INTERVIEW / FEATURE 2014年3月10日

自分が自分らしくいられる会社を見つけてほしい 朝日新聞社の採用担当部長に聞く

いよいよ就職活動も本格化。多くの就活生が、エントリーシートを書き、面接に向けて準備をしています。
学生の注目企業の人事担当者に話を聞くシリーズ。今回は、朝日新聞社の採用担当部長である岡本峰子さんにお伺いしました。

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―― 社会には、就活に関連する情報がたくさんあります。ありすぎるほど、と言ってもいいかもしれません。そんな中で、どのように学生は企業を選んだら良いと思われますか?

岡本 企業は、たくさんの情報をだしていますね。求めれば、色々な情報が手に入ります。私自身について話すと、大学生のときの自分は、何のために生きているのか、自分探しをしていました。進学した大学には、地方では考えられないほど経済的にも社会的にも恵まれたな学生がいて、ショックを受けました。劣等感も強く抱きました。克服するために、色んなことに挑戦しました。その中で私は、自分の目で、自分の心で物事を捉えるということが、私が私らしくいられる道だと考えるようになったんです。だから、対策らしい対策はあまりしませんでした。私は何者か、私はなぜ生きるのか、ということを考えたことが、職業選択につながったという感じでした。

いまも朝日新聞の新卒採用は、入社後40年、45年働いてもらうことを考えて採用をしています。今後のメディアのあり方、ジャーナリズムの意義を一緒に考えられる人、事実をどう探り、確認し、どう伝えるか、ということを一緒に考えられる人を求めています。これはボランティアではできない、プロフェッショナルな仕事です。学生の皆さんには、「これを一生やっていきたい」というもの、自分が自分らしくいられる道を探してほしいと思っています。

―― 一口に「メディア」と言っても、新聞もあればテレビもあります。私たちは、それらの違いをどう捉え、どう志望すればよいでしょうか?

岡本 メディアの特性を認識して、選んでほしいですね。特性、というと2つポイントがあります。読者は誰か、ということと、ビジネス構造です。

ビジネス構造について言うならば、民放テレビさんは企業広告がメインですね。これに対し新聞社の収入源は、多くが購読料(朝日新聞は6割が購読料)で占めています。新聞広告料は3割に過ぎません。報道には資金が必要です。そのお金が企業や組織、国家のトップの判断ではなく、講読者一人ひとりの判断によって支えられている構造は大きい。報道機関は、お金が欲しいために記事内容が左右されるようなことがあってはなりませんし、朝日新聞社にそんなことはありません。私自身、ジャーナリズムの志を忘れては朝日新聞社の存在価値はないと思って働いています。記者はもちろん、ビジネス職も技術職の社員も報道機関の一員としてその意義を守ってくれています。

―― 昔は、「イデオロギー」で会社を選ぶという学生もいたようです。近年、「イデオロギー」という概念は薄まる中、朝日新聞の立ち位置はどのようなものでしょう?どんな考え方の方が多いのでしょうか?

岡本 イデオロギーですか。古い言葉ですね(笑)。私が入社して以降、社内で使われてないですよ。何事においても、どちらか一方の立場の人が多い、ということはないですね。色んな考えの人がいるし、社説を書くときも、委員が喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしながら作り上げています。皆、自分で持っている考えに対し、きちんとした根拠やデータを示して主張・議論しています。朝日新聞社の記者に必要なのは、こうした思考力や論理構成力です。

―― 新聞社の採用も、色々な職種がありますね。記者職以外を志望する学生は、どういう学生なのでしょうか?

岡本 記者職は現場で体験したことを「伝える」という役割に魅力を感じている人たちが多いですが、ビジネス職・技術職の人たちは、そうした記者たちの発信する記事・コンテンツを支える裏方としての意識が高い人たちが多いと思います。なので、大学でメディア学を勉強した人も多いですね。

―― その「現場で体験する」行動派な報道志望は減っていると現実に感じられますか?

岡本 減っているかどうかは分からないですね…(笑)。でも、今の若い人全体について、「肉食・草食」、という表現で簡単に言うならば、「肉食」は減っているかもしれないと感じます。肉食とは、結果は予測できないけれど、まずは挑戦してみよう、という人たちですね。失敗は若者の特権です。そして失敗の積み重ねで経験と知見を重ねるのです。失敗や批判を恐れて空気をよみすぎる必要はないと思います。勿論、傍若無人ではいけないですが、やりたい事、言いたい事は、きちんと言って良い。私は入社後にアメリカに留学したのですが、そこでディスカッションの作法を学びました。言うべき事は言う。Yes,but…で自分の意見をきちんと伝えることが大事なんじゃないでしょうか。マナーはおさえたうえで、真意を伝えて相手を説得することができる力や、相手にとって少しマイナスのようなことも伝える事ができる、ということがコミュニケーション能力だと思います。

―― エントリーシート(ES)は、何を見ていらっしゃいますか?

岡本 全部ですね。主旨としては、あなたを知りたい、ということです。ESだけで評価しているわけではないので、ESは、あなたの索引・見出しだと思ってください。読む人を意識して書く、ということが大事です。新聞的に表現するならば、ESは見出しで、本文、解説、関連記事が面接ということかもしれないですね。なので、ここはもうちょっと掘って聞いてみたいな、と面接官に思わせるような見出しを書いてください。

―― ESは、面接官の方も読み込んでいらっしゃるのでしょうか?

岡本 かなり読んでますよ〜!

―― インターンは、どう活用したら良いでしょう? 朝日新聞も、「学生ジャーナリズム研修」などを開いてくださっています。

岡本 最近は、巷でみんなが知っているジャーナリストが減っていると思います。昔は、マスコミ志望の人でない人々の間でも有名なジャーナリストがたくさんいたのです。その結果、ジャーナリストに親しみを持ってもらえる機会が減ってしまっています。そこで、興味本位で良いから、記者に会って話をしてみてほしいと思っています。こういう風に働いている人がいるんだ、ということを感じる場として活用して欲しいですね。朝日新聞では2013年度、前年度に比べてかなり人数を増やしてインターンを開催しました。2014年度も、今年度と同じくらいの規模でやる予定です。

―― 新聞の今後については、どうお考えですか?

岡本 アウトリーチについて考えることは重要だと思っています。皆さんにどう情報を届けるか、ということは、民主主義に根幹に関わりますから。今まで新聞は、配達網を張り巡らせてきましたが、その新聞をとらない人が増える中で、重要なニュースをどう皆さんにどう届ければ良いかは課題です。依然として紙は重要だと思います。しかし、満員電車で紙を開くか、というと、そういう場面ではタブレットの方が便利だったりしますよね。ですから、タブレットやスマホに対応し、ソーシャルメディアも活用しています。それらを通じて、皆さんにニュースに触れて頂けるルートを増やしています。メディアラボなどの取り組みもそうです。

―― 東大生に向けてメッセージをお願いします。

岡本 冒頭でもお話ししましたが、就職は、恋愛や結婚と似たようなところがあります。合わないな、と思ったら代えることも、確かに可能です。しかし、できるなら最初から、一生を共にできる相手、相思相愛になれる相手を見つけたいですね。人からの評価に左右されるのではなく、自分が自分らしくいられそうだな、と思う組織を見つけてほしいと思います。

文:菅野千尋

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