受験

2024年1月3日

【受験生応援連載2024】共通テスト直前の過ごし方 ~現役東大生にアンケート~

アンケートで見る共通テスト前後の過ごし方

 共通テストまであと10日。これまでの勉強の成果を思う存分に発揮していきたいところだろう。体調や精神状態は試験の点数に影響を与えると言われている。そこで、東大新聞では共通テスト前後の過ごし方について、現役東大生を対象にアンケートを実施した。様々な回答を参考にして、ぜひ自分に合う過ごし方を見つけてほしい。(構成・大橋結花)

 

共通テストへの向き合い方

 

 まず、共通テスト対策への力の入れ具合とその理由を聞いた。次に、共通テスト前日をどのように過ごしたか、勉強と健康管理の点から聞いた。

 

Q.共通テスト対策にはどれくらい力を入れましたか?

 

 「とても入れた」または「結構入れた」と回答した人の理由は、以下のように3種類に分けられた。

 

・「共通テストで安定した点数を取れば、二次試験に安心して臨めるから」(文Ⅲ・2年)

・「私大の共テ利用で合格をとりたかったから」(文Ⅰ・1年)

・「文科3類は比較的足切りが高かったから」(文Ⅲ・2年)

 

 最も多かったのは、安心して2次試験に臨むためにある程度力を入れたという回答であった。第1段階選抜で後れを取ると、自分は十分に勉強してきたのか、2次試験で合格できるほど点数を取れるかなどさまざまな不安を抱いてしまうためだろう。共通テストの成績で併願校の合格をいち早く取る戦略も見られた。私立大学の入学試験は2月1日以降と定められているため、国立大学の前期試験の直前期と重なってしまう。共通テスト利用入試を受験するメリットとして、私立大学の入試対策に割く時間の削減や、人口が密である試験会場で感染症などに罹患するリスクなどがあると考えられる。また、受験する科類によって異なる、第1段階選抜の通過に最低限必要な点数に言及した回答もあった。この点数は、文Ⅲと理Ⅱがそれぞれ文科・理科の中では高い傾向にある。しかし、例えば2021、22年度は文Ⅲが文科内で最高であったが、23年度は最低だったため、あくまで傾向であることに留意する必要がある。

 

 一方、「やや入れた」と回答した人の中では、

 

・「形式にさえ慣れておけば2次試験対策で十分だと思っていたから」(文Ⅲ・1年)

 

といった、東大入試の特性を意識した回答が見られた。東大の入試では、共通テストの900点を110点に2次試験の440点を足し、総合550点満点で合否を決定するため、総合得点。そのため、共通テスト対策と2次試験対策それぞれに、限られた時間と体力をどれほど割くかが工夫のしどころである。

 

Q.共通テスト前日はどのように過ごしましたか? 勉強面(使用した教材や勉強時間など)や健康面(食事や睡眠など)で気をつけたことは

 

 勉強面では

 

・「前日も河合の予想問題を解いた。理科基礎で前に間違えた知識をメモしたノートを見返した」(文Ⅰ・1年)

・「直前に点数を出すとショックだから教科書を読み直す」(文Ⅰ・2年)

・「勉強しすぎると疲れるししなさすぎると不安になるので、『ちょっと頑張った日』と同じくらいの勉強時間にしてよかったと思っています」(文Ⅰ・1年)

・「前日にする勉強は事前に決めておかないと焦るので、早めに計画を立てるべき」(文Ⅰ・1年)

 

 回答は、普段の勉強習慣通り問題を解く人と、復習に留める人の2種類に大きく分けられた。また、疲れ過ぎずかつ勉強量が足りないという不安をあまり感じないためには少し頑張るくらいがちょうどいいとの回答も見られた。試験前日ともなると何をするべきか考える時間も惜しいため、今のうちに何を確認するか決めておくと良いかもしれない。

 

 健康面では

 

・「蒸気でホットアイマスクを使って早めに寝た」(理Ⅱ・1年)

・「早めに就寝しようと思いつつも寝付けなかった」(文Ⅲ・1年)

・「消化のいいものを食べた」(文Ⅰ・1年)

・「夕食はちょっと豪華に食べた」(文Ⅱ・1年)

・「食事や睡眠はいつも通りを心がけた」(文Ⅰ・1年)

 

 睡眠については早めの就寝を心掛けたとする回答が多かった。試験が終わるまで集中力や注意力を維持するためには睡眠は大事だ。食事については消化の良いものを摂ったという回答が多かった。おなかの調子が悪いと、試験当日は混み合う傾向にあるお手洗いに時間をかけて並んだり、体調の悪さにより試験に集中しづらくなったりするためだろう。逆に、普段通りの生活を送ることを意識した人もいた。

 

上図は、2020年度にセンター試験が共通テストになってからの科類別第一段階選抜最低点の推移である。2021年度の文Ⅱと2023年度の文Ⅲでは第一段階選抜が実施されなかったため、志願者の最低点をグラフに用いている。文Ⅲと理Ⅱは最低点が高いと言われているが、グラフを見ると、文Ⅰと文Ⅲ、理Ⅰと理Ⅱはどちらの方が第一段階選抜が厳しいとも言えない。理Ⅲは2次試験突破に必要な点数が他より明確に高いため、より効率的に点数を稼げる2次試験重視の傾向となり、共通テストの必要点数は低めになっていると考えられる。なお、共通テストが振るわず、第一段階選抜を突破できるか不安に感じた人が、前年度に最低点が低かった科類に流れることもある。
上図は、2020年度にセンター試験が共通テストになってからの科類別第一段階選抜最低点の推移である。2021年度の文Ⅱと2023年度の文Ⅲでは第一段階選抜が実施されなかったため、志願者の最低点をグラフに用いている。文Ⅲと理Ⅱは最低点が高いと言われているが、グラフを見ると、文Ⅰと文Ⅲ、理Ⅰと理Ⅱはどちらの方が第一段階選抜が厳しいとも言えない。理Ⅲは2次試験突破に必要な点数が他より明確に高いため、より効率的に点数を稼げる2次試験重視の傾向となり、共通テストの必要点数は低めになっていると考えられる。なお、共通テストが振るわず、第一段階選抜を突破できるか不安に感じた人が、前年度に最低点が低かった科類に流れることもある。

 

当日はどう過ごす?

 

 いよいよ試験当日。共通テストは、文系は午前9時30分から、理系は午前10時40分から始まる。時間割上は休み時間は50分、昼休みは80分とされているが、問題の配布と回収があるため、休み時間は高々20分程度。そんな貴重な休み時間の過ごし方を聞いてみた。また、試験が終わった後、試験の答え合わせをしたかどうかを含め、共通テスト1日目の夜をどう過ごしたかを聞いた。

 

Q.共通テスト当日の休み時間は何をして過ごしましたか?

 

・「知識事項の確認」(文Ⅱ・2年)

・「一問一答や単語など、あまり深く頭を使わずにできる勉強をした」(文Ⅰ・1年)

・「会場内をリスニングしながら歩き回った」(文Ⅲ・1年)

「近くのクラスメイトと話したり、廊下で休憩したりしました」(理Ⅱ・1年)

「寝ていました」(文Ⅱ・1年)

 

 休み時間の過ごし方は、勉強、談笑、そして睡眠の3種類があるようだ。勉強をする場合は、直前にはあまり複雑なことをせず、簡単な記憶ものや英語の耳慣らしなどに留めておくのが良さそうだ。談笑していた人も少なくない。現役生は学校でまとめて出願するため、近くの席に友人がいる場合が多いのである。一方、睡眠をとっていた人も散見された。試験は午後6時ごろまでの長丁場であることが一つの要因と考えられる。

 

Q.1日目の夜はどのように過ごしましたか? 勉強面(使用した教材や勉強時間など)や健康面(食事や睡眠など)で気をつけたことは

 

 勉強面では

 

・「理科基礎を中心に3時間ほど勉強した」(文Ⅰ・1年)

・「暗記して早めに寝ました」(文Ⅱ・1年)

・「数学が不安だったので何年分か解きました」(理Ⅱ・1年)

・「試験会場が遠く、家に着いた時間が遅かったため、数学の公式の復習と理科基礎の参考書を読み、数学1Aの予想問題を1回分解いた」(文Ⅲ・2年)

・「何もしないで早く寝た」(文Ⅲ・1年)

 

 暗記ものを中心に勉強したという回答が目立った。一方で、特定の科目を重点的に勉強したと答える人もいた。特に、23年度共通テスト受験者の中には22年度に難化した数学に対する不安を抱いていた人もいただろう。今までの共通テストの傾向からどの科目をどれぐらい勉強するか、と戦略を立てるのも一つの手だ。他にも、勉強時間がとれなかった人や勉強しないことを選択した人もいた。

 

 健康面では

 

・「消化の良いうどんを食べ、22時ごろに寝た」(文Ⅲ・2年)

・「よく寝た」(文Ⅰ・2年)

 

 睡眠を十分にとったことを示す回答が多かった。これは、前日の過ごし方でも見られた傾向である。食事についても前日の過ごし方同様、消化の良さに言及した回答が複数見られた。

 

Q.1日目の答え合わせは2日目の試験までにしましたか

 

 ほとんどが全くしていないと回答した。その理由として以下が例として挙げられる。

 

・「良くても悪くても次の日に平常心でいられなくなるから」(理Ⅱ・2年)

・「やらかしていることが判明したときにメンタルを維持できないと思ったから」(文Ⅲ・1年)

・「満点を取ったと思い込むことにしたため」(理Ⅱ・1年)

・「しても無駄だから」(文Ⅰ・1年)

 

 自己採点し、点数が悪かった時の落ち込みを憂慮した回答が大半を占めた。また、点数が良かったとしても、舞い上がりすぎず平静な気持ちで試験に臨めるような方法を考えて、適切に実行できていると言えるだろう。また、共通テストは既に終わっているのであり、共通テストの点数を気にしても仕方がないという姿勢の人も複数見られた。

 

2次試験に向けて

 

 共通テストが終了してから2次試験まで約40日間ある。ラストスパートをかける時期だ。この時期に、選択式の共通テストに慣れたために記述式の2次試験の勘が鈍る「共通テストボケ」が出ることがある。ここでは、共通テストボケに関して、また共通テストを終えてからの2次試験に向けた精神的な切り替えについて聞いた。

 

Q.「共通テストボケ」はありましたか?「あった」と回答した方はどのように解消しましたか?

 

・「過去問を解きまくった」(文Ⅰ・1年)

・「とにかく二次試験の過去問を解いた。数をこなすと感覚が戻ってきて、割とすぐ治った」(文Ⅲ・2年)

といった回答が多く得られた。

・「数学は解消しなかった」(文Ⅰ・1年)

 

 多くの人は共通テストボケがない、あるいはあってもすぐに克服したと答えた。一方で、共通テストボケの対策が功を奏さない場合もあるようだ。

 

Q.共通テスト受験後、2次試験に向けてどのように精神的に切り替えましたか。

 

・「かなり出来が良く気持ちが緩んだが、当日は何が起こるかわからないと考え切り替えた」(文Ⅰ・1年)

・「良い結果だったのでむしろ勢いがついてよかったです」(理Ⅱ・1年)

・「調子に乗り過ぎないように気をつけた」(文Ⅰ・1年)

・「自己採点し想定よりかなり点数が低く落ち込んだが、だからこそ二次試験で頑張らなくては合格できないと奮起できた」(文Ⅲ・2年)

・「自己採点が酷かったので、自動的に切り替わった」(文Ⅲ・1年)

・「共通テスト前から二次試験を意識していたので、精神的な切り替えは必要なかった」(文Ⅲ・1年)

・「共通テストは所詮通過点と考えた」(文Ⅰ・1年)

 

 共通テストの出来が良かった人の中には、成功の波に乗ろうとする人も、力が抜けてしまわないよう意識的に自分を律する人もいた。一方で、共通テストが思うように行かなかった人の多くは、2次試験に向けて前向きに切り替えていたようだ。東大入試は配点の大部分を2次試験が占めるため、共通テストで失敗しても十分に挽回可能である。想定より点数が低くても、気持ちを切り替え2次試験で実力を出し切れるようにすることが重要だろう。また、2次試験に向けてわざわざ切り替えるというほど気持ちの変化はなかったという回答も散見された。共通テスト対策と2次試験対策は並行して行うため、共通テストの勉強をしつつも2次試験へ一定の意識を向けることになる。前述した配点の関係上、共通テストだけが成功しても合格はできないということを特に意識していたために、このような回答になったと思われる。

 

自分に合った過ごし方を見つけよう

 

 ここまで共通テスト前の現役東大生の多様な過ごし方を紹介してきたが、取り入れてみたいものが見つかったなら幸いである。このように、合格者たちの共通テスト前後の過ごし方は多様であり、正解は一つではないことが分かる。すなわち、重要であるのは方法それ自体ではなく、その方法が自分に合っているかどうかだろう。ぜひこの記事を参考に、自分に合う形で共通テストに臨み、悔いのない受験を迎えてほしい。

 

【記事修正】2024年1月9日午後7時44分 脱字を修正しました。

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