「自主ゼミ」をご存知でしょうか? 自主ゼミとは、教養学部学生自治会が主催する、単位認定のないゼミです。通常の授業の枠に縛られない、個性あふれるゼミが展開されています。もうすぐ新年度。この機会に、サークルや学生団体のみならず、自主ゼミに参加することを考えてみませんか? 本企画では、東大では2020年度から開講されている「未来シナリオとリーダーシップ」、通称「原田ゼミ」の受講生・卒業生のインタビューを4回にわたってお届けします。2回目の今回は、卒業生のインタビューです。(寄稿=童菲 法・3年/原田ゼミ2020S・A、2021S受講生)
坂本 俊吾様(2011年バークレイズ証券、2012年ブラッククローバー合同会社設立)
名切 悠晴様(2011年財務省、2021年ブラッククローバー)
童 菲(2018年入学、法・3年)
原田ゼミは、2006年春学期に第1期が受講者8名で開かれました。当時の卒業生は外務省2名、財務省2名、その他マッキンゼーやバークレイズ等外資系投資銀行にそれぞれ進まれました。今回は、バークレイズ証券に勤めたのち独立し、現在は投資ファンドの運用をされている坂本様、2021年春に財務省を退職し、同会社にジョインした名切様にインタビューさせて頂きました。
──本日はお時間いただきありがとうございます。早速ですが、お二人の卒業までのご経歴を教えて頂けますか。
坂本 私は卒業後、外資系投資銀行のバークレイズ証券に入社して、その一年後にブラッククローバー合同会社を立上げ独立し、それ以来投資ファンド業務を行っています。
名切 私は卒業後、財務省に入りました。2021年春に坂本君と合流して、投資ファンドを運用しています。ゼミの時から坂本君とはコンタクトを取り続けていました。すごく面白そうなことやっているなと思い転職しました。今は毎日が面白く、仕事をしている感じがしません。
──お二人は当時学生時代、どのようなことをしていましたか?
坂本 私は広告研究会というサークルの代表をしていました。また、生活のためにIT会社を経営し、Webサイトを作ったりソフトウェアを作ったりしていました。SNSを運用しているGREEという会社で長期インターンもしていました。
名切 私は結構授業を真面目に受けていましたね。経済学部でしたが、他学部の授業を聴講したり、課外の授業も受けてみたりしていました。IT企業のレバレジーズというところでインターンをしていました。当時は小さいマンションの一室だったのですが、今は急成長して年商数百億企業になっていてびっくりしました。当時は人事採用担当をしていて、就活前に人事の思考がわかりました。
──ゼミに入られたきっかけ、目的はなんでしたか。
名切 私は先輩のおすすめで入りました。アクチュアリティーある政治の話が聞けるのはこのゼミだけだったので、当時はかなり人気ゼミでした。初回授業は教室に入りきれないほど人が集まっていました。
坂本 私は授業の一覧から見つけ、勉強になりそうだと思って入りました。
──ゼミを受けてみて、一番印象深かった学びはなんでしょうか。
名切 ある物事について必ずさまざまな角度から見るということは、とても役に立っています。原田ゼミでは、例えばあるニュース記事分析に際し、その地域の他媒体の記事、他言語の記事、関連する書籍などを全て読み、人的関係から非公開情報ベースでの裏取りをして、分析するべきだと教わりました。これは官僚時代も、今の仕事でも実行していますし、とても大事なことでした。
毎週たくさん課題があり厳しかったですが、大量の情報をどのように要約し、その上で気づきを得て、自分の考えを伝えられるように訓練されたのが、社会人になってとても役に立ちました。
坂本 私は第一回目の講義で、先生がエリートについて「ただ頭が良くて何でもできるというだけの人間はエリートではない。他人の面倒まで見られるのがエリートだ」と言っていたことがとても印象深く今でも覚えており、肝に銘じてその後の社会人生活を過ごしています。
名切 私も「ノブレス・オブリージュ(仏:noblesse oblige)」という言葉を先生が強調されていたことを覚えています。「自分のためではなく、公益のために時間を使え」と。東大生は、役人か日本の大企業に入るかどちらかにいけと勧められていました。その通りだと思い、財務省に入りました。
坂本 初期の講義では国外発行の英字新聞を読んで分析するという課題がとても辛かったです。でも今はお陰様で、情報分析する際はメディアを少数に絞らず、多数の言語を読むのが基本という姿勢が身につきました。
グループワークを行うときは僕よりも圧倒的に優秀な同級生たちが一生懸命課題をこなしていました。仲間を我が家に招待して、ピザを注文するのが僕の仕事です。金ではなく飯で若者を動かすという手法も身につきました。
またあるとき模擬株式投資を行い、その収益を競うという授業がありました。僕のチームは、僕が思いついたアイディアで莫大な収益を上げ、他チームと圧倒的な差をつけて優勝しました。実資金を伴わない擬似的な投資ではありますが、そこで初めて投資を体験し、それが今の仕事に繋がっています。
名切 野党と与党に分かれて、政策検討会のロールプレイをすることもありましたね。当時は両サイド間が歩み寄るシナリオを描いていたのですが、先生から「歩み寄りなんてするわけがない、与党野党は喧嘩するものだ」と厳しく指摘されました。そして、実際もその通りでした。
──ゼミ同士の繋がりはまだありますか。
坂本 結構あります。特に名切君とは交流が深く、不定期に開催されるゼミの懇親会にも参加していました。東大生に会うと刺激を受けるので、卒業生と会える機会があるのはとてもいいことです。
名切 私も役所にいた時は、同期にゼミ仲間がいたので、お互い助け合っていました。また懇親会でも会いたいですね。
──「情報リテラシー」について、今どうお考えですか。
坂本 文章が読める、文章として理解できるという基礎能力を超えて、情報の真偽やなぜそのような記述・表現がされているのか、なぜこの情報が特定のメディアのみに公開されているのか、誰がどのような目的を持ってリークした、あるいはリークさせたのか、なぜここまでしか書かれていないのか、というようなことを常に考えるようになりました。メディア分析のみならず、いわゆる公開報道に対して高い読解力が身についたと思います。穿った見方ができるようになりました。これはどの仕事をするにも非常に便利だと思います。
おそらく日本国民に限らず、世界でも、今も昔も98%くらいの人はメディアやインターネットの情報を大して分析せず、ファクトの確認をせずに、そのまま鵜呑みにし、かつ伝播していると思います。それ故、一定以上のリテラシーを持ち、ちゃんと考えることのできるごく少数の人間だけが得するような世界になっています。
名切 「情報リテラシー」と言っても、初めて聞く人には理解が難しいと思います。大抵は授業前に期待していた内容と全く違うことを授業で学んでいることに気づきます。社会に出て35歳を過ぎたあたりで、ゼミでの話の本質が理解でき役に立つのではないでしょうか。学生諸君には今はわからないと思いますが、将来への投資だと思って、ぜひ挑戦してみてほしいです。
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ゼミを受講したい方、初回ゼミにまず出てみたい方は是非下記応募フォームからご応募ください。確定次第、授業のガイダンス資料、授業URLを登録メールにてお送りさせて頂きます。
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【講師・原田武夫略歴】
東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員Ⅰ種職員として入省
アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)などを歴任し、2005年外務省を自主退職
2007年 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)を設立登記し、代表取締役に就任
2013年 「サンクト・ペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)2013」にパネリストとして参加(2014年、2015年、2018年にも参加)。
大学生・大学院生を対象に次世代人財の育成を目的とする「グローバル人財プレップ・スクール(前身はIISIAプレップ・スクール)」を無償で開講し、そのOB/OG達は主要官庁及び民間有力企業に多数採用
2013年11月 内閣官房行政改革推進本部事務局による「秋のレビュー」の「大学の教育研究の質の向上に関する事業(グローバル人材育成及び大学改革)」に
関する参考人として招致される
2020年4月 東京大学駒場キャンパスで教鞭を執る
2021年3月 京都産業大学修了(京都文化学専攻(歴史地理学))及び放送大学大学院修了(文化科学専攻(人文学))
2021年 人工知能学会会員
日韓独英で著書・翻訳書多数
【2022Sセメゼミ情報】
開講時限:水曜4限(14:55~16:40)
開講形態: 教養学部自治会の要請次第
例年のジェンダー比:5対5程度
受講者所属:学部生院生、文系理系と多岐にわたる
ゼミUTmapHP:https://utmap.jp/clubs/60238126
ゼミTwitter::https://twitter.com/haradazemi2022
ゼミInstagram::https://www.instagram.com/iisia_student/
(参考)2021Aゼミガイダンス資料:https://docs.google.com/document/d/1VN63dASKeS0SdTQBb_7jbC6cuAXTstM_/edit