COLUMN 2020年4月16日

あまりに唐突な留学中止 米国からの緊急帰国体験記

 新型コロナウイルスの世界的な流行は、東大の学生の海外渡航にも深刻な影響を及ぼしている。春休みの旅行や留学と、海外への渡航の予定の変更を強いられた東大生は多いはず。

 以下に記されたのは、アメリカへの留学から緊急帰国した編集部員の体験記である。

 


 

 東大の全学交換留学で米国ボストンのノースイースタン大学に留学していた私が緊急帰国することになったのは3月末のこと。もともと4月末まで滞在予定だった留学。7カ月前に渡米した際は想像もしなかった幕切れだった。

 

警戒メッセージの発する電光掲示板
帰国直前のボストンは3月10日に緊急事態宣言が出され非日常と化していた

 

 米国東海岸では長らく新型コロナウイルスは対岸の火事だった。2月に入っても「中国で騒がれている」程度の認識で、まさか米国で今ほどの広がりを見せることになるとは誰も想像していなかっただろう。留学先の大学が他校よりも早く春休みに入る2月末、ある授業の教授が唐突に「オンライン授業に移行する備えをしておこう」と言い出した時も、クラスメートは皆まさかそんなことになるとは考えておらず、「さすがに先生が過剰反応してるだけでしょ」という感じで話していたものだった。

 

 その後、2月28日ごろに大学本部から教授に対しては「オンライン授業の準備をするように」という主旨のメールが送られたようだったが、その時はほとんどの教員と学生はまさか本当にやることになるとは思っていなかったと思う。

 

 しかし1週間の春休みが明けた3月の第2週、状況は急転直下で一変した。西海岸の大学が次々オンラインに授業を移行する中、月曜、火曜は「もしかして授業がオンラインになるかもね」という認識を全ての学生が持っていたが、授業終わりに教授と「まさかこれが対面で会う最後にはなりませんよね」と笑い合うくらいの気持ちの余裕はあった。その会話が本当に対面での最後の会話になってしまったのだからとんでもない話だ。

 

 春休み明け授業開始から3日目の水曜、他大より一歩遅れて授業の全面オンライン移行がアナウンスされ、何と翌日から授業がオンラインになるということで、大学全体が大混乱だった。しかしこの時点ではノースイースタン大はハーバード大のように寮を閉鎖しなかったため、キャンパス外のアパートに住んでいた私も流石に帰る必要が出てくるとは思ってもいなかった。

 

 東大からようやく帰国に関するガイダンスが出たのはこの週の金曜である。外務省が危険度レベル2(不要不急の渡航は止めてください)に指定した地域の学生には帰国要請を行う、それ以外の場合も帰国は可能、という内容のもので、まだ米国ではワシントン州のみがレベル1だった当時はマサチューセッツ州がレベル2になるとはあまり想像がつかない事態だった。実際にはこの1週間強後には米国全土がレベル2に指定されるわけだが……。

 

 土曜に公的機関の指導により大学が寮の全面閉鎖された時も、自分自身は寮暮らしでなかったため、まさか日本へ帰るなどとは夢にも思わなかった。現地の友人は皆急遽地元に帰ることになったため、慌てて別れを交わすことになってしまったが、自分自身は部屋に引きこもってでもオンラインで授業を受け続けるものだと思っていた。

 

 状況が変わったのは次の月曜、留学先の大学の留学生担当部署からキャンパス外住まいの学生に対しても帰国を強く推奨する通知が出され、本気で帰国を検討することになった。何よりも州政府が矢継ぎ早にコロナ対策の政策を打ち出し、レストランが全閉鎖、スーパーマーケットからは食品がなくなるなど、とても安心して残れる状況ではなくなってしまったのだ(食品の棚は幸い数日後には元に戻った)。結局火曜には一週間後の便で帰国することを決めた。

 

空になった棚
すっからかんになってしまったスーパーの食品の棚

 

 授業がオンラインになるだけだと思っていた日から1週間で帰国まで決意することになるとは、本当に信じられない事態進行のペースの速さだった。帰国した現在はオンラインで一応授業の履修を続けてはいるが、時差のためリアルタイムで授業に参加できず、だいぶ学習能率は落ちてしまっている(中には昼夜逆転生活で乗り切ると言っていた日本人留学生もいたが、私にはできなかった)。

 

 3月24日に帰国した時点では入国の際に検温すらされなかった(あるいは気づかなかっただけなのか?)ことを思うと、米国と日本の危機感の温度差は明白だ。米国の事態進行のとんでもない速さに比べると日本はだいぶ落ち着いているように見えるが、今後どうなるかは分からない。何より米国にいた当時、身近に感染者がいなかったのもあり大学側の動きは過剰反応だと思っていたが、気がつけば米国の感染者数が中国を抜き世界1位であることを考えると、よもや「あれでも遅かったのか」という恐ろしさがある。

 

 最後の最後に自分の想像力の足りなさを痛感させられる苦い経験となった留学生活だった。

 

(文・3年)

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