COLUMN 2019年1月8日

【駒場のアツいゼミ特集③】ハイデガー哲学 思想家の大著から人間関係を考える

 駒場の前期教養課程の授業は、大半を一方的な講義授業が占め、退屈に思っている学生も多いだろう。しかし中には学生が目を輝かせて参加する、双方向的なゼミも開講されている。今回はそんな駒場の熱いゼミの実態に迫った。

 

ハイデガー哲学を研究

 

(取材・円光門)

 

 「前期教養課程でも哲学の大著を読む訓練の場を提供したい」という景山洋平講師(教養学部附属教養教育高度化機構初年次教育部門)の希望によって始まった全学自由研究ゼミナール「哲学の問いをはじめる:ハイデガー『存在と時間』を手引として」。題材には、ハイデガーの『存在と時間』を選んだ。思想史の知識を駆使して批判的な読解を行ったり、授業外でドイツ語の原典を読んだりする熱心な学生も現れ「彼らに応答する中で私自身の考えもはっきりしていきます」と景山講師自身にとっても刺激的な時間となっている。

 

(左から)TAのノさん、ゼミ生の倉科さん、竹内さん

 

 21世紀に求められるハイデガーの新たな解釈を教員と学生が一緒に考えることも、目的の一つだ。当事者の視点から自分自身を理解し、自己と世界の関係を問い直すハイデガーの思考は、20世紀フランスの思想家たちに人間中心主義的だと批判された。ハイデガー哲学には自己と他者を線引きし、少数派を排斥する危険性が確かにあるというが「あらゆる事象に関わるのは結局は自分自身であり、自己の視点から人間概念を改めて捉え直すことが21世紀に求められるハイデガー解釈です」。

 

 ノ・スビンさん(文・3年)は、入学直後に受けた景山講師の授業でハイデガーの独特な言葉遣いに引かれ、今ではティーチング・アシスタント(TA)も務める。「他者と共に存在すること」を論じるハイデガー哲学を手掛かりに、社会とは何かを考えることが自身の研究目標だ。

 

 高校時代から関心のある哲学を深めようとこのゼミに参加した倉科俊祐さん(文Ⅲ・2年)はハイデガーの魅力として、物事の判断基準の根底でもある存在と個々人の視点の多様性の双方を考慮していることを挙げる。今後は複眼的な視点から実在を理解する哲学の探究を目指す。

 

 社会生活で求められる一貫した人格と多様な自己を折り合わせる問題に興味がある竹内彩也花さん(文Ⅲ・2年)は、近代日本を代表する哲学者西田幾多郎の大ファン。クリスマスプレゼントに西田全集をもらった時は狂喜乱舞した。「将来は原理的にしか記述されていない西田哲学をかみ砕きたい」と話す。

 

 倉科さんと竹内さんは学会発表を聴きに行ったり、高校生と哲学的な対話をする催しを運営したりと、授業外の活動にも積極的だ。「私が学生の頃、哲学者はひたすら本だけに向き合っていました」と景山講師。「今私の学生たちは社会と関わることにも意欲的です。これが21世紀の哲学者像なのかもしれません」

 

景山洋平(かげやま・ようへい)講師

12年人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。埼玉大学・千葉大学非常勤講師などを経て、16年より現職。著書に『出来事と自己変容 ハイデガー哲学の構造と生成における自己性の問題』(創文社)など。

 


この記事は、2018年12月11日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

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