東大・アジア研究図書館の上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)は6月、アラビア文字写本群「ダイバー・コレクション」を試験的(β版)にデータベース化、公開した。「育てるアーカイブ」の理念を掲げ、利用者を含む多様な関係者が協働しデジタル化資源を継続的に発展させることを目指す。
今回の第一次公開は写本群の一部の資料を対象とし、今後も追加・更新が続く予定。メタデータ(各資料の周辺情報をデータ化したもの)の仕様やデジタルデータへの転写の方法などに関して利用者の意見を受け入れ、「育てるアーカイブ」の理念の下で継続的な修正・発展を図る。
「ダイバー・コレクション」を所蔵する東大東洋文化研究所(東文研)は2006年に同資料を電子化したが、現在の学術・技術水準と乖離が進んでいる。これを受け「Team Daiber」(東文研、U-PARL、東大大学院人文社会系研究科のリサーチエンジニア・チームからなる)が24年からデータベースを再構築しており、β版公開はその一環。今後は全国的なポータルサイトに接続して研究基盤を提供、研究リソースの管理提供のモデルケースとなることを目指す。
「ダイバー・コレクション」はハンス・ダイバー教授(独フランクフルト大学などを歴任)が中東地域での研究で収集した写本群。内容はアラビア語が主で、イスラーム哲学関連領域の貴重資料を含む。1986~87年度と94年度の2期にわたって東文研が購入した。
アジア研究図書館は2020年10月に開館し、24年に東文研の図書室を分館として組み入れた。同図書館のU-PARLは24年に第3期を始動、学術デジタル資源の公開・研究などに取り組む。