COLUMN 2020年3月29日

2019年度学部卒業式 卒業生総代(文系)答辞全文

 本日は、私たち卒業生のためにこのような式典を催していただき、誠にありがとうございます。また、昨今の社会情勢のなか、開催にご尽力いただきました皆さまに、卒業生一同心より御礼申しあげます。

 

 随分と、贅沢をしました。

 

 好奇心のままに行動する時間が与えられたこと、思う存分考えられる環境に恵まれたこと、卓越した優しき友に出逢えたこと、そしてここ東京大学で過ごした時間そのものが、私にとって最高の贅沢でした。

 

 前期教養課程の「初年次ゼミナール」では、テクストを批判的に読むことが求められました。「既存の主張を所与とせず、相対的に捉える営み」、それは大学に入ってはじめて取り組んだものでした。文科Ⅱ類から進んだ法学部でも、法や政治といった、私たちの生活に深く関わる事象に対して批判的に考えることに挑みました。その前提となる知を習得し、吟味し、考えを言葉にする作業を繰り返しました。

 

 しかし、この反復のなかで、私は批判的に考えるということが、いかに困難なものかを痛感しました。前提となる知の習得をいつのまにか諦めてはいないか、思考するまさにこの自分は真に批判的たり得ているのか、常に問い続けなければなりません。そして何より、対象に真摯に向かわんとする覚悟を、自分自身の責任で決めなければなりません。その重圧を前にして、時に迷い、時に立ち止まってしまう未熟な私を、いつも励まし、支え、導いてくれたのは、尊敬する先生方であり、思いを共有し、活発に議論を交わした友人たちでした。

 

 そもそも、私たちのこうした営みの土台となる知もまた、先人たちの絶え間なき批判的思考の結晶です。多くの情報が飛び交い、より簡単に他者の考えに触れることができる現代においては、そのなかで気にいったものを鵜呑みにする方が楽かもしれません。それでも、卒業していく私たちには、知を継承する者として、今日この時まで贅沢な時間を謳歌した者として、目の前のものに真摯に向かわんとする覚悟を胸に、これからも批判的に考え続ける使命があります。

 

 数えきれないほど多くの人に恵まれた、心の赴くままに歩んだこの贅沢な時間は、生涯誇ることのできる財産として、私たちに深く刻まれています。最後になりますが、お世話になった全ての方への心からの感謝と、東京大学の益々の発展を祈念して答辞といたします。

 

令和2年3月24日

卒業生総代 法学部 三吉慧(みよし・あきら)

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