受験

2022年3月9日

コロナ禍の東大生は1年次をどう過ごしたか 編集部員による座談会

 

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから約2年、依然としてウイルスは猛威を振るっている。東大では本年度も昨年度に引き続きオンライン授業が主であり、中止・オンライン開催となった行事もあった。来年度もオリ合宿の中止が決まるなど新型コロナウイルスの影響は残ると思われる一方で、対面を基本とした授業形態が目指されるなど、対面での活動が拡大することも予測される。1・2年生の編集部員で座談会を行い、それぞれの1年次の学生生活の核となる人間関係や学びのリアルについて語るとともに、来年度に期待することについても話した。 (構成・石橋咲)

 

参加者

 

佐藤健(文Ⅲ・1年)
石橋咲(理Ⅱ・1年)
葉いずみ(文Ⅲ・2年)
黒田光太郎(理Ⅱ・2年)

 

記事に出てくる東大用語

 

オリ合宿:クラスの親睦を深めるためにクラス単位で行われる旅行。新入生と上級生が参加する。

プレオリ:本来はオリ合宿に先立って開かれる懇親会。初めてクラスで顔を合わせる。

上クラ:前年度入学の同じ名前のクラスの先輩。

オリパンフ:上クラが新入生に向けて作成した、上クラの自己紹介などが載った冊子。

UTAS:東大独自の学務システム。シラバスや成績の閲覧などに使われる。

教養学部オリエンテーション委員会(オリ委員会):新入生のための行事の企画・指導・調整をする学生団体。クラス行事やサークル勧誘などに関する業務を行う。

スポ身:正式名称は「身体運動・健康科学実習」。テニス、サッカー、バドミントンなどから種目を選択し、種目ごとに分かれて実習を行う。

Sセメ/Aセメ:Sセメスター(春休み明けから夏休みまでの学期)とAセメスター(夏休み明けから春休みまでの学期)。

初ゼミ:正式名称は「初年次ゼミナール文科/理科」。小論文の執筆を通してアカデミックマナーなどを学ぶ。

 

情報共有はオンラインで効率良く

 

━━入学後、初めて友達ができたのはいつごろですか

 

黒田 5月ごろにクラスのZoom会があって、そこで同じ三鷹寮に住んでいると分かった人と仲良くなりました。秋には対面授業も始まり、対面で会う友人ができたのはこの頃ですね。

 

佐藤 3月末の上クラとの顔合わせやプレオリ、4月からの対面授業でクラスの人と会う機会があったり、Zoomでのクラス会があったりして徐々に友達ができていきました。

 

━━例年行われていたオリ合宿は中止となりましたが、そのことで友人関係の構築に影響はありましたか

 

佐藤 長時間クラスの人と一緒にいられるのはなかなかない機会だったと思いますが、僕の場合はクラスの雰囲気からあってもなくてもあまり変わらなかったような気もします。

 

黒田 僕はオリ合宿に行きたかったです。Sセメで対面授業がなかったこともあって、行っていたらクラスの人ともっと仲良くなれたと思います。

 

━━どのように履修を決めましたか

 

佐藤 入学後に上クラからもらう「オリパンフ」に、履修の登録の仕方や上クラがだいたい週に何こま授業を入れていたかなどが結構詳しく書いてあり、それを参考にして決めましたね。Zoomで上クラの人に質問ができる機会もありました。

 

石橋 上クラの人がZoomで画面共有をしながらUTASなどの使い方や取らなければならない単位数を教えてくれました。あとは自分で「履修の手引き」やシラバスを読んだりして興味がある授業を選びました。

 

葉 上クラの人が履修の決め方を説明するZoom会を開いてくれたり、上クラと下クラの合同のLINEグループでおすすめの授業などをまとめたノートを作ってくれたりしました。クラスの人とZoomで話しながら一緒に組んだりしました。クラスのLINEグループで時間割を共有したりもしていましたね。

 

━━サークルの新歓について、どこで情報を得ましたか。また東京大学新聞社や他のサークルへの入部を決めたのはいつごろですか

 

石橋 オリ委員会のサークル新歓特設サイトにサークルや部活などの一覧があって、そこから興味のあるサークルの説明会の日程を調べました。3月下旬から4月上旬にかけてメディア系サークル合同の説明会と東大新聞の説明会に参加して、話を聞いたり新歓担当に質問したりしました。東大新聞に入部したのは4月中旬です。

 

黒田 Sセメの間はサークルに入っておらず暇だったので夏ごろからサークルを探し始め、Aセメスター(Aセメ)の初めごろに UT-BASEというサークルが主催していた合同新歓に参加しました。焦って探した感じですね。

 

葉 入学してすぐにもらった『槌音(つちおと)』(オリ委員会発行の冊子)のサークル一覧を読んで興味のあるサークルに印を付けたり、オリ委員会のサイトで気になったサークルをお気に入り登録したりしていましたね。私は1年次から地理部にも所属していますが、こちらは高校生の時から入ろうと思っていて迷いがなかったことと、対面での新歓が中止になったことから説明会には参加していないです。2年生になってもう一つくらいサークルに入ろうと思い、5月ごろに東大新聞に入部しました。

 

行事は対面の方が楽しめるはず

 

━━五月祭や駒場祭では、例年は多くのクラスが企画を出していたようですが、昨年度からは参加するクラスが減るなど、学園祭に学生が関わる機会が減ったと思います。皆さんはどのように参加しましたか

 

葉 私のクラスは4月に五月祭、駒場祭の担当者を決めて説明会などには参加していました。開催形態が早くから知らされていたわけではなかったので、対面なら参加しようという感じでした。五月祭では飲食物の販売を計画していたのですが、オンラインになってしまったので参加しませんでした。私は駒場祭のクラスの代表者だったのですが、どうせ対面ではできないので計画を立てるのもむなしく、9月まで延期になった五月祭の1カ月後だったこともあり駒場祭にも参加していないです。地理部では駒場祭に参加し、忙しく準備しました。

 

佐藤 五月祭ではそれぞれが好きなように書いた記事をnote(文章、画像等を投稿できるメディアプラットフォーム)にまとめて公開するというクラスの企画に参加しましたが、対面開催に比べると交流は少なかったと思います。駒場祭では3日間で合わせて 10人程度が参加してZoomで「東大生と遊ぼう」という企画を行いました。

 

━━オンライン・オフラインで大学の友人と交流はありましたか

 

石橋 夏休みにクラスの女子で東京ディズニーシーに行ったり、その後も遊びの誘いがあったりしました。サークルでも先輩や同期と1回食事に行きましたが、それ以外の交流の機会はほとんどありませんでした。オンラインでのつながりもほとんどなく地元の友人とばかり遊んでいましたね。

 

葉 Aセメが始まってからクラスの人と2回ほど食事に行きました。その一方でAセメの頃にはサークルなどの居場所も増えて、友達といえばクラスの人という感じではなくなったかなと思います。

 

━━昨年度のAセメから一部の授業で対面授業が始まりましたが、皆さんは1年次、授業をどのように受けていましたか

 

佐藤 スポ身と第二外国語で対面授業があり、週に2回駒場Iキャンパスに通っていました。Sセメでは一部の授業で教員はオンラインで、学生は対面で参加できるコールセンター方式になることもありました。

 

石橋 初ゼミ理科と基礎化学実験・基礎物理学実験でも対面授業がありました。線型代数学・微分積分学演習という授業は対面とオンラインのどちらでも参加可能で、私は数学が苦手だったので毎回対面で参加して数学が得意なクラスメートに教えてもらっていました。初ゼミ理科の実験がオンラインで行われたのが印象に残っています。酵素と温度計が郵送されてきて、それを使って自宅の台所でチーズを作りました。

 

黒田 Sセメは全く対面授業がなく、Aセメからスポ身と第二外国語で対面授業が始まりました。基礎化学実験はほとんどオンラインでしたが、基礎物理学実験は対面でも行われました。2週間に1週、1回か2回駒場Ⅰキャンパスに通っていました。こう振り返ってみると結構複雑なスケジュールをこなしていたんですね。

 

葉 Aセメは、第二外国語(クラスごとに開講)の授業がコールセンター方式で、最初のうちはクラスで集まって受講していました。でも皆隣に座っているのに当てられてミュートを外してしゃべるのが不思議な感じだし、間違えると恥ずかしかったので私は家で受けるようになりましたね。語学の授業は対面だと近くに座っている女子とばかり話してしまいますが、オンラインだとランダムにブレイクアウトルームに分けられるので、そのおかげでクラスの誰とでも話せるようになりました。この点はオンラインの良いところかなと思います。

 

━━オンライン授業はどこで受講していましたか

 

佐藤 僕のクラスは対面授業の後にその教室で他のクラスの授業があったので、教室には残らずにそれぞれグループに分かれてオンライン授業を受けたりすぐに帰ったりしていました。

 

石橋 対面授業の後は教室に残ってオンライン授業を受けたり、例えば2限にオンライン授業があって3限に対面授業がある日などは2限に決まった教室に行けばクラスの誰かがいるので一緒に授業を受けたりしていました。

 

黒田 僕が1年生の時には集まってオンライン授業を受けることはなかったですね。教室に行ったら誰かがいる、というのにはびっくりです。

 

葉 対面授業の前後にその教室を使ってオンライン授業を受けることはありましたが、対面授業で使わない教室にクラスメートが自然と集まるようなことは私もなかったです。

 

来年度への期待は

 

━━来年度の1年生の学生生活はどのようになってほしいと考えますか

 

佐藤 オンライン授業にも良いところや楽なところはありますが、大きい教室に行って大人数で講義を受けるのが大学生っぽいなと思うので対面の授業が増えると良いですね。五月祭などの行事もやはり対面の方が楽しめると思うので、そこは期待をしたいです。

 

黒田 オリ合宿の代わりに、宿泊を伴わないオリ旅行が検討されているそうなので、楽しんでほしいですね。五月祭・駒場祭もぜひ対面で開催されてほしいです。オンライン授業には利点もありますが「次は○○番講堂だ!時間がないから急げ!」というのも憧れますね。

 

葉 佐藤くんが言っていた、大きい教室で大人数で授業を受けられたらいいなというのは私も思っています。総合科目のいわゆる名物授業も対面で受講したかったですね。2年のAセメで受講した授業に、いろいろな科類や学部から40人ほどが集まって対面で行われるものがありました。ディスカッションの時間も楽しく大学生の醍醐味(だいごみ)だと思ったので、そのような機会が増えたらもっと楽しいのではないかと思います。

 

石橋 同じ授業を選択していて同じ分野に興味がある人と話してみたかったです。私たちはオンライン時代にしか大学生活を送っておらず、対面ベースの大学生活は想像がつかない部分もありますが、学生同士の交流や学びが活性化してほしいと願っています。

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