学術ニュース

2026年2月1日

水性塗料の塗膜形成を分析 塗料の環境負荷低減への貢献に期待

 

 佐藤龍平助教、澁田靖教授(いずれも東大大学院工学系研究科)と、川上晋也研究員(日本ペイント株式会社)らの研究グループは、水性塗料を構成する高分子の溶媒蒸発に伴う構造変化を体系的に明らかにした。成果は2025年12月12日付で米化学会誌『ACS Omega』に掲載された。

 

 現在、地球環境への配慮や安全性から、従来の有機溶剤から水性塗料への移行が進んでいる。水性塗料は原料の高分子を溶媒中に分散させ、溶媒の蒸発とともに高分子が強固な塗膜を形成するが、水に溶けにくい高分子が多く、高分子の安定した分散には有機溶剤が必要だった。

 

 本研究では、分子動力学シミュレーション(材料を構成する原子や分子の運動を、運動方程式を用いて追跡する手法)を用いて水系・有機系とそれらの混合溶媒系の三つの溶媒環境で高分子の動きを比較・解析した。その結果、高分子と溶媒の間の相互作用の強さを変化させることで、両者の相互作用が強ければ高分子の分散が安定することを明らかにした。

 

 さらに、水と有機溶剤が混合した溶媒環境下では、有機溶剤が水中で相分離することにより有機溶剤の分布に偏りが生じ、高分子は有機溶剤が集まった領域に局所的に集まること、有機溶剤の割合が低い場合には高分子の凝集が進みやすいこと、溶媒と高分子との相互作用の強さが塗膜形成の進行度に関係することが示唆(しさ)された。

 

 これらの成果は、水性塗料の塗膜形成の初期段階における高分子の分散や凝集の理解につながり、高分子と溶媒の分子レベルでの設計への指針を与えるもので、塗料の水性化による環境負荷低減に寄与することが期待される。

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