キャンパスライフ

2020年6月7日

【各学部4年生に聞く 学生生活紹介】⑤理Ⅰ→理学部、理Ⅱ→農学部

 各学部の4年生に進学の理由や学部での授業、生活について話を聞き、ウェブサイトやパンフレットだけでは知ることのできない生の声を紹介する。今年は対面での学部ガイダンスが中止され、特に情報を得る機会が少ない。どの学部や学科に進むか決めきれていない人はぜひ参考にしてほしい。(時間割は3年次のもの)

 

・理Ⅰ→理 天文学科

 

黄 天鋭(こう たかとし)さん

 

理論よりも観測を重視 自由時間が多いのが魅力

 

 中学校の理科の授業で、教員が天文について生き生きと語る姿を見て天文学に興味を持った。大学入学時には天文学科と同じく宇宙について学べる物理学科も進学先候補だった。「平均点が80点あればどちらにも進めそう」と、難しそうな授業を避け点数を取りやすい授業を履修。しかし「相対論、量子論などの理解が不足し、学科の専門的な授業で苦労しました」。志望の提出期限直前に「マイナーな学科の方がむしろ面白そう」と天文学科を選んだ。

 

 天文学科では3年次に観測実習がある。実際の研究で使われている装置を扱い、データ解析まで経験する。10種類ほどの行き先から三つ選ぶことができ、黄さんは木曽観測所や兵庫県立大学西はりま天文台などを訪れた。「同期との仲間意識が生まれ楽しかったです」。夏季休暇中の実施が多いが、予定が合わなければ授業期間中に行くことも。

 

 授業は物理学科や地球惑星物理学科と共通のものが多い。他学科の授業は基本的に午前に受け、天文学科独自の授業は午後が中心だ。実験は理学部の他学科より少なく、電子回路や光学の実験を3Sセメスターに週1回行うのみ。午後が休みの日もあり「時間を自由に使えるのが魅力です」と語る。

 

 自由時間には天文学科の控え室で友人と勉強やボードゲームをして過ごすことが多かったという。学科は1学年10人と小規模で、3、4年生が同じ部屋を使っている。3月には3年生が、進学が決定した2年生を連れて歓迎会を兼ねた旅行に行く。「星が見えやすい郊外に宿泊し、夜はみんなで星を眺めました」。アットホームな雰囲気で、上下間の交流も盛んだ。

 

 卒業生はほぼ修士課程に進学する。9割程度が天文学専攻に進むが、物理学専攻に進学する人も。その後博士課程には5〜8割が進み、一部は電機メーカーやIT企業などに勤める。黄さん自身は「物理学専攻で宇宙物理を学びたいです」。天文学科の授業では観測が重視される一方、理論を学ぶ機会が少なく「自分には物理学科の方が合っていたかもしれない」と感じている。「宇宙の起源など理論的な内容を学び、適性があると思ったら、博士課程まで進みより深く研究したいです」

 

 

・理Ⅱ→農 環境資源科学課程木質構造科学専修

 

野中 彩名(のなか あやな)さん

 

教員との距離が魅了

 

 入学時は薬学部への進学を考えていた野中さん。前期教養課程では、薬学部の教員が担当する総合科目を取ろうとしたがしっくりこないと感じ、工学や農学関連の興味のある授業を履修した。2年次に例年5月に行われる農学部の進学ガイダンスに参加したり、2Sセメスターで履修した総合科目で隣の専修の紹介を聞き、同じパンフレットに載っていた紹介を読んだりしたことがきっかけで、かねてから興味のあった木について学べる現在の進学先が自分に合っているかもしれないと感じたという。進学選択で高い点数が要求されない専修だったので、履修の際には特に点数を意識しなかった。幅広くいろいろな授業を取って進学先を決めた野中さんは「点数にこだわり過ぎないで履修科目を決めるのも一つの方法だと思います」と話す。

 

 建築士の受験資格を取れることが進学の決め手の一つだったが、カリキュラム内の建築設計製図という授業の負担が重かったことは失敗だったと話す。しかし進学選択に後悔はなく、良かったことの方が多い。どの授業も自分の関心に沿っていて楽しく、8人だけの少人数の専修なので学生同士の仲が深まるだけでなく、教員に覚えてもらいやすいアットホームな雰囲気だ。

 

 3年次の実験は農学部応用生命科学課程生物素材化学専修と共通で、両方の専修の研究室が開講する実験ができる。野中さんは、木材物理や木質構造などの木質構造科学専修の実験に加え、菌を培養する生物実験や化学実験をした。

 

 農学部には他学部のS2タームから夏季休業に当たる時期にSPタームがあり、木質構造科学専修では秩父演習林で2泊3日の森林科学実習を行う。「製材所の見学や、木の伐採など実践的な経験ができ、楽しかったです」と専修ならではの実習を振り返る。

 

 専修の進路として、卒業後はほとんどの学生が大学院に進学し、その後はゼネコンや印刷会社、金融・流通関連への就職が多い。野中さんは4年生から木材物理学研究室に所属し、毎週のゼミに参加する日々を送る。木材の腐朽をテーマに卒業研究を行う予定で、卒業後も大学院で研究を続けていきたいと話す。


この記事は2020年5月26日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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