学術

2017年6月7日

【N高生のリアル③】「N高は『道具箱』」 可能性を生むプログラミング

 本館に戻り、プログラミングの授業を見学する。プログラミングの授業は日によってはドワンゴのプログラマーが来て質問を受け付けるが、基本的には教材を用いて各自が進めて行く。

 

 本館地下フリースペースでは、15個ほどの円卓でプログラミング学習が進んでいた。一人で黙々と進めている子もいれば、仲良し女子高生グループもあり、真剣に話し合いながら進めているグループもあった。TAの大学生によれば、ドワンゴの作成したこのプログラミング教材(N予備校の講座)は「結構分かりやすい」そうで、みんなが各自で進めていけるそうだ。ただ、プログラミングどころかパソコン初級者の中には全く進められない子もいて、そういう子は「タイピング」の練習から始めているという。

 

 

ドワンゴ作成のオリジナル教材で学習する

 

 一方で進んでいる子はかなり進んでいる。教室の端に、熱く議論している男子生徒2人組がいた。聞けば、一人は中学生の頃からプログラミングでゲームを作成しており、その実績を買われ、都内の会社でインターンしながらN高に通っているという(Aくん)。もう一人の子は高校2年生で今年からN高に編入し、プログラミングを始めたという(Bくん)。Bくんはわずか1カ月で相当プログラミングを覚えたそうで、もともとプログラミングの実力者であるAくんと一緒に、「携帯電話の通信制限に一石を投じたい」と、ある提案書を作って経産省の公募プログラムに応募しようとしていた。その二人をインタビューした。

 

――N高に入学したのはどういう理由ですか?

Aくん 僕はもともと生徒会とかやっているタイプでしたが、ふと、このまま大学行って大丈夫なのかなと思ってしまい。(中学時代、地元自治体のゆるキャラを使用してゲームを作成し話題になった実績から)インターンしてみない?というお声掛けもあったので、インターンしながら高校に行けるということで、ここに来ました。

 

――インターンはどうですか?

Aくん 最近、少し失敗してしまって、落ち込んでいるところなんですが(苦笑)、でも良い勉強になっています。

 

――Bくんはどうですか?

Bくん 僕は進学校に通っていたのですが、高1の夏休み明けに、勉強と吹奏楽部の両立が大変すぎて、過労で倒れてしまったんです。そこから、人生について考え直しました。この学校だと、小テストとか多すぎて、自分がやりたいことができない。でも、N高だと、できる。親に頼み込んで、編入して来ました。親の理解はなかなか得られなくて、土下座する寸前でした(笑)。

 

Aくん 彼はプログラミングの成長がすごく早くて、1カ月でここまでできるのか、というほどです。僕もこういう教材(N予備校のプログラミング講座)があったら、中学時代に無駄な時間を取らなくてよかったと、羨ましいです(笑)。

 

――すごいですね

Aくん 日本のプログラミングのレベルは大変遅れています。エストニアとかはすごくて、日本のプログラマーが束になっても敵わない。すごく、危機感を感じています。

 

――その問題意識もすごいですけど……。最後に、N高に通って感じたことを教えてください。

Aくん 先生方がよく言われているのですが、N高を喩えるならば、「道具箱」です。中にはたくさんの道具が詰まっていて、何でもできる。でもたくさん道具があっても、使わなければ何も生まない。N高はたくさんの可能性を与えてくれるところですけど、それを利用し尽くせるかどうかは僕たち生徒にかかっています。

 

 N高というムーブメントの一端が、この二人から垣間見えた気がした。

 

 また次回は、N高生の「大学受験」についてリポートする。

 

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