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2026年2月26日

フードバンク・ウォーターサーバー 環境のために誰にでもできること

 環境のために、何かできることはないか……そう考えることはあってもなかなか実践するのは難しい。そこで、今回は食べ物・飲み物に関わる、フードバンクとウォーターサーバーの二つの事例を紹介する。身の回りのちょっとしたところから、少しずつでも環境に貢献できることを。(取材・溝口慶)

 

フードバンクから

 

 まずはグリーントランスフォーメーション(GX)に関わる学生団体ネットワークGXSN(東京大学GX学生ネットワーク)の一団体で、余った食品を集めて配布している Food Bank UTokyoの代表、中野留帆さん(経・4年)に話を聞いた。

 

──第二食堂で食品回収ボックスを見たことがあります

 

 フードバンクには大きく「回収・保管・配布」の三つのプロセスがあります。回収ボックスで食品を集め、それを整理して保管しておきます。そして月に一度、御殿下の学生支援センターで東大生に配布しています。

 

 本郷地区キャンパスの第二食堂・第二購買部・農学部購買部と、龍岡門横の文京総合体育館に手作りの回収ボックスを置いて、食べ切れなくなったご自宅の食品を寄付していただいています。常温保存の可能な食品で賞味・消費期限まで1カ月以上あるものを集め、職員さんの計らいで、安田講堂内で保管しています。その後、毎月学生支援センターで学生に配布しています。これまでに延べ300人ほどに食品を届けてきました。

 

食品回収ボックスの写真
手作りの回収ボックス(左・文京総合体育館、右・第二食堂)(中野さん提供)

 

──どれくらいの食品が集まるのですか

 

 毎回平均して20kgくらい回収し、配布しています。24年4月から始めて、合計で300kg以上の食品を回収しました。レトルトのものが多いですが、最近はお米も増えていますね。調味料や、缶詰、防災用のパンやビスケットなど、どうしても保存期間が長いものが多いです。

 

──実際、回収ボックスの数は追い付いていますか

 

 実は文京区全体では、食品を回収している団体って他にもあるんです。廃棄を減らそうと回収ボックスを増やしすぎて、フードバンク同士で食品を奪い合っても食品ロスの削減には直結しないじゃないですか。何十kgの食品を運ぶのも大変ですし、箱の増設などは考えていないですね。

 

 そもそも、カナダへの留学中に、現地の大学でフードバンクに出会ったのをきっかけに活動を始めましたが、食べきれずに捨てられてしまう、もったいない食品を無くしたいと思っていて、それには長期的には回収される食品が無くなる方が良いとは思っています。

 

 もちろんまだまだ廃棄から救える食品は他にもあるはずで、自分たちの周りでできることからやるようにしています。例えば今は保存食品しか取り扱っていないですが、生鮮食品とかも工夫すればできるようになると思っていますし、着なくなって捨てられる服などもあります。今は数人の運営メンバーで担っていますが、もし共感してくれる人がいたら、ぜひ一緒に挑戦してみたいと思っています。

 

──実は他にも取り組みがあるのですよね

 

 フードバンクの他に、生協食堂でのロス削減にも努めています。例えば本郷第二食堂が午後2時に閉まった後、どうしても余って廃棄されるご飯やお総菜があります。この廃棄を減らすため、24年4月に東大GXSNのサステナブルウィークの一環として本郷で期間限定で「第二食堂を食べきろう弁当」が行われました。それを基に「おまかせ丼」として午後2時から第二食堂のレジ横で販売して頂いています。

 

 駒場食堂の2階でも同様の企画をやっていて、閉店直前に残っていた食材を捨てずに1階へ運び、「バラエティパック」と「玄米ごはん」として売るようにしています。本郷第二食堂と同様の企画を永続的に駒場でもできないかと相談したところ、快く応じてくださったんです。

 

──「バラエティパック」は天ぷらが五つも入って300円だったので驚きました

 

 「おまかせ丼」や「バラエティパック」の名前の通り、中身は毎日違うんです。あくまでも捨てられる食材を減らすのが目的なので、中身はその日余ったもの次第になっているんです。売れ残らないように価格も「おまかせ丼」は400円、「バラエティパック」は300円・玄米は100円で提供していただいています。提供数は数個から十数個ですが、お総菜が大変好評だと聞いています。

 

 生協食堂さんは、なるべく全てのメニューをそろえるよう心掛けられています。利用状況に合わせて時間別で調理する量を変え、廃棄される食材を減らすよう取り組まれているようですが、どうしても廃棄の食品は出てしまいます。だからこその食べきりメニューで、多いときには駒場だけで1日に2kgほど食品ロスの削減につながっているそうです。

 

揚げ物の入ったパックが並べられている
駒場食堂で並べられたバラエティパック(東大生協提供)

 

──手応えは感じますか?

 

 そもそも食品ロスの半分は家庭で発生しています。それが減るのは喜ばしいことです。しかしもう半分は、自分たちに見えないところで発生しているんです。規格外の野菜やサプライチェーンの構造上いわゆる「3分の1ルール」などで、消費者の手元に届く前の段階でまだ食べられるのに廃棄されてしまっている食材が実はたくさんあります。作ったのに食べないものがあるだけでももったいないのに、家庭に届かずに捨てられる食べ物があり、しかも食品廃棄物の約8割が生ゴミとして焼却処分されている。この食品ロス分の、製造・輸送・販売・焼却などの過程でそれぞれ温室効果ガスが排出されていて、その量は膨大です。世界中で排出される温室効果ガスの約8%は食品ロスに由来するとも言われていて、食品ロスはもったいないばかりか環境へも悪影響を与えているんです。

 

 なかなか消費者一人一人がそこまで想像するのは難しいとは思いますが、誰もいない部屋の電気を消すのと同様に、少しずつでも食品を無駄にしないように心掛けてもらえたらうれしいですね。

 

ウォーターサーバーから

 

 学生の提案をきっかけとして23年から駒場Ⅰキャンパスで始まったウォーターサーバーの設置。本郷キャンパスでも設置台数が拡大していることをご存知だろうか。そもそも駒場Ⅰキャンパスのウォーターサーバーは、もともと23年にGXSNの前身である学生団体「UTokyo Sustainable Network(UTSN)」などが東大に提案して設置されたものだった。

 

 世界規模で河川などからプラスチックゴミが海に流出しており、海洋汚染や生態系への悪影響が懸念されている。ペットボトルのゴミのリサイクル率は約8割ではあるが、そもそもペットボトルの利用量自体が大変多い。

 

 そこでペットボトルの利用を減らしつつ、東大内での環境意識を高める施策として東大のキャンパスにウォーターサーバーを設置する動きが起こった。東大は学生からの求めに応じ、駒場Ⅰキャンパス内や安田講堂などに合計13機のウォーターサーバーが設置された。

 

 駒場Ⅰキャンパスでのウォーターサーバーの利用量はGXSNのホームページ上で公開されており、これまでにペットボトル100万本以上に相当する利用量があった。東大生協もペットボトル飲料の売り上げが減るのを覚悟でウォーターサーバーの設置に協力し、駒場購買部にもウォーターサーバーが設置されている。さらに東大にまつわるデザインの水筒も販売してきた。

 

 現在、東大では各部局の自発的な取り組みを推奨する形で、ウォーターサーバーの学内展開が目指されている。部局独自の予算によって駒場キャンパス以外でも自発的にウォーターサーバーの導入が進んでおり、特にもともと研究室単位で持っていた給湯器などを集約する役割も期待されているため、一部のウォーターサーバーではお湯を出す機能まで搭載され、カップ麺などにも利用できるようになっている。

 

ウォーターサーバーの写真
本郷にも駒場と概ね同タイプのウォーターサーバーが増設されつつある(国際学術総合研究棟にて、撮影・溝口慶)

 

 すでに経済学部や工学部、文学部などの建物でウォーターサーバーが導入されており、特に建物の多い工学部ではウォーターサーバーが続々と新しく設置されている。駒場Ⅱキャンパスや柏キャンパスでもウォーターサーバーの設置は始まっていて、学生たちの引き起こした波は今もなお広がり続けている。

 

 もちろん、一人一人が少しペットボトルの利用を減らしたところで、海洋への影響はそう簡単には良くならないだろう。その点で、私たちには社会構造そのものと向き合うことも求められるはずではある。しかし、多くの人がゴミは決められた場所で捨てるし、できることなら再利用可能なものを多く使うだろう。そういった小さな実践の第一歩に、ぜひ大学には水筒を持ってきて、そしてウォーターサーバーを利用してみよう。

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