キャンパスライフ

2020年4月8日

【世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編⑨】1年間の旅の終わり

【前回までのあらすじ】

 タイ・バンコクでの留学生活が始まった。周囲の学生に刺激を受けつつ、家探しなど新しい生活に慣れようと必死に過ごすうちに、バンコクでの日々はあっという間に過ぎていった。

 大学では主にタイ語を勉強しており、3カ月間で簡単なスピーキングと読み書きの初歩までを学んだ。スラスラと話せるようになったわけではないが、アパートの近くの屋台のおじさんやタクシーの運転手さんといった現地の人とタイ語で交流できるようになり、より言語を学ぶことが楽しくなった。

 

 大学生活ではクラスメートから、自分とは異なるバックグラウンドについて話を聞き大きな刺激を受け、とても有意義な時間を過ごせた。しかし、時間の使い方には反省が残る。1日の講義時間は3時間ほどだったので、残りの時間を課題をこなしたり、留学生と映画を見るなどして遊んだりするだけでなく、インターンシップなどでより有効に活用できれば良かった。

 

ホームステイ先で知り合ったタイ人の友人。各地を一緒に観光し、案内してくれた

 

 タイに留学しようと思ったのは、もともとタイ料理店でアルバイトをしていて、タイ人の方々と接する中でタイに興味が湧いたことがきっかけだった。留学中の長期休暇に、日本のアルバイト先で一緒に働いていたタイ人の方がタイに帰ってきていたので、1週間ほど彼女の家にホームステイをさせてもらった。

 

 日本語はほぼ通じない環境だったが、現地の人々の生活を体験させてもらえたのは本当に貴重な経験となった。お寺に参拝したり、みんなでご飯を食べて家にあるハンモックでくつろいだり、地域の人の成人のお祝いのパーティーに参加させてもらったりした。

 

 特に印象的だったのは元旦のお寺への参拝だ。大みそか、親戚や友人一同が集まりお酒を飲んで楽しんでいたが、年が明ける少し前になるとみんなでお寺へ参拝。1時間ほど正座でお経を聞いた。翌日も早朝からお寺へ赴き、お坊さんへの托鉢を行った。仏教への信仰のあつさを実感したが、托鉢中も自撮りを欠かさないタイ人のチャーミングさも感じ、ほほ笑ましい気持ちになった。

 

バンコクにある寺、ワット・パクナム。天井にプラネタリウムのような美しい絵が描かれており、滞在中に何度も訪れたお気に入りの寺だ

 

 留学生活が終わる時には彼女は日本に戻っていたが、彼女の親戚の家を訪れ、何日か泊めてもらい、一緒にいろいろな場所を観光した。タイの人々の温かさに触れ、忘れられない思い出の一つとなった。

 カンボジア、タイと約1年間の海外生活を経験できたことは、これまでの私の人生にとって本当にかけがえのない時間となった。特に、現地の人々の生活の様子を実際に目で見られたことは良い経験になった。海外での生活を通じて自分とは異なるさまざまな価値観に触れ、自身の価値観の枠を広げていくことができたように思う。

 

 また、アンコールワットのあるシェムリアップでのインターンシップで「旅」の力も実感した。シェムリアップ、そしてバンコクも、観光が経済や現地の人々の生活を支える土台の一部となっている。また、旅をすることでその土地に抱いていたある種の「偏見」のようなものがそがれ、訪れた土地に愛着が湧くことも多い。

 

 もともとは記者志望だった私だが、1年間の休学を通して考え方が変わり、観光業に携わっていくことを決めた。今後は観光を通じた地方創生など、社会貢献性のある事業に携わっていくことを目指している。

 

 これからは日本での生活を通して自分自身を変化させていき、成長した姿で、カンボジア・タイに戻ることが今後の私の目標となっている。=終わり

 

【連載記事 世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編】

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編① 期待を胸にカンボジアへ

【世界というキャンパスで】分部麻里(文・4年)東南アジア編② 異国の「洗礼」でびしょびしょに

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【世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編⑦】カンボジアとの別れ

【世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編⑧】バンコクでの新生活の始まり

 


この記事は2020年3月24日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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