INTERVIEW / OBOG 2015年2月4日

就職や東大入学がゴールではない。人生の目標の見つけ方 武蔵コーポレーション 大谷社長

「就職活動でも、受験勉強でも、強いのは人生でやり遂げたいことを見つけて、そこから逆算して考えることのできる学生です。仕事も受験も、人生の目標をなし遂げるための手段でしかない」

こう語るのは武蔵コーポレーションの大谷社長だ。

大谷社長は9年前、30歳の誕生日の翌日に三井不動産を辞め、不動産と金融とを合わせた日本版のプライベートバンクを目指して現在の会社を立ち上げた。

三井不動産に就職後、目標を見出だせずにいた大谷社長を変えたのは、自分自身のルーツと向き合った経験だった。大学時代は運動会庭球部でテニスに打ち込み、就職活動も周囲に人気の大企業ばかりを受けていたという彼が、20代なかばになって「人生のゴール」を考える重要さに気づいたのはどうしてなのだろうか。

大谷社長に、その意味を聞いた。

不動産と金融を合わせた、日本流の資産運用会社

現在はどのような仕事をしているのですか?

不動産中心の、富裕層向けの資産運用会社を経営しています。外国で言うプライベートバンクのようなもので、お金持ちの資産運用をひきうける会社です。

ただ、欧米のプライベートバンクと違うのは不動産を中心に扱っているということです。欧米は国全体の資産の大半が現金、株、投資信託などの金融資産ですが、日本は資産全体の7~8割は不動産なんです。欧米のプライベートバンクは、金融商品で資産を運用しようと提案しますが、日本では国民全体の資産の大半が不動産なのだから、不動産をそこに入れないと片手落ちなんです。

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今後は金融商品にももっと力を入れて、不動産と金融を融合した資産運用ができる会社を作りたいと考えています。確定申告や相続に関しても、社内に会計事務所や法律事務所を作りワンストップで資産運用をする。欧米のプライベートバンクをモデルにし、日本の実情に合わせて不動産を中心に据える。そんな総合不動産金融の仕事で、3年後の上場を目指しています。

日本の良さを伝えるために学校を経営したい

―なぜこの仕事を始めようと思ったのですか

学校の経営をしたいからです。会社はあくまでもそのための手段で始めました。大学時代の就職活動は、「良い会社」と言われていた大企業に入ることを目標にしていました。20年前はベンチャー企業も少なかったし、自分は運動会庭球部でテニスに打ち込んでいたため、それ以外のことはあまり考えずに大企業を目指しました。結局、数社から内定をもらい三井不動産に入りました。

ただ、大企業というのはどこに行ってもルーチンワークで、拘束時間も長い。正直つまらないですよね。20代中頃になって、何のために生きているのかと悩みました。多くの本を読み考えた結果、自分はお世話になった親や地域社会など、人のために生きたいと気づいたんです。自分を育ててくれた埼玉とか熊谷、そして最後はやっぱり国のためです。自分が良い国に生まれたことを感謝しないといけないと気づいたのです。

小さい頃から祖父やその兄弟と一緒に過ごし、日本はとてもよい国だと聞いて育ちました。むかしは鍵をかけなくても暮らしていけた、と。それが最近は、みなが社会に不安に感じている。子どもが親を金属バットで殴るだとか、親が自分の子供の裸をネットに流して金をもらったりだとか。とんでもない世の中になっている。

なんでそうなったのかと考えたら、日本人としての誇りをちゃんと教えないからですよね。今だけよけりゃいい、自分だけよけりゃいい、お金だけありゃいい。そういう世の中になってきてしまっている。では自分は、日本の持つ良さを次の世代に伝えていくことを、自分の人生の目標にしよう。そう考えるようになったのが、三井不動産に勤めていた20代中頃でした。

こうやって自分の最終的なゴールを考えるようになったとき、自分がしている三井不動産での仕事が、ゴールに結びつかないと痛感したのです。このままサラリーマンを続けていたのでは、学校をやるために資金も知名度も足りない。では、その手段として会社を作ってお金をためよう。そう決意して、「三十にして立つ」という論語の一節から、30歳で独立しようと決めたんです。30の誕生日の翌日に、会社を辞めました。

なぜB to Cの資産運用で起業しようと考えたのですか?

三井不動産時代は、ショッピングセンターつくる仕事をしていました。ショッピングセンターの中に入るテナントを募集する営業です。ショッピングセンターを作るのも、大変夢があることですが、本当に世の中に役だっているのかなという疑問がありました。ショッピングセンターができたせいで、周りの商店街が全部シャッター街になってしまったり、テナントに入っていた個人経営の社長さんを、自分の力不足で助けてあげられなかったということがあり(詳細は後編:「大企業で得られるもの・得られないもの」)、何のためにこの仕事をやっているのかという気持ちに悩まされることが増えました。

僕の故郷の熊谷なんかも、ショッピングセンターができたせいで、街が全部なくなっちゃった。そういうわだかまりから、仕事は、世の中や日本のためになることをしたいと考えるようになったんです。

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当時たまたま、祖父が亡くなって母が相続した土地にアパートを建てました。そこで間取りや家賃を自分で考える面白さを知ってより詳しく調べるようになったのですが、当時アパートの売買はあまりなく、専門家がいませんでした。かつ当時は、小泉元首相が構造改革を主張していた時期で、格差社会の問題や国債、年金の問題などが大きく取り上げられている時期でした。これでは多くの人が将来に不安を感じ、裕福な人は自分の老後を守るために、資産運用をより真剣に考える人が増えるのではないかと感じたのです。それでアパートなどの収益物件を扱う、今のビジネスモデルを考えました。

人生のゴールを見つけることと、ゴールから逆算することの大切さ

―「人生の目標」を見出したのは20代中頃だったんですね。

そうです。私もそうでしたが、東大生には人生のゴールが見えていない人が多い。高校生のときは、東大に入るんだという目標があった。こういった短距離走の目標なら、目前にゴールがあるからつまらない受験勉強も頑張れる。でも大学を卒業して就職したら、途端にゴールがなくなってしまいます。自分の同級生をみていると、とりあえずサラリーマンをしながら、ゴールを見いだせずにいる東大生が9割ですよ。40歳になって今更なにか新しいこともできず、これからの人生で何をしていいか分からないでいる

大学受験と違って、就職したあとは長距離走です。ゴールを見出すことと同じくらい重要なのが、「何のためにそのゴールを目指すのか」という動機付けです。ゴールを目指す使命感がなければ、とうてい長距離走をゴールに向かって走り続けられない。「自分はこの人生を、こんなことのために生きるんだ。だからこのゴールに行くんだ」という使命感です。

―東大生や東大を目指す受験生に伝えたいことはありますか?

ゴールから逆算して人生設計をしなくてはいけないということを肝に銘じて欲しいです。東大に行くことも本当は通過点であるはずです。東大に何のために行くのかを、できるだけ早いうちに考えて欲しい。東大がゴールになってはいけない。東大受験生も、ただ東大に行くことを目標にして短距離走をしている人より、何のために東大に行くのかという志を明確に持っている人のほうが強い。

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世の中に貢献する道はたくさんあります。なにも必ずしも大学に行く必要はない。ただ東大に行かないとできない道を目指したいと決意すれば、受験勉強にも自ずと力が入るはずです。

志が見つからない人は、自分を知ることが大事です。どこに行っていいのかわからないなら、自分がどこから来たのかを知ることが大事。自分や、自分の生まれてきた地域社会、自分の祖国もについて知り、自分が何者なのか考えることが必要です。

僕は小学生のとき、小児喘息で学校に行けなかったんです。それでも家族に救ってもらって、東大まで行かせてもらった。そういった自分自身や、自分を取り囲むものについてよく知ることで、自分が進むべき道が見えてくると思います。

(取材・文 須田英太郎)

インタビュー後編→ 武蔵コーポレーション大谷義武社長インタビュー後編 「大企業で得られるもの・得られないもの」

 

武蔵コーポレーション http://www.musashicorp.jp/recruit/

 

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