COLUMN 2019年10月3日

【研究室散歩】@海上貿易史 島田竜登准教授 史料と向き合う喜び胸に研究

島田 竜登准教授(人文社会系研究科)01年ライデン大学大学院上級修士課程修了。Ph.D.(文学)。西南学院大学准教授などを経て12年より現職。

 

楽しむ気持ちエネルギーに

 

 16~20世紀前半のアジアの海上貿易史を専門とする島田竜登准教授(人文社会系研究科)。オランダ東インド会社の史料を用いて、アジアの貿易商人について研究している。最近は、歴史学の方法論としてのグローバル・ヒストリーにも注目。グローバル・ヒストリーを扱う『世界史論』は前期教養課程の人気授業の一つだ。

 

 学生時代は早稲田大学政治経済学部で江戸時代の海外貿易を研究。休業期間には「研究対象とする場所に実際に行った方がいい」と思い、九州各地をたびたび訪れた。その中で長崎の人々はおっとりとしていると感じるなど、次第に長崎の風土が分かるようになった。大学図書館の書庫に入るのが好きで「休業期間に、書庫で洋書や変わった本を探すことに夢中でした」と笑う。宝探しのような気分だったそう。本を夢中で読み込む研究姿勢の源流がうかがえる。

 

 修士課程修了後は近世東洋史で有名なオランダのライデン大学に留学。国立公文書館にあるオランダ東インド会社の史料を直接閲覧できる環境は、島田准教授にとって魅力的だった。留学時期はオランダ東インド会社設立400周年に当たり、そのプロジェクトのため留学していた多くのアジア人と交流。「今母国の大学で教えている彼らとのつながりは、私にとって大きな存在です」

 

 当初は日本経済史を研究対象としていたものの、次第に輸出品の行き先、輸出先の事情などに興味が広がり、東南アジアやインドの魅力に取りつかれていった島田准教授。日本と似ているようで違う世界を魅力的に感じるようになったという。アジア貿易に関するオランダ語の史料は手付かずのものも多く、研究の可能性がある分野だと思ったそうだ。

 

マレーシアのムラカの漢人街

 

 多くの史料を読むうちに何かつながりが見えたときや、面白いことが言える発見をしたときに研究の喜びを感じるという。一方で、分かったことを人に伝えるために、論理を組み立てながらの執筆作業が大変だそう。特に、5年間の留学中に英語で執筆した博士論文で苦労した。「でも自分の成果が人に伝わるとやりがいがありますね」。今後はグローバル・ヒストリー的視点からオランダ東インド会社を捉えた、これまでの研究成果についての本を書きたいという。学術書だけでなく、一般向けの本も執筆する予定だ。

 

 現在島田准教授の研究室には10人前後の学部生と数人の院生が所属しており、それぞれの興味に沿って研究をしている。最近は院生だけでなく学部生の留学が増えたそうだ。留学中の院生にはインターネットを通じた論文執筆指導もしている。研究者を目指す学生は3分の1ほど。着任8年目の島田准教授は自分の研究室に所属していた学生と、共同研究をするのが夢だそう。残りは官公庁や民間企業に就職する。就職先は幅広く、過去には法科大学院に進学し、弁護士になった人もいたという。

 

インドのコチ

 

 歴史研究を志す学生には「面白い、楽しいという気持ち」が研究を続けていくために必要だと伝える。長い時間を要する研究でも、努力しただけの成果は返ってくる、とエールを送る。「10年も研究すればたいていその分野の世界一になれます」。思ってもいなかったようなことを発見することもあるため、研究過程で生じる副産物を見逃さないことが大事だという。文学部を志望しない学生に対しても「あらゆる学問において、現在の社会は歴史が積み重なってできているものであり、歴史は未来を創り出すものであるという視点を常に持っておいてほしい」と語った。

(上田怜)


この記事は2019年9月17日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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