新規大卒者の入社から3年以内の離職率が3割を超えるが、そこには終身雇用にとらわれず、多様な生き方をする人が増えているという側面がある。東大の卒業生で企業の社員として働いた経験を持ち、現在は新たな道を歩んでいる3人に転職の経緯やアドバイスを聞いた。就職活動やその先の人生設計の参考としてほしい。3人目は、ビストロアンバロン代表の両角太郎さんだ。
(取材・趙楠)
企業ではできない意思決定
幼い頃から動物に興味があり、動物行動学の研究者を目指して東大に入学。しかし研究者は向いていないと感じ、学部卒で金融機関に就職することに。「僕が卒業した80年代末はちょうど金融機関が理系を採用し始めた頃でした。給料が非常に高いこともあり、新しい世界に挑戦しようと全く別の世界に足を踏み入れました(笑)」
新卒で入社した安田火災海上保険(当時)では得意な英語を生かし、ロンドンの拠点で活躍。しかし単身赴任だったため、家庭のために転職を考えるように。10年にわたる仕事の経験で自信が付いたこともあり、大手外資系金融、ゴールドマン・サックス投信(当時)に転職し、日本で働き始めた。
転職して待ち受けていたのは、日系企業とは全く違うスピード感だったという。「洗濯機の中でぐるぐる回されている感じでした」。実績を残すも激務が続く中で心身共に限界に。比較的働きやすい別の外資系企業に転職後、リーマン・ショックで解雇されたのをきっかけにセカンドキャリアを歩む決意をした。
食べ歩き、ワインが趣味だったため飲食店を開くことに。知り合いのビストロで2カ月間経験を積みつつ物件と従業員をそろえ、西麻布にビストロを開店した。
開店してみると想定外のことばかりが発生し、経営は試行錯誤の連続だったという。「最初は知り合いが皆来てくれて連日満員でした。でも4カ月で人が来なくなります」。一度来てくれた人にリピーターになってもらうことが課題だった。
メールマガジンに連載記事を書くことや、通信販売の開始など、店の独自性を出すためさまざまな工夫をしてきた。「会社で働いている従業員とは違い、お店ではスタッフでありながら経営者でもあります。何事も自分の意思決定で動くので、きついですが、とても生きている感じがします」
「現状維持が一番楽ですが、やるかやらないかで迷ったときはやってみなさい」と、新しい進路を考える上でのアドバイスを送った。
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この記事は2020年7月14日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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キャンパスのひと 中村陽太さん(文Ⅲ・2年)
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