COLUMN 2020年5月30日

【はじめての東大新聞】〜地方からの東大進学を考える〜地方高校生が東大受験を選択肢とするために必要なもの

 東大に合格する生徒の大半は関東出身であり、東北地方などいわゆる「地方」出身者が占める割合は少ないです。その理由の一つとして、環境の違いから生じる「情報量」の差が挙げられるでしょう。そこから「東大に受かるのは天才ばかり」と思い込み、初めから東大受験を考えない地方生も多いだろうと思うからです。しかしそれはもったいないことだと私は思います。東大を目指すと決意できれば、全ての高校生に東大に受かれる力はあると思うからです。

 

 始めに地方の高校生に与えられる情報はどれほどなのか、「高校生活」、「友人関係」の二つの環境要因に焦点を当てて、私の体験談を踏まえて考えてみたいと思います。

 

 次いで、情報量が少ないという現状を踏まえ、地方高校生が東大受験を選択肢の一つに入れるために必要なものは何であるのか、考えてみようと思います。

 

1. 高校の学習環境

 

 地方の高校は東大合格に向けてどのようなビジョンを描いているのでしょうか。宮城県出身の私の高校時代の恩師に話を聞きました。

 

━━生徒にどのように,どのような頻度で東大について情報を提供していますか?

 

 高校1年次には、8月に「東大見学会・企業訪問」という行事の実施に向けて、入学前からも趣旨説明等を行い、クラス担任からも学年全体からも適時、挑戦しようと考える生徒を増やすよう心掛けています。この行事は希望者のみが参加します。行事の内容としては、OBやOGとの懇談,東大オープンキャンパスへの参加,縁故による紹介での東大施設見学などを用意しています。

 

 高校2年次には、9月に希望者を対象に「東大セミナー」を1泊2日で行います。ここでは、東大受験に特化した予備校での講義および入試説明会への参加、OBやOGとの交流会、個別相談、東大のキャンパスや施設の見学を盛り込んでいます。さらに学年末に校内でOB・OGとの座談会、東大志望者へのガイダンスも開いています。

 

━━カリキュラムや人脈の面において、東大を目指す生徒をどのように支援していますか。

 

 東大を目指す生徒向けのカリキュラムは特にありません。人脈については本校OB・OGの東大生や縁故を活用し,できるだけ現在の東大の様子を知り,目で見る機会を与えるようにしています。

 

━━教師からみた生徒の東大に対するモチベーションや考え方はどのようでしょうか。

 

 入学時は、自分は県内で優秀な方だからとりあえず最高峰である東大を目指す、と口にする生徒は多いです。しかしその後徐々に、日々の学習内容の難易度が上昇するとともに、卒業生の進路実績を通して現実を目の当たりにし、自分には無理だろうと感じるようになってしまいます。友人のほとんどが目指している東北大学が近くにあり、高校でも東北大学研究がとても厚く行われているため(本当はぜひ、東大との差別化に使ってほしいのですが)、そちらに流れる傾向が強いです。

 

━━東大を目指す地方の生徒にやってほしいことはなんですか。

 

 東大合格者の地方出身者の割合が小さいという現実などに気後れせず,そもそも「自分がなぜ東大に行きたいのか」をとことん突き詰めて自問自答を繰り返してほしいです。「東大に行くのだ」という強い気持ちは,周囲に切磋琢磨して競う相手が少ないことや、現役東大生とつながりが少なく生の情報が得にくいことに十分勝るものだ、と思っています。

 私自身、高校側が用意してくれた東大見学会に参加して、そこで東大を魅力的に感じたことが、東大を受験する理由の一つになりました。しかし高校と東北大学との結びつきはやはり強いとも感じていました。高校が提供してくれる情報は東北大学についてのものが東大のものに比べて多く、OB・OGも東北大学の学生が多いので、東北大学への進学という選択がとてもイメージしやすく、ハードルも低くなっていると思います。それが母校の東北大学進学者の多さにつながっているのだろうなと思いました。

 

2. 友人関係

 

 東大を目指す上で、周りの友人が当人に与える影響も見逃せません。私の高校では、東大を受験する生徒は例年およそ20人ほどです。私が受験生だったときも東大を受験する友人は少なく、さらに手に入る勉強や入試の情報は少なかったです。私の高校は東北大を目指す生徒が多いのですが、彼らは勉強するグループを作ったり、勉強について情報を盛んに交換したりしていました。一方で東大志望者は少なく、私が友人から得られる情報は多くはありませんでした。しかし当時私は情報が少ない状況が当たり前だと思っており、あまり積極的に東大の情報を得ようとしませんでした。そのため東大の内実についての知識は少なく、受験生活中に東大での自分の生活をイメージすることがあまりできず、勉強のモチベーションが低いときに苦労しました。勉強計画についても、優秀な友人の勉強法を真似するだけで、自分に合っていないことに気付くのさえ時間がかかってしまいました。

 ここまで地方の生徒は与えられる情報量が少ないと同時に、東大合格へのモチベーションを維持することが難しいということを、私の体験や実感を絡めて確認してきました。この状況を打開するために地方高校生が持つべきものは何でしょうか。「自主性」と「情熱」だと私は思います。

 

 まずは自主性です。確かに地方は首都圏に比べて手に入る情報が少ないかもしれません。しかし私は、首都圏との情報格差は、自分から東大についての情報を得ようと動くことで自然と埋まっていくと思います。実際私は、高校の先輩の合格体験記を読んで勉強方法の参考にしたり、現役・浪人を通じて、『東大2018』、『東大2019』などの受験情報雑誌を読んで東大での一人暮らしの生活をイメージしたりしていました。自分の進路について真剣に考えることで、大学受験もより熱心に取り組めるのだと思います。情報量で首都圏をリードしようとする必要はありません。筆者の高校同期の友人の中には、塾や予備校に一切行かず、東大に現役で合格した人もいます。その友人は高校時代、効果的な勉強法を先生に聞いたり、『蛍雪時代(旺文社)』という受験情報雑誌を読んだりしていました。それに加え、ネットを用いて東大のことを積極的に調べていました。このように、東大について自分から接する機会を設けることが重要だと思います。 

 

 続いて情熱について。自主的に努力するためには「夢」とも呼べるような目標が必要だと思います。私は現役時代は東大に落ち、滑り止めとして受けた慶應義塾大学に進学するつもりでした。しかし慶應義塾大学に通うために家を探したり、キャンパスとその周辺を歩き回ったりしているうちに、自分が絶望していることに気付きました。「自分はやはり東大に行きたいんだ」という思いを自覚した私は、浪人を決意しました。予備校では新しい友達があまり作れず辛い日々も過ごしたが、あの時感じた絶望と、憧れた東大のキャンパスを思い出して、1年間走り切ることができました。自分の「夢」を信じることができて、本当に良かったと思っています。

 

 私は、東大受験に関して首都圏でなければできないことはほとんどないと思います。地方の高校生の皆さんには、東大を決して特別ではない純粋な大学として自分の選択肢の一つに入れ、検討して欲しいです。そうすること自体が自分の将来に大いに役立つと思います。

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