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2017年8月1日

まさに知的な祭典 好奇心を揺さぶるイベントTEDxUTokyoが安田講堂で開催

TEDxUTokyo2017の登壇者たち(写真はTEDxUTokyo提供)

 

 知的な祭典。まさしくその言葉の通りの興奮体験がそこにはあった。7月16日に安田講堂で開催されたプレゼンテーションイベント、TEDxUTokyo。今回で5回目という節目を迎えたこのカンファレンスでは、さまざまな分野の最先端で活躍する人々が、自身のアイデアを発信した。記者が一参加者としてそこで見た興奮と感動の9時間をお伝えしたい。

(取材・高橋祐貴)

 

 イベントは11:00より開始した。今回は1セッションに3人ずつ、3セッションで計9人の登壇者が講演やパフォーマンスを行い、加えて2組のゲストパフォーマーや司会に当たる4人のステージホストが会場を盛り上げた。

 

Session 1 “Rediscovering Today”

 

 ヴァイオリニストの酒井絵美さんによる、軽快なハーディングフェーレ(ノルウェーの伝統楽器)の演奏で幕を開けた初めのセッションのテーマは“Rediscovering Today”。テーマの通り、現在の身近な世界に新しい視点をもたらす3人の講演があった。

 

 最初の講演者は、欧文フォントデザイナーである小林章さん。フォントの違いによる読みやすさの差異や、新しいものでありながらどこかで見たことある形を作らなければならないフォントデザインの難しさなどを語った。

 

講演する小林章さん(写真はTEDxUTokyo提供)

 

 学生にして世界七大陸最高峰登頂を達成した早稲田大学在籍の南谷真鈴さんの演題は、大方の予想に反して、山についてではなく「幸せとは何か」。社会的な幸せの基準がもう時代遅れになっていると主張し、皆が信じる「幸せの基準」を疑ってほしい、と訴えた。

 

 セッション1のトリを飾ったのは東大の博士課程に在籍する小型衛星エンジニアの浅川純さん。将来が見通しづらい「未定世界」でさまざまなことに挑戦することで、点と点が知らないうちに線でつながれて道が形作られていく、と伝えた。

 

 ステージホストを務めた梶谷真司教授(大学院総合文化研究科)はこれらの登壇者とプレゼン終了後にトークを繰り広げ、彼らの発表のより深い背景を引き出した。

 

Session 2 “Establishing Your Style”

 

 ランチブレークを挟んで行われた、“Establishing Your Style”がテーマのセッション2は、最もエンターテイメント性が高いパートとなった。ステージホストを務めたのは、プロのMCにして駐日マダガスカル大使館の公式パートナーでもあるWoWキツネザルさん。彼の独特の語りでショーのように始まったこのセッションを最初に盛り上げたのは、阿波踊りエンターテイメント集団「寶船(たからぶね)」だった。祭りは双方向的なもので、誰もが楽しめる良さがある、と話した後、会場の聴衆を巻き込んで実際にパフォーマンスを披露。安田講堂はまるでライブ会場になったかのような異例の盛り上がりを見せた。

 

会場一体となって盛り上がった阿波踊り(写真はTEDxUTokyo提供)

 

 次に登壇したのは、元放送大学学長で、現在は放送大学の学生である岡部洋一さん。「好奇心はエンジン」というテーマで、現在日本において一般的な暗記型、受動的学習を批判し、好きなことをとことん追求する自発的学習の大切さを説いた。

 

 最後の登壇者は、映像製作者の中里龍造さん。既存のシステムとは違った体制での映画制作を目指して奮闘した自身の経験を語り、最後には映画制作の仕組みを表した独自の「マンダラ」を見つめて終わるという異色のプレゼンで会場を騒然とさせた。

 

登壇者によるワークショップも

 

 セッション2の終了後のブレークでは、工学部2号館で行われていた企画の一つである小林章さんのワークショップに参加した。内容は、古代ローマの時代に石碑に刻まれたアルファベットの向きや太さなどがなぜそのようになっているのかを実際に筆を使って文字を書くことで実感するというもので、普段あまり意識することのない欧文書体のスタイルの起源に触れることができた。

 

Session 3 “Pioneering the Future”

 

 セッション3では、ステージホストである「踊るジャーナリスト」こと安村さくらさんの進行の下、“Pioneering the Future”のテーマに沿って、可能性を広げることにチャレンジする3人のスピーカーが登壇した。慶應義塾大学環境情報学部長の村井純さんは、30年前の日本へのインターネット導入の立役者。東大にいた当時の導入に際しての苦労話も交えながら、インターネットによって個人のできることが広がる未来のビジョンを示した。

 

 2人目に登壇した田中みずきさんは、銭湯の壁画を描く銭湯ペンキ絵師。歴史を知り、背景を分析して現代的に解釈しなおすサイクルの重要性を説き、広告としてのペンキ絵で社会と銭湯をつなげる自身の取り組みを紹介した。

 

 大トリを務めたのは大学院総合文化研究科助教の舘知宏さん。折り紙を数理科学的に解析した自身の研究やその成果の建築などへの応用可能性を紹介し、会場を驚嘆と賞賛の声であふれさせた。

 

話の絶えないレセプションパーティー

 

 全てのセッションが終わった後は、工学部2号館にてレセプションパーティーとなった。インストゥルメンタルユニットのMIKISARAによる即興の音楽をBGMとして、一般参加者、登壇者、運営スタッフが混じり合って歓談し、会場には和やかな空気が流れた。全く知らない人同士が互いに語り合う。1日のイベントでさまざまなアイデアに出会った参加者に、話題は尽きないようだ。

 

舘さんと交流する参加者(写真はTEDxUTokyo提供)

 

 パーティー終了時刻の20:30になっても、話し込んでいる参加者がそこかしこに見受けられた。事前取材で聞いた、交流に力を入れるという目論見は、大成功だったようだ。きっとあれらの会話の中からも、新たなアイデアが生まれていたことだろう。彼らがこの会場で見たものが、今後彼らの人生にどのような影響を与えるのか、楽しみにせずにはいられない。

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