金を使う親は多いですが、こういった新しい探究・創造型の教育にお金を使う親は、増えてきているとはいえ、まだ少数です。まずは保護者の価値観を変えていかなきゃなって思ってます。受験対策に迎合はしたくない一方、探究・創造型教育にどんな効果があるのか、わかりにくいと売れませんしね。でも、これからの新しい王道を創る位置にいるので、かなりやりがいがあります。

うちの開発した教育プログラムをパッケージ化して提供するという試みもしていて、徳島や岡山の学習塾や、最近では大手個別指導のグループ企業への提供も始まりました。探究・創造型の授業は一つの答えがあるわけではないので、先生としてどう導けばいいのか不安になられる方も多いので、探究・創造型の授業をするためのマインドセットもコーチしています。お金になりにくいところをどうお金にしていくかに苦労していますが、徐々に普及していく兆しも見えていて、来年度からは新しくオープンする柏の葉T-SITEでクラスを開講します。

 

――ますます拡大していく探究・創造型教育が楽しみです。最後に、東大生へメッセージをお願いします。

 一番言いたいことは、「自分の道を歩んでいるのか」。誰かに言われた道ではなくて、社会的に1番ではなくて、自分の軸で生きているかどうか。

 ふと、あれ、自分って何でここにいるんだっけ、と思った時に、振り返ってみてほしいですね。

 

 岩田さん、ありがとうございました!

 

 メンター募集

 a.schoolでは、子どもの好き・強みを引き出し、子どもの力を最大限伸ばしてくれる、学生インターン(有給、役職:メンター)を募集しています。普通の学習塾では経験できない、ゲームやパズル、ディスカッション、ワークショップ形式で楽しく学ぶ子どもたちと一緒に過ごせる日々です。他にも、勉強だけではない力を伸ばす、学びの場作りに興味がある方、こどもの思考や表現を引き出す、ファシリテーション能力を身につけたい方などをお待ちしております。

詳細はこちら

http://aschool.co.jp/news/20021/

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