COLUMN 2020年4月30日

旅行計画の急変 今も日本に帰れず―新型コロナウイルスによる大学生への影響

 新型コロナウイルスの世界的な流行は、東大の学生の海外渡航にも深刻な影響を及ぼしている。春休みの旅行や留学と、海外への渡航の予定の変更を強いられた東大生は多いはず。

 

 以下に記されたのは、海外滞在中に状況が急速に悪化したため、現在も日本に帰れない状況にある中国人留学生の体験記である。


 オーストラリアとアメリカに旅行すると決めたのは去年の12月頃だった。その時は新型コロナウィルスがまだ流行っていなかったので、航空券など普段通り入手できた。

 

オーストラリアの感染者数の推移

 

 2月11日にオーストラリアに渡航し、現地で大学に通う友人を訪ねて東海岸の都市ブリスベンに滞在した。当時オーストラリア全国の感染者数は100人にも満たなかったため、人々はウイルスをあまり気にしてないようだった。街中でマスクをしている人はほとんどおらず、滞在したホテルでもフロントに「発熱の症状や倦怠感がある場合、至急スタッフに伝えるか、近くの病院に寄ってください」と書いてある以外、対策は取っていなさそうだった。滞在中、友人の大学のサークルオリエンテーションや都市主催のイベントに行った。サークルオリエンテーションは予定通り行われ、かなりの人数が集まっていた。その大学では、モリソン首相の政策によりオーストラリアに渡航できない中国人生徒がいたものの、授業を録画してオンラインで視聴可能にするなどの対策をし、予定していた日付に授業が通常開始された(もちろん現在はオンライン講義に変わったが)。また、参加したイベントも、市場形式で大勢の人が集まっており、コロナウィルスの影響がほとんどない状態であった。しかし、感染人数の増加につれ、旅行の計画を予定通りに行うことができなくなっていった。

 

ブリスベンの市場の様子、2月15日
ブリスベンの市場の様子、2月21日

 

 オーストラリアに滞在中、アメリカにいる友人とアメリカ旅行の計画について話した。最初はニューオーレンズとニューヨークに行く予定だった。しかし、ニューヨークでは最初に感染拡大の傾向があり、行くことを断念した。後日、アメリカ全国の感染者数が1000人を突破した上、アメリカにいる友人の大学がオンライン講義に移行したことをきっかけに旅行全体を打ち切ることにした。だが、予約したホテルや民泊はチェックイン日時が迫っていたためキャンセルできなかった。また、アメリカ国内の渡航で、キャンセルできなかった航空券も計3枚あった。宿泊代と航空券代を合計し無駄になった料金は合計20万円くらいだ。親と相談し、中国か日本に帰るか、アメリカに行き親戚の家に泊まるかの3択に絞った。中国に帰れば、新学期が始まると日本に帰る際に支障があることを予想し諦めた。その一方、日本に戻ってもウィルスの流行の趨勢は分からないため断念した。感染者数がそれほど多くなく、親戚もいて安心だと思い、アメリカの感染者数が2000くらいに至った3月13日に、ロサンゼルスに渡航した。

 

アメリカの感染者数の推移

 

 アメリカの入国審査は普段通りで、体温審査などは行われなかった。到着した後、アメリカの感染者数は大いに増え、従妹の学校も休校になった。それを追って外出自粛令(Stay-at-Home-Order)が出て、3月19日に感染者数は1万人を突破した。人々は社会距離拡大(Social Distancing)を念頭においているようだが、まだ不要不急のような外出をしている人も見かける。

 

 自宅隔離中の食材を買い足すために、スーパーマーケットでは毎朝開店時刻以前に店頭に長蛇の列ができ、商品の在庫不足も問題となっている。最初は卵が不足し、1人卵2パックしか買えない対策なども実施された。最近は卵の在庫が増えた一方、トイレットペーパーが欠乏状態になってしまった。

 

 アメリカでは何か緊急状態になった時、動乱が発生しやすい。今回の事態により、トランプ大統領も新型コロナウィルスを中国ウィルスと曲解するなど、アジア系の人々が差別されている。アジア人であるため、私たちの家族も何人かの人に意識的に避けられた。自衛するために多くのアジア人は銃を買い足していたり、SNSやサイトを介して自衛団体を発足させたりしている。幸いに大きな事件はまだ発生してないようだ。

 

中国系の自衛団体に関する報道

 

 日本政府は3月末に、アメリカを含む数十カ国から日本へ渡航した人に14日間の自宅隔離を要請するなどの入国制限を課した。さらに近日、これらの国から渡航してきた、特別永住者を除く外国人の入国を拒否する政策を発表した。そのため、中国人である私は現時点では日本に帰ることができなくなった。教科書の購買など授業を受ける際の問題点については、大学側の事務室や授業それぞれを担当する教授に連絡し、解決法を見出した。大学側がオンライン講義に移ったので大した支障はないが、時差が大きいため履修を組む時はかなり工夫をした。これからは日本に帰るための航空券を探すと同時に、アメリカに一時滞在しZoomで授業を受ける予定である。

 

 主な脅威は人に感染することとは言え、新型コロナウイルスは私たちの社会の他の方面にも大きな影響を及ぼしたと感じる。その発源地に拘泥しアジア人差別という正当化すべきではないものが正当化され、メディアによる過大描写を受けて特定の民族に対する偏見が生じている。個人のレベルで言えば、私は今回の事態で計画の急変を初めて経験した。感染しないよう、自分で予防をしっかりすれば、いつも通りに遊べるし、遊べなくても特段の損失は生じないという生ぬるい考えを持っていた。流行の速度が異常に速く、航空便も次々キャンセルされる事態になるとは予想できなかった。それが原因で、お金をはじめとするさまざまな損出を受けた。また、親と相談したとは言っても、アメリカへ行くのが正しいと判断したこともただの思い込みにすぎなかった。私個人でさえ新型コロナウィルスに対してこのような過ちを犯し損害を被ったので、ましてや各国政府は計り知れないほど多くの試行錯誤を重ねて解決法を見出すのであろう。いずれにせよ、新型コロナウィルスに対する絶対的に正しい対策は存在し得ないため、私たちはメディアに誤導されず、団結して目の前の困難をしのぐしかないと思う。

 

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