ニュース

2022年10月22日

今の高1から新学習指導要領で入試に変化 共テ・東大入試の変更点は?

 

 本年度の高校1年生から、新課程の学習指導要領での指導が行われている。それに伴い、2025年度入試から大学入試も変わる。大学入試センターが新学習指導要領(新要領)に応じた大学入学共通テストの出題形式を発表しているほか、東大は7月に、2025年度入学者選抜での出題教科・科目についての予告を行った。「情報」の共通テストでの受験が必須になることが改めて示されたほか、2次試験「数学」の出題範囲に「統計的な推測」が加えられるなどの変化がある。東大を志望する受験生が勉強することを求められる内容はどう変わるのだろうか。共通テストと2次試験について見ていく。

 

国語

地理歴史

公民

数学

理科

外国語

情報

 

国語

 

 大学入試センターは昨年12月の発表で2025年度共通テストからの出題形式について「多様な文章を提示」「問題量を増やす方向で問題作成の方向性や構成等を検討」という方針を明らかにしている。新要領では「伝統行事や風物詩などの文化に関する題材」「和歌や俳句などを読み、書き換えたり外国語に訳す」などの記載が見られ、これらの内容を含んだ出題が新設・増加される可能性がある。

 

地理歴史

 

(表1)「地理歴史」の科目編成の変化

 

 新要領では科目が(表1)のように整理され、共通テスト出題科目は「地理総合・地理探求」「歴史総合・日本史探求」「歴史総合・世界史探求」となる。「歴史総合」では「日本史A」「世界史A」で扱われていた近現代史などを扱うため、いわゆる世界史選択者は大日本帝国憲法の制定などについて、日本史選択者は18世紀のアジアの経済と社会などについて、従来より考察を深めることが要求される可能性がある。このほか「地理探求」の学習指導要領に、従来の地理科目になかった「交通・通信、観光」の項目が追加されている。東大の2次試験で文科が受験する「地理歴史」は、「地理探求」「日本史探求」「世界史探求」の3科目から2科目を選択する形式になる。

 

公民

 

 東大の2次試験では引き続き出題されない。旧課程では「現代社会」「倫理」「経済」が選択必修とされたが、新課程では新設の「公共」が必履修科目に。改訂で廃止された「現代社会」の内容を改編。新要領には地理探求とともに、尖閣諸島を巡り解決すべき領有権の問題はないとすることも記載された。共通テストは「公共、倫理」「公共、政治・経済」の形式で行われる。新学習指導要領の「倫理」では、生命科学や医療技術の発達を踏まえた「生」の意義の考察といった内容が盛り込まれた。共通テストでは「地理総合・歴史総合・公共」という「地理総合」「歴史総合」「公共」の三つから二つを選択する形式も予定されているが、東大はこれによる受験を認めないとした。

 

数学

 

(表2)「数学」の科目編成の変化

 

 新要領では科目が(表2)のように再編成され、「数学B」からは「ベクトル」を、「数学III」からは「平面上の曲線と複素数平面」、「数学活用」からは「社会生活における数理的な考察」の内容を部分的に引き継いだ「数学C」が新設されている。

 

(表3)東大2次試験「数学」の出題範囲

 

 これに伴い、2025年度からの共通テストでは従来の「数学II、数学B」が「数学II、数学B、数学C」に変わり、これまでは「数学III」の内容だったため共通テストで出題されなかった「平面上の曲線と複素数平面」が「数列」「統計的な推測」「ベクトル」とともに、四つから三つを選ぶ選択問題として出題されることになる。東大の2次試験の出題範囲も(表3)のように変更され、「統計的な推測」の内容が文理ともに新たに加えられる。新課程の「統計的な推測」では標本調査や確率分布などに加え、新たに仮説検定が扱われる。新要領では「数学I」の「データの分析」の拡張もあった。コンピューターを利用したデータの整理や仮説検定の考え方、主張の妥当性の批判的な考察が新たに扱われており、試験問題に影響する可能性もある。

 

理科

 

 2025年度以降の共通テスト、東大の2次試験ともに出題形式に関する変化は見られなかったものの「生物基礎」「生物」の新課程学習指導要領に注目すべき変更点がある。

 

 「生物基礎」では「ヒトの体の調節」という項目が新設され、生物の中でも特にヒトに焦点を当てて神経系や内分泌系による体内環境の維持や免疫といったトピックを扱う。

 

 「生物」では「人類の系統と進化」という項目が新設され、進化というトピックを特にヒトに関連づけて学習することになる。同じく新たに追加された「生態系と人間生活」では、人間生活が生態系に及ぼす影響を「地球規模のものを中心に」扱うとされている。

 

外国語

 

 大学入試センターは「高等学校までの教育で培った総合的な英語力を可能な限り評価できるよう,問題作成の方向性を検討」する方針を示しているが、具体的な問題形式について現時点で発表はない。東大は現在、入学者選抜で共通テストの配点を「リーディング」「リスニング」を7:3にする得点換算を行っているが、得点の換算については改めて伝えるとしている。

 

 学習指導要領の改訂で、語や句、文中の強勢などの「音声」、カンマ・コロン・セミコロンなどの「句読法」、接続詞や前置詞の用法の指導が追加された。これらが共通テストや2次試験の出題内容に影響する可能性もある。

 

情報

 

 新要領では旧課程の「社会と情報」「情報と科学」に代わり「情報I」「情報II」という編成になり、このうち「情報I」が必履修科目になった。共通テストの「情報」も「情報I」から出題される。昨年3月に公開されたサンプル問題では、情報技術の仕組みとその利点を考える問題や、適切にプログラムを完成させる問題、回帰直線(分布傾向を表す直線)から項目の値を予測したり残差(実測値と予測値の差)について考えたりする問題が出題されている(こちらの記事も参照)。

 

 東大は2025年度以降の入試で、共通テスト「情報」の受験を必須とした。配点について現時点で発表はない。2次試験の科目として「情報」が増設されることはなかった。

 


 

学校推薦型選抜 高校など卒業後1年までに

 

 共通テストの各科目の問題作成方針を含む詳しい情報は令和5年の6月ごろに公表される予定。東大の一般選抜と学校推薦型選抜で、共通テストで受験が求められる教科・科目に違いはない。

 

 旧教育課程の履修者に対して、2025年度共通テストでは「地理歴史」「公民」「数学」「情報」で経過措置が行われる。「理科」でも、新旧教育課程で扱いが異なる内容について、選択解答できる問題を出題する場合があるとした。2025年度東大2次試験でも、旧教育課程の履修者に対して出題する教科・科目の問題の内容による配慮を行うとしている。

 

 東大は学校推薦型選抜の出願資格について、現在は高校などからの卒業後年数に制約を設けていないが、2025年度入試から「高等学校等卒業後1年まで」と変更することも併せて発表した。

 

東大を志望する高1の声

 

 共通テストに「情報」が加わることについて、勉強的な負担としてはさほど変わらないと思っています。「情報」は他の科目に比べ、常識を使って解く問題が多く、将来の生活にも役に立ちやすいものだと思います。まだ対策を行っていないのですが、比較的忙しくない高1のうちに、身近なSNSの仕組みや、プログラミングについて学んでいきたいと思います。

 

【記事修正】2023年1月24日、記事中の「令和7年度」という表現を「2025年度」に改めました。

 

【関連記事】

「情報」共通テスト導入 経緯と課題は

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る