学術

2017年6月5日

【N高生のリアル①】昼休み明けの恒例授業「サークルリーディング」とは?

 開校2年目にして、4000人近い生徒を集めたN高校。通信制を利用して、「ネットの高校」として開校したN高だが、「通学コースを作って欲しい」という要望を受け、2年目の今年は東京・代々木と大阪・心斎橋に校舎を設立。筆者は東京・代々木のN高に潜入取材した。そこで見聞きしたことをリポートする。

 

企画概要

【新連載】「N高生のリアル」 教育革命のイマ

 

 5月某日。4月の開校からわずか1カ月あまりだが、教室の雰囲気はどうだろうか。

 

 訪れたのは、午後一番の授業から。お昼休みを終えた最初の授業は、「サークルリーディング」という時間。N高校の時間割は通常1コマ50分と、通常の高校と変わりがないが、このサークルリーディングという時間はお昼休み後に毎日30分行われ、午後の授業に向けて休憩と学習のスイッチを切り替える役割も担っている。生徒は4〜6人ごとにグループになり、同一の本の感想を共有し合う。生徒たちが読んでいたのは『タスキメシ』(額賀雫著)という、高校駅伝を舞台としたスポーツ文学だ。

 

 このサークルリーディングの進め方は班ごとに一任されているらしく、紙の本を持って、丸読み(句点ごとに順に読み上げてくこと)している班もあれば、電子書籍として、MacBookの画面に映して各自が黙読している班もあった。ある程度読む時間が設けられた後に、大学生TAから「はい! では本の感想を共有してー」と声がかかる。この指示出しに忠実に感想を言い合う班もあれば、感想の共有もほどほどにじゃれあい始める班もあった。こう書くと、「教育目的を完徹できていない!」という声もありそうだが、「生徒同士が打ち解ける」という意味においては機能を果たしていると見ることもできる。

 

ノートパソコンの利用は日常的に行われている

 

 このN高代々木キャンパスは、代ゼミタワーに隣接した敷地にある「本館」とそこから徒歩1分のビルの1フロアーを借りた「別館」に分かれている。「本館」の1階は職員室と生徒ラウンジ。地下1階はフリースペースと呼ばれる、円卓が並ぶ広いスペースと、もともと代ゼミのものだったという自習室。2階は3Dプリンターや工具、プログラミングにまつわる本がたくさん置かれている教室になっている。通学コースは全部で150人ほどだが、通学の日数別に「週5日コース」「週3日コース」「週1日コース」に分かれており、校舎に通ってくる生徒の数は毎日違うため、人数によってどの教室・フロアーを使うかを決めているという。

 

N高の本館
本館1階の生徒ラウンジ。アメリカ西海岸が意識されている
N高の2階

 

 そしてこのサークルリーディングが行われたのは、「別館」。一般的な学校教室2.5個分ほどの広々としたスペースに、50人ほどの生徒がいた。コンセント付きのスタイリッシュなデスクで、4〜6人の班ごとに向き合って配置されている。全員MacBookを持参して画面を開いていたが、このMacBookは必須備品として、入学に際して購入をお願いしているという。

 

 このサークルリーディング最中に、一つのグループと仲良くなった。背が高く細身の筆者の姿をみて「先生、気胸になりそうだね(肺に穴が空いてしまうこと)」と一人の男子生徒が話し掛けてくれた。彼の周辺には話し好きの男子生徒がもう2人おり、しばらく話し込む。男子生徒の一人は「Windowsの方が改造できていい!」とMacBookを酷評していた。聞けばスマホはAndroidを持ち、自分で様々に改造して遊んでいるという。記者に話し掛けてくれた子の話を聞いていると、ウェブデザインを極めて仕事にしたいと思っているようで、すでに友人のミュージシャンのウェブサイトをデザインしてあげているという。自分でデザインしたオシャレな名刺も持っていた。他の2人は、スマホに入ってきたニュースに話題が移り、すぐに検索してそのニュースに関連する法律を閲覧し、議論をしていた。

 

 こういった、一人一台パソコンがあるのが前提の学びというのは、未来の普通になってくるだろうか。そんな思いも去来しつつ、サークルリーディングの時間も終わり、次は英語とプログラミングに各自が分かれていく。

 

2017年6月6日16:30【記事修正】取材先の要望で一部写真を修正しました。

 

【N高生のリアル】

昼休み明けの恒例授業「サークルリーディング」とは?

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