学術ニュース

2019年10月24日

細胞のインフルエンザウイルスへの防御機構解明 ワクチンの改良など期待

 森山美優さん(医科学研究所博士課程=当時)らは細胞がインフルエンザウイルスの増殖を抑える仕組みを解明した。ワクチンの改良や発症の過程の理解が期待される。成果は11日付の英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』(電子版)に掲載された。

 

 DNAウイルスが細胞に感染すると、細胞内のDNAセンサーは、ウイルスが増えにくい環境をつくる機構、インターフェロン応答を誘導する。インフルエンザウイルスやEMCV(脳心筋炎ウイルス)を含む一部のRNAウイルスが細胞に感染した場合も、ミトコンドリアDNAが細胞内に放出されてDNAセンサーが機能する。しかしRNAウイルスがミトコンドリアDNAを放出させる仕組みは不明だった。

 

 森山さんらは、インフルエンザウイルスが細胞に侵入するときに必要なM2タンパク質や、EMCVの2Bタンパク質がミトコンドリアDNAの放出を引き起こすことを発見。DNAセンサーはミトコンドリアDNAを認識した後、DNAセンサーのアダプターに当たる「STING」を介してインターフェロン応答を誘導・増幅することも明らかになった。インフルエンザウイルスのNS1タンパク質がミトコンドリアDNAと相互作用し、細胞内のDNAセンサーからミトコンドリアDNAが検出されることを逃れていることも分かった。


この記事は2019年10月22日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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