COLUMN 2020年8月15日

この音楽、共同制作者はAIです 音楽制作におけるAIと人間 ①作詞AI開発者

 近年さまざまな分野で注目を集めるAI(人工知能)技術の利用範囲は、芸術の分野にまで及んでいる。中でも音楽制作では、作詞・作曲・歌唱まで全てAIを用いて行うことができる。音楽制作を通じたAIと人間との関わり合いについて、3人の専門家に話を聞いた。

(取材・岡田康佑)

 

『電☆アドベンチャー』のMV

 

曲のイメージから歌詞を生成

 

  ブルーの川をきらり染める 黄金がブルーに照らす時 白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで

 

 これはアイドルグループ「仮面女子」の楽曲『電☆アドベンチャー』の歌詞の一部抜粋である。一見すると普通の歌詞に見えるが、よく読むとなんとも不思議な内容だ。実は、電☆アドベンチャーの歌詞は全てAIを用いて作詞されている。作詞AI開発者の坂本真樹教授(電気通信大学)に詳しく話を聞いた。

 

 坂本教授の研究テーマの一つは、単語の持つイメージを数値化し、色で可視化するAIを作成すること。この技術を作詞に応用して生まれたのが電☆アドベンチャーだ。「最新技術の展示会で仮面女子メンバーの月野もあさんと知り合ったのがコラボのきっかけでした」と坂本教授。イメージを色で可視化するAIに興味を持った月野さんと、共同で何かできないかと話し合った結果、AIで作詞に挑戦する「AI仮面プロジェクト」が実現した。

 

 電☆アドベンチャーは仮面女子の楽曲『超・アドベンチャー』のメロディーの上に、AIが原曲のイメージに合わせて生成した歌詞を充てることで作られた。作詞の出発点は歌のイメージの読み込みだ。「仮面女子のメンバーたちに原曲のイメージイラストを描いてもらい、コンピュータに読み込ませました」(図1)

 

(図1)AIが読み込んだ曲のイメージイラストの例(画・月野もあさん、クリーブラッツ提供)

 

 

 次の段階では、坂本教授の開発した、単語のイメージと色を結び付けるAIでイメージに合致する単語を生成した。これまで単語のイメージを色に変換するために使うことが多かったが、このプロジェクトでは読み込んだ色から単語を生成するという逆向きの方法で利用した。

 

 単語を生成した後は、単語を結び付けて歌詞を作る。ここでは著作権フリーの小説など64万文書を学習した文章生成AIが用いられた。「文章生成が最も苦労しました。意味不明とクリエーティブの線引きが難しかったです」。あまりに支離滅裂な文章は人間が手を加えて単語の再選択を行った一方「『にこにこうぱうぱブルーベリー』のように、意味は全く分からないけれど雰囲気がかわいい歌詞は、そのまま採用しました(笑)」

 

 AIは学習データの量、内容に応じて、さまざまな歌詞を生成する。「人間も、積んだ経験に応じた価値観を持つという点ではAIと共通していると思います」と坂本教授。「AIに優れた曲を作成させることも面白い試みですが、似たところもあるAIと人間が足りないところを補いながら一つの楽曲を制作できたら、それも素晴らしいことです」

この音楽、共同制作者はAIです 音楽制作におけるAIと人間 ②Orpheus開発者

この音楽、共同制作者はAIです 音楽制作におけるAIと人間 ③技術者

坂本 真樹(さかもと まき)教授(電気通信大学) 98年東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。電気通信大学准教授などを経て、15年より現職。人工知能学会理事など兼任。

この記事は2020年8月4日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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取材こぼれ話
サークルペロリ:ビルボード研究会
キャンパスのひと:臼井幹博(法念)さん(文Ⅰ・2年)

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