INTERVIEW / OGOB 2016年1月9日

リクルートキャリアで働く東大OBに、留年記者が問う。「就活の仕組みをもっと良くするには」

 就活。登録した就活サイトを通して送られてくる何十社というお知らせメール、書けば書くほど自分のしたいことを見失っていくエントリーシート、金太郎飴のように画一化されたリクルートスーツ。「シューカツ」という響きを聞いただけで憂鬱になりそうなこの営みは、どうしてこんなに僕らを悩ませるのだろうか。

 就活の波に乗りそこねて留年した2人の記者が、リクルートキャリアで働く東大OBに話を聞いた。聞きたいことはもちろん、「就活はどうしてこんなに問題だらけなのか」だ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 リクルートキャリアは今年の6月から「キャリフル」というサービスを始めた。「大学低学年から『働く』を考えよう」と銘打ったこのサービスを知ったとき、僕らは「就活ビジネスが今度は大学1年生まで食い物にし始めた!」と絶句したものだった。

 聞き手は、バックパッカーをしていて留年した須田(総合文化研究科)と、演劇にのめり込んだ千代田(文学部)の2人。僕らの疑問に答えてくれたのは、東大OBであり、リクルートキャリアでキャリフルを担当する「新サービス開発部」部長の山田雅人さんだ。

 僕たちは「日頃の就活への不満をぶつけたい」と息巻きつつインタビューを始めた。

 

***

――(須田)僕らは就活に失敗したり、就活に違和感があって波に乗れなかった経験があって、就活に対してあまり良いイメージがないんですが、キャリフルと普通の就活との違いを教えて下さい。

 まず始めに考えておかなければならないのは、「就活」とキャリアを考えることとは別のことだということです。今言われている狭い意味での「就活」は、企業研究と自己分析を短期間に詰め込んでいます。ある時期に一斉にそれをやり始めて、短期間でやりきらなくてはならない。

 キャリフルは、そういった短い時間に詰め込まれた「就活」ではなくて、もっと早くから、じっくり「働く」ということについて考えるのを目的としています。「社会を知る」ことと「自分を知る」ことが、「キャリアを考える」ことだと思いますが、僕らの考える「キャリアを考える」という期間はもっと大きい枠で、「就活」はそのほんの一部なんです。

 

企業を知る、自分を知る

 

――(千代田)その「自分を知る」というのは、早ければ早いほどいいという考えですか?

 これは個人的な考えですが、大学生であれば、早ければ早いほど良いと考えています。ただ、大事なのは無理やりさせられてやるのは意味が無いということです。「自分を知りたいな」とか「社会って、仕事ってどんなものなんだろうな」ということを考えている人であれば、早く始めるに越したことはないと思います。

 リクルートキャリアは長年就活の支援をやっていますが、そこにいる学生さんの声を聞くと、「自分が何をやったらいいか分からない」という声が多くあるんです。これが、今の就活の課題です。

 

――(須田)そういう学生多いですよね……

 だから大学低学年のころから、社会体験型イベント(キャリフルCAMP!)や、自分を相対化するコンテストなどを通して、「自分」と「社会」を知るための機会を得てもらおうというのが、キャリフルの目的です。

 だからキャリフルCAMP!では仕事の体験をするだけでなく、自分を知るパートをたっぷりとっている。「前半の就業体験で自分にとって楽しかったことは何か」ということを掘り下げたり、一緒に体験した他の大学生からフィードバック、コメントをもらいながら、自分ってどういう人間なのか考える時間をとっています。

 

――(千代田)現状ではリクナビとかマイナビとか、ああいった就活サイトに登録するのが当たり前のことになってますけど、キャリフルはそうはならないんですか?「1年生のときから、みんなキャリフル登録しとかなきゃ出遅れるぞ」みたいなものになるような気がするのですが。

 僕らのコンセプトは、ひとりでも多くの学生さんが、自分のやりたいことを早く見つけられればいい。それを知ろうという人のためのもので、出遅れちゃうから皆やらなきゃいけないというものではないと思います。大学生を押し込んでやるようなものではないです。

 

――(千代田)僕は文科二類に入って、もともとは経済とか金融とかをやろうと思っていたんですが、たまたま始めた演劇にのめり込んで、文学とか芸術とかの方向に進みたいと思うようになりました。こういったサービスって、そういった偶発的に起こるものの芽を摘んでしまうことにはならないでしょうか。

 それは、僕らが意識していることでもあります。僕がやりたいことって、このキャリフルというサービスに完結したくないんです。最終的に目指しているのは、「大学生が、就活を始める前に『自分がこういうことをやりたい』というのを分かっている」ような状況です。「やりたいこと」を考えるためには、「自分を知る」ことと「社会を知る」ことが必要ですが、そのプロセスは人それぞれでいいと思うんです。

 「社会を知る」ためには企業を見るのは有効ですが、「自分を知る」ためには留学するとか部活めちゃくちゃがんばるとか、バイトをたくさんやってみるとか、やり方はたくさんあると思うんです。それで見えてくるものがありますから。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

――(須田)自分の人生を選択をする上で、「自分を知る」ことが大事だとおっしゃいましたけど、自分を知るのって人との出会いだと思うんです。普段出会わないタイプの人と出会ったときに、自分の考え方がガラっと変わる瞬間ってあるじゃないですか。東大生とか他の偏差値の高い大学生とかではなく、例えば居酒屋で出会った面白いおじさんとか、タイの安宿で出会ったチリ人のバックパッカーとか、そういう多様な出会いっていうのは、やっぱりキャリフルのようなサービスでは提供できないんじゃないでしょうか。

 もちろん、キャリフルだけで全て補えるとは思っていません。ただ、キャリフルのイベントでの出会いというのもあると思います。東京で開催しているイベントに自費で交通費を出して、九州の学生さんが参加してくれたりします。九州の学生さんは東京の学生さんを見てとてもびっくりするし、東京の学生さんも九州の学生さんの話がまた新鮮だったりします。地域も学年も多様で、ぜんぜん考え方の違う人が集まる。そういう意味では、異文化との出会いのようなものはあるとは思います。

 

就活が改善されるだけでなく、雇用の制度全体が変わらなければならない

 

――(須田)日系企業の役員といった40代より上の方にインタビューすると、「大学で適当に勉強して、適当に就職活動したら大手にいくつか受かった」というようなことをおっしゃる方がよくいます。最近では、中小や外資はもちろん、日系企業であっても雇用の形が変わっているのに、就活の形は変わっていないじゃないですか。

 これも個人的な考えにはなりますが、新卒採用の問題や、就職活動の時期の問題って、戦後からずっと問題になっていて、今に始まった話ではないんです。新卒採用についてだけ議論して、改革しようとしても意味が無い。就業規定や雇用についての考え方など、社会全体での雇用のシステムをどう変えていくのか、ということを議論しなくてはいけないんだと思います。そうしないと、せっかく新卒採用の仕組みが良くなっても、会社に入ってがっかりすることになりますから。そうしたなかで、私たちは学生や企業が本当に求めていることは何か?に日々向き合っています。

 

――(千代田)就活の当事者ですけど、リクナビにはあまり好意的でないんです(笑)どうもああいうのって多様性をうたっていながら、結局「自己分析」「企業分析」という枠組みのなかに自分を詰め込んでいるような気がします。

 リクナビとかって、「4年で卒業して就職するでしょ?」という前提で作られていますよね。僕のような留年した奴は、2016卒リクナビから2017卒リクナビにわざわざ登録しなおさなくてはいけなかったり。新卒だけじゃなくて、退学するとか、留年するとか、コネで就職するとか、企業に就職せずにフリーのライターや芸術家になるとか、選択肢はたくさんあると思うんです。

 そういったさらに広い「働く」「社会人になる」というところまでふくむことのできる取り組みはやらないんですか?

 

 正直なところ、多くの学生・企業の皆さまに使っていただいている「リクナビ」を大胆に一新することの難しさはあります。皆さんの期待に比べればまだまだなのかもしれませんが、日々改善を続けています。さらに、リクナビだけでなく、リクナビダイレクトといった既卒の人のためのサービスとか、海外に留学している日本の学生さんを企業とマッチングする「新卒斡旋サービス」というサービスもやっています。リクナビだけではなく、それ以外のサービスも提供しながら、できるだけ個別の事情に応えていきたいなと思っています。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

――(千代田)僕は今年の就活で出版業界を受けていたんですが、中央公論とか河出書房のような年度によっては新入社員を募集していない企業だとか、あるいはアルバイトで働いていた人を入れる企業とかもありますよね。こういう就活サービスを使っていると、そういった企業に入るような道が閉ざされてしまうことがあるんじゃないかと思うんですが……

 「新卒採用をやりません」と言っている企業に「やれ」と言うことはできませんよね。ただ、逆にもし本当にやりたいことがあるときに、それを実現するための行動力は必要なものだと思っています。もし、新卒採用をしていない企業があったら、電話してしまえばいいわけです。それでも断られたら仕方ないですが。

 これは僕の個人的なことですが、僕は一度目の仕事をやめて転職しようと思っていたときに、新卒の募集しかしていないところにもエントリーしていました。実際に面接を受けるときに、「自分は新卒ではなく、第二新卒だ」と伝えていました。本当に働きたい企業があったら、そこに入るために行動をすることが大事だと思っています。僕はこのキャリフルのなかで、学生さんがそういう主体的に行動する意欲を身につけたり、そうまでして入りたい会社や業界を見つけてくれたらいいなと思っています。

 

山田さんがリクルートキャリアで働くようになった経緯に感動する一同

 

――(須田)山田さんは希望してキャリフルの仕事をしているんですか?どうして就職関係の仕事を?

 僕は一番最初の会社を1年半でやめました。入るときは「この会社に一生いよう」と思って入ったんです。

 僕は学生時代は理系で、大学院での研究を通して「仮説を立てて、実験、検証して、それが世の中に出ていくこと」が自分の好きなことなんだと知ったんです。それがとても楽しかったんですね。だから「仮説と検証」が仕事の内容になるような仕事につきました。ただ、その会社は僕が入った直後に、「仮説と検証」を中心とする僕の入った部門を縮小することを決めてしまったんです。そういう仕事ができないことになって、僕は転職を決めました。

 自分が人生で一番つらかった時期が、この仕事をやめたいと思っていた時期だったんです。数年で会社を辞めるなんて社会から落ちこぼれないかな、という不安があってとても悩みました。2社目に勤めたコンサルティング会社を経て、再度転職しようと考えたとき、自分が悩むことになった新卒の就活を、よりよいものにしたいと考えるようになったんです。

 中途採用面接では、「新卒採用の仕事しか興味ありません」という希望を強く伝えました。今の就活は、僕が悩んでいた頃とは違うところもあります。でも、学生にとって社会への入口である新卒採用という場で、自分の価値を発揮したいという思いは今でも強く持っています。

 

――(須田)すごい、そんな経緯が……
――(千代田)リクルートは就活生を食い物にしていると反感を持っていましたけど、そういうわけではないんですね(笑)

 僕もリクルートに入る前はそう言った危惧は感じていたので(笑)入社する前からリクルート社員に聞いてみたんですけど、話をしてみるとけっこう暑苦しい人が多くて。「本当にこの社会を良くしたい」、「学生や企業にとって就職をより良いものにしたい」と思ってやっている人が多いと思います。

 

***

 「就活への不満をぶつけよう」と決意して始めたインタビューだったが、話を聞いているうちにリクルートへの不満は雲散霧消していった。むしろ「キャリフル」はとても共感できるプロジェクトなのではないだろうか。

 「自分を知ること」と「社会を知ること」。この2つを成し遂げるには、演劇にのめり込むもよし、バイトをたくさんするもよし、オンラインメディアをやってみるもよし、様々なやり方がある。そのうちの一つとして利用できるのであれば、そしてキャリフルが「1年生からキャリフルやらなきゃシューカツに出遅れるぞ」みたいなものにならないのなら、このサービスをぜひ利用したいと思えた。

 インタビューの最後に、千代田が「中小企業より大企業が良い」という、就活生によく見られる風潮について触れた。

 

***

――(千代田)中小企業より大企業の方が良いみたいな風潮があるじゃないですか。でも例えば出版業界だと、現場で働いている人から「大企業でなく中小企業の方が、良い本を出せる」という声を聞いたりもします。中小企業とのマッチングは、今の就活の課題ですよね。

 キャリフルには、関心を持ってくれそうな学生さんに中小企業の方がインターンなどの就業体験のお知らせを流すサービスがあります。ふつう学生さんは、聞いたことない会社のインターンやイベントに、参加したいと思わないじゃないですか。でも良い中小企業さんってたくさんある。そこをつなげるのもこのサービスの目的です。

 僕らのこのシステムは、何万通というようなお知らせを学生さんに流すようなことはできないようにしていて、本当にこの人にインターンやOB訪問に来て欲しい、というような学生さんにだけ送れるようにしています。一人ひとりの個を見たコミュニケーションができる仕組みにすることで、学生さんが大手だけでなく中小企業ともつながれるようにしています。

 

――(千代田)そうなんですね。よくある就活サイトに登録すると送られてくるスカウトメールみたいなものって、「絶対俺のプロフィール読んでないだろ」みたいな会社から大量に送られてきて、あれはまるで無駄だと思っていたので、これは良い試みだと思います。

――(須田)そういう丁寧なマッチングへの努力をしているってすごいですね。最後に聞きたいんですが、これって採算合うんですか?(一同笑)

 合わせなきゃいけないんですよね(笑)社会の負を解消するためには、継続して行える「事業」としてやる必要があると思っています。継続して行うためには利益を出さなきゃいけないんです。なかなか難しいですが、頑張ります。

――(一同)今日はどうもありがとうございました。

***

取材を終えて(須田)

 就活制度や終身雇用を当たり前とする考え方にすくなからず不満があったので、「就活をより良くしたい」という熱意を持って「キャリフル」に取り組む山田さんの話を聞いて、とても応援したくなった。「キャリフル」が、学生を就活ばかりにのめり込ませて、勉強や課外活動の時間を奪うようなサービスにならないかは心配だが、就活に悩む一人の学生として、「キャリフル」が山田さんの話してくれたような理念を具体化するサービスであり続けることを期待している。

注:これは広告料をもらって制作するPR記事ではありません。

(取材:須田英太郎、千代田修平 写真:井手佑翼  文:須田英太郎)

同じ記者の記事

関連記事

合わせて読みたい

INTERVIEW / FEATURE 2014年09月03日

2016卒就活は「リクナビ以前」の時代に戻る第一歩 キャリアセンタースタッフに聞く

NEWS 2014年06月18日

13年度就職状況 三大銀行上位占める

EVENT 2016年02月29日

豪華ゲストと学ぶブランドデザイン〜ブランドデザインコンテストBranco!観覧のお誘い

EVENT 2016年04月13日

金融機関の生き残り策は“プラットフォームビジネス”…FinTechイベントレポート①

INTERVIEW / PROFESSOR 2016年01月27日

東大に行くには受験と関係ない本を読め 小林康夫先生インタビュー(後編)

TOPに戻る