教養

2022年12月21日

【火ようミュージアム】ファン・ゴッホ展 ―僕には世界がこう見える―

 

 

 埼玉県所沢市、東所沢駅から閑静な住宅地を抜け、北西に歩き続けると、前方に前衛的なデザインの建物が見えてくる。東大工学部建築学科を卒業したことでも知られる建築家・隈研吾氏(関連記事)が設計を手掛けた「角川武蔵野ミュージアム」だ。2万枚もの花崗(かこう)岩タイルに覆われ、一見すると5階建てとは分からない多面体の建物は既存の「ミュージアム」の概念を覆す。「図書館・美術館・博物館が融合した文化複合施設」として注目を集めているミュージアムだ。

 

角川武蔵野ミュージアムの外観 ©角川武蔵野ミュージアム

 

 本記事では、角川武蔵野ミュージアム内で開催中の企画展「ファン・ゴッホ ―僕には世界がこう見える―」を紹介する。この企画展ではアートと音楽を全身で浴びる没入(イマーシブ)体験が楽しめる。クリエイティブディレクターとして本展を手掛けたのはジャンフランコ・イアヌッツィ氏。30年間にわたり世界各地で展覧会を開催しているイマーシブアートの先駆者だ。イマーシブアートとは、額の中に収まった美術作品とは異なり、絵画が投影された空間すべてを美術作品として体感できるジャンルを指す。本展では『ひまわり』などの作品で知られる、ポスト印象派を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホの作品がイアヌッツィ氏の手によってイマーシブアートに生まれ変わった。

 

ゴッホ作品の中でも特に有名な「ひまわり」も、イマ―シブアートになると違った印象を受ける。ゴッホの大胆な色彩感覚を楽しめる

Creative Direction: Gianfranco Iannuzzi

Created by : Gianfranco Iannuzzi – Renato Gatto – Massimiliano Siccardi

KCM Editing: Rino Tagliafierro

Production: Culturespaces Digital®

©角川武蔵野ミュージアム

 

 第1会場では、プロジェクターによって壁面・床面に映し出されたゴッホの作品を、歩き回りながら、時にハンモックに揺られながら眺めることができる。「自由な姿勢で作品を楽しんでほしい」というイアヌッツィ氏の願い通り、ハンモックやクッションにもたれかかって鑑賞する人が多く見られた。また、ゴッホの作品と生涯が全8幕に分けられ、各テーマに合わせて、BGMのクラシックの旋律も変化する。鑑賞者が音楽に合わせてゴッホの世界に没入できるよう、丁寧に作りこまれているのが伝わってきた。特に絵画『花咲くアーモンドの木の枝』は印象的だ。普通の展覧会では動くことのない、描かれたアーモンドの白い花びらが空に舞っていく様子まで表現されていた。この作品はゴッホが自殺する数カ月前に甥の誕生を祝って描いたという背景もあり、彼のはかなく消えた命と花びらが重なり合って感じられる。ライフストーリーに合わせた映像編集によって、ゴッホが見た世界を追体験しているような気分になることだろう。

 

ゴッホの自画像。よく目にする作品からそうでない作品まで、豊富な自画像が映し出されていた

Creative Direction: Gianfranco Iannuzzi

Created by : Gianfranco Iannuzzi – Renato Gatto – Massimiliano Siccardi

KCM Editing: Rino Tagliafierro

Production: Culturespaces Digital®

©角川武蔵野ミュージアム

 

 第2会場では、ゴッホの年表と、弟や友人と交わした手紙を基に「知っているようで知らないゴッホの生涯」に迫ることができる。激情的な人生に隠れた繊細な一面に触れたとき、鑑賞者はゴッホ作品にもう一歩近づくことができるのではないだろうか。本展は来年1月9日までの開催だ。ゴッホ作品を愛する人もそうでない人も、ぜひ角川武蔵野ミュージアムを訪ね、アートに没入する感覚を味わってほしい。【万】

 

【展覧会概要】ファン・ゴッホ展 ―僕には世界がこう見える―

 

会期:2022年6月18日(土)~2023年1月9日(月) ※会期延長

会場:角川武蔵野ミュージアム 1階 グランドギャラリー

開館時間:午前10時~午後6時(金・土 午前10時~午後9時) 最終入館は閉館の30分前

休館日:第1・3・5火曜日

主催:角川武蔵野ミュージアム(公益財団法人 角川文化振興財団)

文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業

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