2023年3月17日

東大はじめの1カ月 引っ越し、授業、サークル……先輩の「初めて」体験談

 

 東大合格後、新たな人間関係や授業への期待の一方で、新生活への不安を感じることもあるだろう。初めての一人暮らし、初めての東大の授業……たくさんの「初めて」と先輩はどのように向き合ってきたのか。本年度入学した5人に「東大はじめの1カ月」の思い出を聞いた。(構成・原亘太朗、新内智之)

 

取材相手

Aさん:女性、理I、東京出身、東京大学新聞社・金融サークルなどに所属

Bさん:男性、文I、熊本出身、ラグビー部に所属

Cさん:男性、理II、愛知出身、ハンドボール部に所属

Dさん:男性、理I、愛知出身、ビジネス・起業系サークルに所属

Eさん:男性、理I、愛知出身、英語ディベート部に所属

 

引っ越しはいつどのように? 上京後の生活は?

 

 地方出身の新入生がまず直面するのは引っ越しの問題だ。時期は諸手続の期間近くの3月下旬から月末が多かった。家具を備え付けてある部屋を選ぶと、荷物の運搬などの負担が少なくて済むようだ。

 

 上京前後でどう生活が変わるのか。まず、1人暮らしになり部屋が狭くなる。特に浴室の狭さに衝撃を受けた人もいたようだ。家事も自力でやる必要がある。食事付きの寮に入っているDさんは「実家ではすでに効率的な形で構築されていたさまざまな配置や手順を、一から作り直さないといけなかった」と語る。「浪人時代の寮生活で1人暮らしの勝手は分かっていた」と言うBさんも「料理など楽しいものもあったけれど、浪人生時代は必要なかった掃除や洗濯が面倒で親の偉大さを感じた」と話す。

 

上京後は家事が大変(画像はBさん提供)

 

 家の中の生活だけではなく、行動パターンも変わるかもしれない。「東京ではネットで物を買うことが多い。東京のスポーツ用品店や家具店は店舗が狭いから、品ぞろえで地元の店に負けるかも」とCさん。

 

 また、この時期は暇を持て余すことが多い。必須の手続きはこなさなければならないが、それ以外にやらなければならないことはない。受験が終わってすぐで勉強はもうおなかいっぱい。時間だけがあり余る。暇すぎてメンタルに悪影響が出ることさえあるかもしれないが、苦しみから抜け出すために特別なことは必要ない。「4月に入り授業やサークルで忙しくなると、思い悩む頻度は減った」とDさんは振り返る。また、春休みのうちから高校時代の友人や寮内でできた友人と、あるいは1人で観光や外食など外出する機会を意識的に作るのも、効果的な時間つぶしになるかもしれない。

 

早く友人を作りたい! でも、そんなに焦らなくていいかも

 

 多くの人にとって、合格後初めて東大に足を踏み入れる機会はオリエンテーション委員会などが主催するイベントだろう。ただ、これらのイベントは交友関係を広げるきっかけでしかなく、気負う必要も、友人ができないからといって悲観する必要もない。

 

 最初のイベントは教養学部学生自治会主催の女子オリだ。「女子が少ないのが不安だった」と言うAさんは、女子オリの前から同じ高校出身で東大に受かった先輩に相談したり、高校時代の同級生と東大生活協同組合主催のイベントに参加したりしていた。女子オリでは同じクラスの人と会えたが、連絡先交換などにとどまり親交を深めるまでの時間はなかったと振り返る。

 

 その後、諸手続が終わるとプレオリで同じクラスの仲間と顔を合わせる。プレオリについてはBさんが「仲の良い友人ができた」、Aさんが「女子が少ない分かえってすぐ結束できる」と振り返る一方、Cさんは「共通の話題が少なく、東京近郊出身者が一方的に盛り上がり、疎外感を感じた」、Dさんは「その時に話さなかった人との方が仲が良い」、Eさんは「知らない人ばかりなので緊張した」と語るなどさまざまな感想があるようだ。

 

 プレオリの後にあるオリ旅行・オリ合宿も自由参加だが、参加した人が多かった。ここでたくさん友人を作ろうとする必要はなく、それまで話したことのなかった人としゃべったり、部活・サークル選びを一緒にする人が見つかったりすれば十分のようだ。

 

 また、寮での友達づくりの機会もある。Dさんは「寮の新入生交流会に参加した5〜6人の東大生や、食事を共にした他大生、留学生と仲良くなった」と語る。

 

「最初の一カ月」のイベント一覧

 

ついていける? 履修はどうする? ドキドキワクワクの授業開始

 

 4月5日からは授業が始まる。総合科目やいわゆる第2外国語は一からのスタートだ。「東大の授業についていけるだろうか」と不安になっていた人も多かったようだ。それでも「おびえる必要はない」とBさん。実際に受けてみて、初めから難しいことをやるわけではなく、高校の頃と同様に真面目に勉強すればついていけると感じたという。一方で「授業は簡単に思えたが、周りと比べて劣っているのではないかという不安は最初の定期試験まで解消されなかった」とEさん。進学選択の存在もあり、周りがどれくらいできるのか気になっていた。

 

 2023年度Sセメスターでは基本的に第1週のみ行われるオンライン授業は活用次第でいろいろな効果がありそうだ。「自宅で受けるのではなく、クラス単位で空き教室に集まって受けたり一緒に食事をしたりする中でクラスメートと仲良くなった」とDさん。Aさんは「一緒に受けたことで、周りの勉強へのモチベーションの高さに刺激を得られた」と語る。

 

 高校までは与えられていた時間割も大学では自分で組まなければいけない。必修や準必修で選ぶ余地がない部分も多いが、必修科目を定める履修のルール自体が複雑だ。必修以外の科目では、面白さだけでなく単位の取りやすさも気になる。迷うことも多いはずだ。履修計画で困ったときにはクラスや部活・サークルの先輩に質問する人が多かった。SNSや3月10日発行の『東京大学新聞』合格記念号に掲載予定の「履修虎の巻」、履修に関する情報を掲載する予定の「東大新聞オンライン」の新入生向け特設ページも参照してみよう。「クラスメートに『履修の手引き』などを読み込んで履修についてきちんと理解している人がいて、とても助かった」という意見もあった。

 

東大新聞には合格後の行事をまとめた記事もあります!

【随時更新】意外に忙しい! 東大合格後のスケジュール2023

 

サークル選びは事前情報が大事! 新歓には積極的に参加しよう

 

 部活・サークルの情報は授業開始前から手に入れられる。例えばオリエンテーション委員会のウェブサイトや『東京大学新聞』合格記念号には各団体の情報が載っているし、諸手続の日には諸団体のビラをもらったり「テント列」で諸団体の勧誘を受けられたりする。「たくさんの団体の新歓に顔を出せるわけではないから事前情報は大事」とDさん。興味が湧いたものにはオリ旅行・オリ合宿の後のサークルオリエンテーションなどの対面の行事、個別新歓に参加し入るかを判断すると良い。

 

コロナ禍前のテント列の様子 テント列は今年、昨年より規模を拡大して開催(画像はオリエンテーション委員会提供)

 

 団体ごとに独自に行う新歓活動は練習・体験や食事が多いようだ。起業系サークルなどでは入部のための選考が行われることもある。食事の場での会話は勧誘だけでなく、履修や学生生活、卒業後まで幅広い話に及ぶことも。勧誘自体も「そこまでぐいぐい来る感じではなく、入部を断りにくい感じでもなかった」とCさん。各団体が熱心に勧誘するテント列などとは少し様子が違うのかもしれない。

 

 新歓には積極的に参加すべきだとAさんは言う。「後からは入りづらい。急いで決める必要はないので、合わなければそこでやめれば良いです」。ディベート部に入るとすでに決めていたEさんも「他に興味のある団体があれば積極的に新歓に参加した」と語る。一方、Bさんは4月の後半から新歓に参加し始めた。参加をためらっていたのではなく「授業開始後すぐは授業と両立できるかを見極めていた」と話す。

 

 入部前に交友関係を深めるのは難しいようだ。入部する前に新入生同士で連絡先を交換することは少ない。話すことはあっても、名前が分からずその後につなげられないケースもあったという。すでに面識がある相手とは新歓の中でも関係性が深まることもある。しかし、入部後の方が活動も本格化し、全員と知り合う機会を得られるため、親交が深まりやすい。

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