東大は新学部「ディープテック学部」と「コンピューティング学部」の設置を計画している。東京大学新聞社では、複数の関係者に取材を実施。10月22日時点での情報をまとめる。(関連→こちら)
授業は全面的に英語で実施される予定。学生から人気の高い分野で、関心に応じた自由な学科・研究室間の移動が可能な制度を実現するのが狙い。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と東大の持つ「膨大な教育リソース」を活用し、ニーズを先取りした学部教育システムを設計する。ディープテック学部は、先端テクノロジー分野において、特に研究者よりもテック起業家の育成を目指す。コンピューティング学部は、コンピュータ科学を専門とする。
2031年度の進学選択に合わせた学部の開設を目指していて、これは現在の中学3年生が現役で進学した場合の進学選択に当たる。両学部合わせて、定員は一学年あたり400人程度で計画されている。25年の工学部の進学者数991人の40%に相当する人数であり、工学部の定員変更も検討中という。
授業は東大大学院工学系研究科や東大大学院情報理工学系研究科の教員が中心となって運営するが、どの建物が利用されるかは検討段階。新学部に合わせた新しい大学院の研究科の設置については、現時点では計画されていないが、将来的に検討される可能性もある。仮に大学院が再編されるとしても、33年度以降になるためまだ具体的な計画には至っていないと関係者は話す。
大学院では、工学系に経営学修士(MBA)の学位を取得できる新課程を設置することも検討されている。研究者よりも起業家に焦点を置き、先端技術をもった人材が経営も学べる課程を確立する。東大関連のベンチャー企業が増加する近況は米国のシリコンバレーになぞらえ「本郷バレー」とも呼ばれる。さらなる起業家人材の養成を通じて、拡大する東大発ベンチャーのますますの拡大を図る。
国際卓越研究大学(卓越大)に認定された場合には、大学ファンドからの支援の一部が新学部の設置にも充てられる。10月17日には文科省が検討のために東大を視察した。新学部の計画案は文科省への提出資料にも含まれているといい、すでに設置が決定されているUTokyo College of Design(CoD)と申請にあたっての二枚看板となる。
計画は本部の直轄だが、具体的な部分は工学系研究科などの教員が主だって計画している。工学系研究科も、来年度には大学院の授業を可能な限り全て英語で実施する方針。
27年3月には藤井輝夫総長が任期満了を迎える。計画は次の総長へも継承されるだろうと本部の関係者は話すが、来年度実施の総長選考では卓越大に関する考え方は一つの論点となる。来年7月に決定される第1次候補者が提出を求められる資料には、東大の役割や取り組むべき重点項目と並び、卓越大としての将来構想に関する所見も含まれる。
工学部では10月31日までパブリックコメント(パブコメ)を実施している。パブコメの情報はメタバース工学部の案内メール配信機能を通じ、過去に講座に参加した1万人以上の小中高生へ向けて発信されたが、パブコメについて他に広報は行われておらず、今後も行われる予定はないという。