最新ニュース

2018年8月11日

世界一低ノイズのトランジスタを作製 渡邉峻一郎特任准教授ら

 渡邉峻一郎特任准教授(新領域創成科学研究科)らは7月18日、世界で最も低ノイズの有機トランジスタの作製に成功したと発表した。トランジスタは、電子回路中で電流の増幅や切り替えを担う部品。安価で作れる有機トランジスタの安定性や信頼性の向上で、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT社会を支える、高感度なセンサー機器の開発が期待される。

 

 トランジスタに用いる半導体としてはシリコンが一般的だ。他方近年、シリコンを用いたトランジスタに代わり、有機半導体を溶かしたインクを基材に塗るだけで作れる、有機トランジスタが注目されている。有機トランジスタを用いたセンサー機器は、ノイズによる測定精度の低下が課題だったが、ノイズ発生の仕組みやノイズ低減の限界については不明点が多かった。

 

 渡邉特任准教授らは今回、電流の微小な揺らぎを観測するため、計測機器の配線などからの影響を排除可能な計測系を構築。その中に、不純物や構造欠陥の影響が実質的にない有機半導体を用いた有機トランジスタを組み込んだ。その結果、ノイズは従来分かっていた箇所以外に、有機半導体と絶縁体の境界面からも発生していると判明した。

 

 これを受け、構造欠陥や不純物が少ない有機半導体を材料に使い、かつ有機半導体と絶縁体の境界面にある膜の品質を上げることで、半導体中の電荷の放出を抑え、ノイズを低減。従来よりノイズが低い有機トランジスタを作製した。

 

 渡邉特任准教授らは今回、ノイズの原因を短時間・高感度で解析する手法も開発。今後開発される有機トランジスタのノイズ評価への貢献が期待される。

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る